「ゼルビアTimes」郡司聡

【★無料公開】圧巻のハットトリック。横断幕を見た晴山岬は「このまま愛される選手になりたい」【高校選手権レポート】

◾️第98回全国高校サッカー選手権大会3回戦
2020年1月3日(金)12:05KICK OFF・等々力陸上競技場/4,897人
帝京長岡 5-0 神戸弘陵学園(0-0、5-0/40分ハーフ)
【得点者】帝京長岡/46分 矢尾板岳、55分、75分、79分 晴山岬、74分 川上航立

▼弱点を乗り越えたヘディングゴールの山

もちろん、チームの勝利であることが大前提。とはいえ、キャプテンの谷内田哲平をハーフタイムに交代させる“荒療治”を施した古沢徹監督にとって、2大会連続のハットトリック達成でチームを勝利に導いた晴山岬は、この上ない“孝行息子”だろう。

「たいしたものですね」(古沢徹監督)

また中学時代から晴山を知る愛媛FC内定のDF吉田晴稀による言葉を借りれば、「決定力は中学時代よりもすごく伸びた」。もっとも晴山にとっては、「フリーになること、決め切る力に関しては自信がある」ため、自身の存在価値を示したに過ぎないのだが。

3ゴールはいずれもファーサイドでクロスに合わせたヘディングシュート。「ヘディングでしか点を取れない(笑)」と本人は自虐的に話したが、一方で「自分の弱みだったこと」が日頃の練習の成果の賜物となって、この全国の舞台ではね返ってきた。昨日2日の試合後は、3回戦まで試合間隔が24時間空かず、コンディション調整のため、試合後即ホテルに戻るスケジュールを守ろうと、スピーディーに取材対応。その中で「1日100本、ヘディングシュートの練習をしている」と答えたが、真相は「急いでいたので、盛ってしまった」と、1日50本に“下方修正”を施した。しかし、ゴールを奪うことが全てであるFWというポジションの特性上、結果さえ残せば、それまでのプロセスは問われない。ましてや「良い意味で天然」(古沢監督)というキャラクターならば、大袈裟な自己申告もご愛嬌だ。

神戸弘陵学園を下し、昨年度のベスト8という戦績に並んでも、一つ心残りがあるという。26分、矢尾板岳斗からのパスに反応し、田平起也を抜ければフィニッシュまで持ち込める場面で、田平の意地のタックルを前にシュートチャンスを阻まれた。U-18日本代表では二度、同部屋で同じ時間を過ごしたセレッソ大阪内定の田平にマッチアップで勝てなかったことを悔いたが、「彼にもプライドがあったはず」と相手を立てた。しかし、ハットトリックを食らった田平の立場に立てば、一度ピンチの場面をしのいだだけでは満足できるものではない。田平は言う。

「前半は仕事をさせませんでしたが、後半はクロスからのヘディングで3点を決められた。得点数はそのままFWの価値に直結するので、プロで見返してやりたいと思います」

 

 

2回戦から試合会場には町田サポーターも多数詰め掛け、晴山の奮闘を見守ってきた。またゴール裏が中心となって製作した横断幕が、すでに掲出されている。当の晴山も横断幕の存在に気づき、「誰が作ってくれたんだろうとずっと考えていた」中で、町田サポーター製作によるそれだと伝え聞くと、こう言って感謝した。

「このまま愛される選手になりたい」

前回大会の得点数に並び、現在4得点。昨季のチームはベスト8の等々力陸上競技場で散っているため、「本当の勝負は準々決勝の等々力から」(古沢監督)を合言葉にしている。晴山にとって、雪辱を期すベスト8の舞台とはーー。

「昨年の自分を超えたいですし、その上で得点王を取れれば良いですね。1点でも取れば昨年を超えられる。自分がゴールを決めて、チームを準決勝に導きたい」

中1日で迎える準々決勝・仙台育英学園戦は、「昨年の自分を超える」ことに挑む舞台である。

Photo&Text by 郡司 聡(Satoshi GUNJI)

【準々決勝日程】
2020年1月5日(日)14:10 KICK OFF 等々力陸上競技場
帝京長岡(新潟県) vs 仙台育英学園(宮城県)

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