「ゼルビアTimes」郡司聡

【★無料公開】運営会社・ゼルビアがサイバーエージェントグループの一員に。「町田から世界へ」、その転換期【コラム】

▼クラブ理念の共感とホームタウンとの親和性

「町田から世界へ」

2018年10月1日。FC町田ゼルビアがクラブスローガンにふさわしいクラブになるための、大きな第一歩を踏み出した。

台風一過の10月1日午後、東京都内でゼルビアとサイバーエージェントによる合同記者発表が実施され、大手IT企業の株式会社サイバーエージェントが第三者割当増資で発行する株式を引き受け、株式会社ゼルビアの8割の株を取得することを発表した。これにより、運営会社である株式会社ゼルビアは、サイバーエージェントの子会社となる。

両者初めての接触は今年4月。町田が積年の課題としてきた天然芝のグラウンドとクラブハウスの環境整備に向けた支援企業を探している渦中で、サイバーエージェントの藤田晋代表取締役社長が知人を介して、下川浩之代表取締役会長と接触した。その中で藤田氏は「町田で生まれ、町田に育ち、町田から世界へ、というクラブの理念に共感」し、「東京から世界を目指すクラブのサポートをしたい」と、サイバーエージェントグループの傘下に入ることを打診したという。

積年の課題解決へ、光が差し込む中、サイバーエージェント側にクラブの理念を尊重する意思がなければ、今回の決定も実現しなかった。「われわれはもともと育成クラブとしてスタートしたし、それがブレることはない」と下川会長が会見で話したように、FC町田ゼルビアというクラブのルーツは、少年サッカーが盛んな町田に、サッカー少年たちが目標にできるトップチームを作ろうという意思に起因している。その観点で言えば、この日の合同記者発表の席上で藤田氏の口から、クラブ理念を尊重すること、「東京に出てきた時には相模大野に住み、だいたい遊びに出かける時は町田に入り浸っていた」と語るなど、ホームタウン・町田に対する親和性があることを聞けたことで、ホッと胸を撫で下ろしたファン・サポーターも多いことだろう。

なお、クラブの経営体制は下川会長、大友社長の現体制が継続される。藤田氏は100%の株式取得にこだわった部分もあったと言うが、「これまでの苦しい状況も支えていらっしゃった多数の株主さまにも持ち続けたいという意思があるのであれば、持ち続けてほしいという思いから」株式の取得を80%にとどめたことは、クラブの歴史を築いてきた先人たちへの最大級のリスペクトに値する。クラブのアイデンティティは保たれたと言っても差し支えはない。

藤田氏は会見の席上で、2019年中にJ1ライセンス取得のための練習環境整備に着手することを明言した。さらにAbemaTVなど、サイバーエージェントが有するインターネットメディアやコンテンツを活用しながら、ファン・サポーターの拡大や集客面の向上に力を尽くすことにも言及している。「東京・町田発のビッグクラブ」誕生へ、サイバーエージェントとクラブが一体となって、力強く歩み始めた。

今から41年前の1977年。町田サッカー協会に所属する小学生たちを選抜して結成したFC町田トレーニングセンターが発足。ゼルビアのすべては、ここから始まった。Jリーグ百年構想を地で行く地域密着型の“市民クラブ”として、着実に進化を遂げてきたゼルビアが、一つの大きな転換点を迎えた。

Photo&Text by 郡司 聡(Satoshi GUNJI)

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