「ゼルビアTimes」郡司聡

【★無料公開】【コラム】第41回日本クラブユース選手権(U-18)グループステージ・松本山雅FCU-18戦/あの日があったから、いまがある

▼迅速なマネジメント

選手たちが2年前の教訓を生かした一方で、指揮官を筆頭としたコーチングスタッフもまた、2年前の反省をチーム作りにしっかりと反映した。この日の早朝、群馬県は大雨に見舞われたため、試合開始時間の変更を余儀なくされたが、大会本部からの連絡を受けた竹中監督は食事やミーティング、そして移動開始時間などを調整し、選手たちがキックオフの14時から最高のパフォーマンスを発揮できるタイムスケジュールを逆算。それをチームに伝えた。

「監督やコーチングスタッフがイレギュラーなことにすぐに対応しながらマネジメントしてくれたので、ストレスなくプレーできました」

そう言って主将の谷口は、指揮官らの素早い対応に感謝していた。

2年前の経験はさまざな形でクラブの財産として受け継がれている。大迫力の応援でチームを鼓舞した応援団の中にはU-14の選手たちも含まれているという。彼らは全国大会のピッチで戦う先輩たちの姿をその目に焼き付けた。

「今後こういう舞台に戻ってきたいと思わせるためにも、こういう舞台を見せるべきと思っていましたので、それを見せられて良かったです」と竹中監督。先人たちが築いてきた歴史を追いかける。そういう思いが脈々と下級生に引き継がれることでアカデミーの底上げは成されていく。最上級生の須藤は「僕たち3年生が卒団したあとも、全国大会での経験はこのチームに最低でも2年間は残ることになります」と言い切った。

2015年7月25日。NTT図南グランド。引き分けでもノックアウトステージ進出が決まる優位な状況の中、0-2で敗れた町田ユースは悲しみの涙に暮れた。試合後、サポーターの前に立った主将の加倉井拓弥の泣き崩れる姿が記憶に新しいサポーターもいるだろう。

失意に暮れたあの日から約2年。あの日最下級生だった1年生の代が最上級生となった今年、初めて全国大会のノックアウトステージ到達という新たな歴史の扉が開かれた。

この冒険の結末がいつ訪れるのか。それはまだ分からない。でも、これだけは言える。先人たちの思いと経験値を、クラブの財産として積み上げてきた成果が、また新たな歴史の1ページを生んだということを。

Photo&Text by 郡司 聡(Satoshi GUNJI)

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