「ゼルビアTimes」郡司聡

【★無料公開】J2第18節・京都vs町田/京都・布部陽功監督、吉野恭平選手、小屋松知哉選手、田中マルクス闘莉王選手、町田・相馬直樹監督コメント(6,811文字)

■明治安田生命J2リーグ第18節・6月11日(日)15:00キックオフ
京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場/9,119人
京都サンガF.C. 2-2 FC町田ゼルビア
【得点者】京都/58分 田中マルクス闘莉王(PK)、70分 吉野恭平 町田/11分 吉田眞紀人、89分 戸高弘貴

 

■布部 陽功監督(京都)
ーーまずは試合の総括をお願いします。
「悔しさが残る試合でした。ファン・サポーターの方に熱い応援をしていただいて、逆転をして最後まで戦い抜くエネルギーが出て、終盤の試合の終わらせ方をチームとしても意思統一できていましたから最後に追い付かれて悔しさが残る結果となりました」

ーー後半は小屋松選手が相手の裏を突く形が増えましたが、それは本人の意識を変えたのか、もしくは監督からの戦術的な指示なのか。彼に対して働きかけたことについて、聞かせてください。
「チームとして相手のラインが高いため、ウチの2トップが競り合いで抑えられてはね返される場面があったので、サイドにスペースがありましたから、もう少し斜めからサイドを使って角度を付けて、2トップにグラウンダーのボールや浮き球を入れて、2列目が飛び出していこうという戦術上の狙いでした。うまく2列目からの飛び出しのタイミングも相手のラインが高い中でも後半は勢い良くできていたと思います。あとはフィニッシュまでいけているので、決め切る部分をもっとやってほしいと思っています。とはいえ、試合を通じて良くやってくれています。

ーー今日の試合は本多(勇喜)選手に代えて湯澤(聖人)選手を、ボランチに染谷(悠太)選手を起用していましたが、彼らを起用した理由を聞かせてください。
「コンディションやけがの影響なども含めて、先発を選びました。まだ連係などそういった部分は時間がかかると思いました。染谷はつぶす、読みでセカンドボールを拾う。けが上がりの中、最後までしっかりとプレーをできたと思います」

ーー失点シーンについて、簡単にクロスボールを入れられて簡単にシュートを打たれてしまっているので、こちらからすると、なぜそんなに簡単に入れられてしまうんだと言いたくなる部分もあります。しかも2失点とも似たような印象を受けます。
「結果として、人に合わせられてゴールを決められているのですが、自分のマーカーや自分の近くにいる選手が危険な位置にいるのか、気付いた選手がマークに行くのか、ほかの選手に預けるのか、といったことが必要だと思います。その判断の速さや自分で行くかどうか、その判断が大事だと思いますので、またトレーニングから取り組んでいきたいです」

ーー結局は出場しませんでしたが、2枚目の交代カードで牟田選手を起用する準備をされていたかと思います。仮に牟田選手が出場した場合、どんな指示を出して起用しようと考えていましたか?
「最終ラインと2列目のスペースが空いていましたし、ラインコントロールで遅れたり、上げたい場面で上げらない場面もありましたので、最終ラインに起用しようと思っていました」

ーー試合の入り方と試合の締め方が以前からの課題でしたが、今日はどちらでも失点を喫してその課題を残す結果となってしまいましたが、今日の試合に関して、監督としては何が原因だと思われますか?
「原因はいろいろあると思います。それは選手たちとしっかりと話し合わないといけないことです。ただ、相手も京都の良さを消そうとうまくプレーしていましたし、自分たちが工夫をして崩せるように変えていく。そういったことも必要だったと思います。終わらせ方もすべては良くないということではないですし、僕たちもすべての試合で勝とうと戦っています。ただすべての試合で最後をしっかりと締めないといけないと感じています」

 

