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「ゼルビアTimes」郡司聡

【★無料公開】敗戦の責任を一人で背負った晴山岬。最も涙腺が崩壊した瞬間とは?【高校選手権レポート】

◾️第98回全国高校サッカー選手権大会準々決勝
2020年1月11日(土)12:05KICK OFF・埼玉スタジアム2002/24,006人
青森山田 2-1 帝京長岡(1-0、1-1)
【得点者】青森山田/16分 田中翔太、47分 松木玖生 帝京長岡/77分 田中克幸

▼「本当に最後なんだ……」

後半アディショナルタイム表示の5分が過ぎると、主審のホイッスルが、高校サッカーの終わりを告げる瞬間となった。1-2。ピッチに突っ伏して、自然と悔し涙が頬をつたう。「山田を倒せるのは僕たちしかいない」と自らにプレッシャーを掛けて臨んだディフェンディングチャンピオンとの準決勝。帝京長岡の、晴山岬の、王者への挑戦は終わった。

「本当に最後なんだ……。本気で日本一を目指していた中で、こいつらともうサッカーをできないことが頭をよぎりました」

開始直後から「ボールがよく回った」帝京長岡は、青森山田を自陣に釘付けにするほど、押し込んだ。開始10分まで三度の決定機。しかし、決め切れずに時計の針が進むと、16分にサイドからのファーストチャンスで相手に先制点を決められてしまう。1点を追いかける形で始まった後半も、開始直後の47分に再びサイド攻撃から失点。77分に田中克幸が個人技から「スーパーな」左足シュートを沈めたが、あと一歩及ばなかった。

エースの晴山自身も90分で計4本のシュートを放った。本人が振り返る最も手ごたえのあった決定機は22分。川上航立からの縦パスを受けて右足のアウトサイドでゴールを狙った場面だ。

「相当落ち着いていたのですが、逆に落ち着き過ぎていたかなと。左に狙い過ぎましたし、力が抜け過ぎていました。この経験をプロで生かさないと」

65分にもボックス内で左足を振り抜いたが、GK佐藤史騎のファインセーブにあい、思わず頭を抱えた。85分にはキャプテンの谷内田哲平が戦術的理由でピッチを退き、交代のファーストチョイスだった矢尾板岳斗に続き、幼少期から同じチームでプレーしてきた盟友が埼スタのピッチを後にした。開始直後からあれだけ決定機はあっても、ゴールネットを揺らすことだけが困難だった。

 

 

「自分も味方も決め切れず、点が入らない流れになっていた。この点が入らない流れを断ち切るのは自分かなと思っていました。それができなかったことが悔しいです。また最後に(矢尾板と谷内田と)同じピッチに立てないのは悔しい。自分がここで勝たせないと、二人との時間が終わってしまう」

しかし、90+4分に左足で放ったミドルシュートがゴールの枠を外れ、日本一の夢は道半ばで潰えた。

「結果は伴わなかったですが、最後の試合にふさわしかったかなと思います。今日の試合は自分が決めていれば勝てたので、その責任が最後の涙として出たことは重く受け止めないといけない。FWとしての仕事を果たせなかったことを、課題として持ちつつ、プロの世界に行きます」

応援団やメインスタンドへ感謝の思いを伝えると、悔し涙もそこそこに、ベンチの中にあるクーラーボックスを担ぎ上げ、ロッカールームへと引き下がった。3年間の高校生活を振り返り、敗戦の悔しさや寂寞感を噛み締める時間よりも、チームのためにできることを率先して実践する姿に、晴山岬のパーソナリティーを見た。

「今まで試合に出ていなかった人たちがそういう仕事をして支えてくれたことで、自分たちが良い状態で試合に挑めるようにしてもらっています。今日で終わりで、次もないので、自分がやらないといけないと思っていたので、やりました。いろいろな人の思いを背負って戦うというのは、ずっと僕が大事にしてきたことですし、プロの世界でもそれは大事にしたいかなと思っています」

ロッカールームに引き上げると、谷口哲朗総監督の涙を、指導を受けてきた14年間の中で、初めて目にした。恩師のそんな姿を見れば、「悔しさがまた、込み上げてきた」。ミックスゾーンで谷口先生のことを口にするたびに、晴山は涙腺を緩ませ、言葉に詰まった。

「勝たられなくてごめんな。でも、ここまで連れてきてくれてありがとう」(谷口哲朗総監督)

涙腺が、タダでは済まなかった。

 

 

準決勝の翌々日から、プロの門を叩く町田は始動する。丸山竜平強化部長は学校側に配慮しながら、始動日のトレーニングに参加するかは、これから決めるという。「サッカー選手として、一人の人間として成長させてもらったサッカーのお家(おうち)」だった帝京長岡から巣立ち、羽ばたく舞台は、J2の町田。「日々進化できる選手になりたい」という晴山は、プロの舞台で、「決め切ること。もっと守備に走ること」を磨き上げると誓った。

Photo&Text by 郡司 聡(Satoshi GUNJI)

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