■MF 5 吉野 恭平(京都)
町田は2列目からの飛び出しを嫌がっていた
「前半は相手にかなりセカンドボールを拾われていたのですが、後半は修正をしてトゥーさん(闘莉王)たちが競り合った後、2列目が抜け出していこうと狙っていたし、相手も嫌がっていたので、それが効いていたのかなと思います。フワっと試合に入っているなとピッチの中でも感じますし、チームとして入り方をどうするか、意思統一をしてやっていかないといけないと思います。

ただ負けている展開でしたし、湘南戦を前に負けずに臨めることはポジティブに捉えたい。2トップが厳しくマークされたときにどう周りの選手で打開していくか。それは大事なことだと思います」

 

■MF 22 小屋松 知哉(京都)
負けたと同等ぐらいの悔しさが残っている
「(2列目の生かし方など2トップを封じられたときの打開策を見い出せた部分もあったのでは?)前半は結構自分たちのバランスが悪く、セカンドボールも拾われていたので、苦しかったのですが、前の二人が抑えられたのでそこの打開策で前半に関してはバタバタしました。もっとチームとして冷静に判断して、臨機応変にどこから攻めるかできれば良かったと思います。それは課題かなと。

(逆転まで持ち込みたかったとは思いますが……)試合の終わらせ方はチームとしての課題ですが、僕自身も点を取るチャンスはありましたし、そこで取り切れなかったことでチームに迷惑をかけた部分はあるので、申し訳ない気持ちです。

(個人的な体のキレはあるのでは?)個人としての体のキレは良いですが、結果にはつながっていません。サッカーは点を取らないと勝てない競技。点を取ることは僕自身の課題でもあります。こういう試合で結果を出せないということはまだまだ自分の弱さだと思います。

後半に攻めている中で町田の守備陣のバタバタバしたところや慌てているようなことはありましたか?)ラインは高かったけど、2列目の飛び出しへの対応はあまり良くなかったので、そこはチャンスかなと思っていました。でも相手の最終ラインがバタバタしている時間帯にさらに仕留められなかったことが勝ち切れなかった要因かなと思っています。前半の修正はかなりできました。町田もそこまで崩しに来たわけではなく、ロングボールが多かったので、これはチャンスがあるなとやりながら思っていました。逆転まで持ち込めたことは良かったと思います。ホームで連勝をしたかったです。負けたと同等ぐらいの悔しさが残っています」

 

■FW 4 田中 マルクス闘莉王(京都)
相手DFの競り合いが強かった
「前半は良くなかったです。相手のやり方にてこずっていました。(町田は)ラインを高く保って、2トップに対してもボールにも厳しく来る。自分たちは競り合うときの体勢が良くなかったし、相手DFの競り合いが強かったです。後半は相手の背後を利用して決定的なシーンを数多く作ったのですけど、簡単にはいかない。スローンから2失点してしまったのは悔しいです。

(自らキッカーを務めたPKについて)この前はケヴィン(オリス)が蹴って、僕は一回外している。でもそんなことを気にしているわけではないけど、勝っていればケヴィンが蹴っていたかもしれません。重みのあるPKだったので自分が責任を持って蹴りました。入って良かったです。

ホームだし、引き分けを狙いにいっている試合は一つもありません。勝ち切れなかったかもしれないけど、勝ちに行く姿勢はかなり出ていたと思う。後半のチャンスの数からすれば、あと2・3点は取れたと思います。ただ2失点しているようでは3点以上を取らないといけなくなります。とにかく悔しい結果です。ただ次にはつながると思います。

(勝ち切れなかったですが、先制されて一度は逆転したということは未熟さを解消できたと言えますか?)積極的に行く場面と落ち着かせる場面は、自分も含めてまだ未熟です。落ち着いていないときの時間帯にやられることは良くないし、崩されて失点をしているわけではない。もう少しピリッとした雰囲気が必要だと思います」

 

■相馬 直樹監督(町田)
ーーまずは試合の総括をお願いします。
「まずは京都のほうまで東京・町田から多くの方に足を運んでいただきました。それと京都さんのたくさんのサポーターがいる中で、非常に雰囲気のある中で選手たちはゲームをさせてもらったと思います。まずは今日集まってくださった方々に対して、ありがとうございますとお伝えしたいと思います。

どちらのチームもスリリングなゲームをしてくれたと思っていますし、われわれの選手たちも勝利へのこだわりを持って戦ってくれました。ゲームのほうはお互いに強い風の影響もあったのか、長いボールが多い展開の中で、セカンドボールを取ったほうが攻撃の時間が長くなるような展開でした。前半に関しては、われわれのほうがセカンドボールを拾えたことで、自分たちの流れでゲームを進める時間帯が多く、先に点を取ることもできましたし、良い形でゲームを進められたと思っています。

ただし後半はホームで巻き返したい京都さんが前がかりに出てくる中で、少しわれわれが受けに回ってしまった流れだったのかなと思います。そうした展開は前節の愛媛戦でも1-0で前半を折り返していながら、逆転された上に最終的にはひっくり返されて試合は終わってしまいましたが、前節と同じように自分たちで主導権を渡してしまうような展開になりました。その結果、不運な形ではありましたが、何でもない場面でPKを与えてしまい、PKを決められる結果となりました。

また2点目に関してもそうですが、もう少しボール処理の場面でハッキリとクリアできていれば、良かったものの、対応が後手に回っていました。ただ相手にリードされた中でもう一度自分たちからチャレンジすることをやってくれたことが2-2に追い付けた一番の要因なのかなと思っています。

前へ出る、前から行く姿勢をキツい時間帯の中でも示してくれたことに感謝したいですし、最後は決まりませんでしたが、選手たちは惜しいシーンを何度か作る形まで持ち込んでくれました。ゲームの流れもありますが、サッカーはメンタルのスポーツでもありますので、90分を同じ姿勢で戦い続けることは難しいです。ただそれを乗り越えれば勝ち点3に近付くかなと思っています。今日の試合のことを教訓にして、選手たちとまた次の試合に向けての準備を進めていきたいと思います」

ーー最初の総括でも仰られたとおり、ゲーム全体でお互いに背後を狙う形が多くなりました。そこからお互いにチャンスを作っていたと思いますが、その中でゲームを落ち着かせようといった方向性の指示も一つのやり方かと思います。お互いにロングボールを蹴り合うことも多い試合展開の中で、あらためて落ち着いてサイドを突くとか、そういった戦い方も一つのやり方だと思いますが、今日の試合の中でそういった指示を送ることもあったのでしょうか。もしくはそのまま同じような形で押し切ろうと考えていたのか。そのあたりはいかがでしょうか?
「当然、縦だけでは相手をなかなか崩せないという中で、しっかりとボールを保持できる場面では保持すること、その中でもう少しサイドを使っていく中で、もう一度前へ動き出す時間を作ること、そういったことも必要だと思っていました。

ただそういった指示は難しい部分もあります。例えばボールを保持しながら試合を進めるといったことを話すと前へ出る姿勢がなくなってしまうケースもありますし、ボールを保持しながらゲームを運ぶことと、前にボールを運んで試合を進めていく。それらを両立させていくことが一つの良いやり方ではありますが、ゲーム全体の流れで言うと、後半から前に出る姿勢を失った中で1失点をして、さらに逆転まで持ち込まれてしまった事実を踏まえて、前だけに行けば物事が解決するわけではありません。おそらく布部監督も同じようなことを考えているのかもしれませんが、先ほど話した二つのバランスを考える必要はありますし、いずれにせよサッカーにおいて、ゴールに向かう姿勢はすごく大事なことだと思っています」

ーーまずは今日の試合でもゴールに向かうことを優先させたということですね?
「そうですね」

ーー後半に入って、京都の小屋松選手が裏に抜ける部分が何度かあったのですが、町田としてはメンタルの部分で前に行く姿勢を取れなかったのか。もしくは小屋松選手が飛び出すシーンがあったのは戦術的に問題点があったのか。そのあたりはどうでしょうか?
「やはり風の影響により、前半は風下、後半が風上という状況でしたが、どちらも長いボールが多い試合展開の中でお互いに前からプレッシャーをかけることをしていました。ただ後半は風上の中でわれわれのほうがポイントをうまく作れませんでした。(風下の)前半は前でポイントを作ることができていましたし、ただ後半はボールが止まってしまい、われわれがボールをはじけずに競ることも難しくなるケースが出てきました。その中で京都さんに前向きにセカンドボールを拾われる中でわれわれの背後へのボールを出されてしまったと思っています。

ただそれがすべてではありません。先ほども申しましたとおり、セカンドボールを拾うことももちろん大事ですが、最初の競り合いをしっかりと行うことで相手に自由にさせないことが必要でした。しかし後半に関しては、最初の競り合いの局面で誰も競らないようなシーンが散見されるようになりました。それによってわれわれのラインが下がってしまい、相手は前向きなプレーが増えていったため、それを改善したいという意図で選手を交代しました」

ーー2得点はおそらくスローインからの得点だったと思いますが、ここ最近のトレーニングの成果が反映されたかなと思います。その点についてはいかがでしょうか?
「そう言われたら『そうですね』という回答になります。ただ京都さんもロングスローなどのセットプレーも何本あったんだというぐらい回数が多かったので、選手たちも対応が大変だったと思います。オープンプレーも重要ですが、やはりセットプレーも重要な得点のチャンスではあります。すべてが狙った形ではないですが、点を取れたということはチームとして一つのきっかけになると思います。

オープンプレーの中でも点が取れるようになるとなお良いのですが、今日の終盤でもオフサイドになってしまいましたが、チャンスは作れていましたし、ここ最近はカウンターの場面でシュートまで行き切れない場面がありました。今日の試合に関してはオフサイドになってしまった場面もありましたが、カウンターからシュートまで持ち込む場面も作れていたと思います」

ーー逆転された後、結果的に2選手を同時に交代する形になりました。その中でまずはゴールを決めた戸高(弘貴)選手の評価を聞かせてください。また、CBも交代されていますが、その理由を聞かせてください。
「戸高はスピードもある選手ですし、ボールを足に収めてプレーするタイプの選手なので、どちらかと言うとドリブルの選手だと思っています。戸高が出るまでの時間帯に出場していた吉濱はどちらかと言うと、パスを出すタイプの選手で、彼が先発出場をして実際にプレーしていたわけですが、実は相手に2点目を取られる前の1-1の場面で戸高の起用を用意していました。

その段階で言うと、前がかりになっていたのは相手のほうだったため、カウンターを繰り出すシチュエーションを作るためには、戸高を起用したほうが有利な状況を作れるかなと思っていました。実際に彼が出場したあとに、一度左サイドで戸高が起点を作る場面がありました。最後に同点に追い付く点を取ったことも含めて、次第にけがから戻ってきて出場時間を増やしている中で、良く結果を出してくれました。

彼は実際に3年近くプレーできていなかったのですが、まだ90分フル出場はできていない状況です。それでもその中でゴールを決めることができたのは本人にとってもうれしいことだと思います。ずっと辛抱強く治療に務めてきたチームのメディカルスタッフにとっても、彼のゴールは非常に大きなことだと思っています。

またCBの交代に関しては、背後を突かれる形を作られてはいましたが、それ以前にあれだけ身長の高い選手が最初の局面で競らずに止まってしまったり、ボランチに対応を任せてしまうのではなく、CBで勇気を持って対応をしてほしかったと思っていました。こういう言い方をしては失礼にあたるかもしれませんが、マグ(増田)は『やりなさい』と指示をしたら実行する選手なので、そういうことを含めて、彼を起用しました。(増田を起用することで)前へ出るエネルギーをチームに与えられることも含めて、チームに少し勇気を持って対応することを働きかけられるのかなと思い、彼を途中から起用しました」

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