森マガ

松原良香氏インタビューで登場した「ストライカーを科学する サッカーは南米に学べ!」の紹介

松原良香氏のインタビューの中で登場した、大学院での研究を元にまとめたという「ストライカーを科学する サッカーは南米に学べ!」(岩波ジュニア新書)をご紹介します。

ただその紹介の前に「なぜ本の紹介をインタビュー本文の中でしなかったか」について説明します。これはひとえに、インタビューの最後に紹介すると、そこまですべてがプロモーションに見えるのではないか、と思ったからです。

インタビューの中で一番聞きたかったのは、仕事をしながら一見遠回りに見える勉強をする気になったのはなぜか、ということでした。社会人として収入を得ながら、その一部を諦める代わりに勉強する、しかもそこで学ぶことが直接的にはその後の仕事に結びつかないかもしれないというのは、やりたいと思ってもなかなかできないことだと感じています。そのためインタビューは「人間寄り」の部分だけにしました。

 

さて、肝心の本ですが、まずはストライカー論を交わす相手の多さと豪華さが目を引きます。オスカル・タバレス、ダヴィド・トレゼゲ、エディソン・カバーニ、高原直泰(敬称略)などの人たちが登場し、深い言葉を語ってくれています(そう言えばインタビューに登場するのは、すべて自分でアプローチしてコンタクトした人物ばかりということでした)。

また読み進めるとバランスの良さに気付かされます。それは、体験談、実証的な数字、インタビュー、考察、提言という様々な要素がどれかに偏ることなく盛り込まれているからです。また、日本の現状の問題点は指摘してありますが、それが誰かを傷つける表現にはなっていません。このあたりからも非常に練り込まれているのが伺えました。

「自分を出すのではなく周りに合わせることを優先して、相手が脅威を感じないサッカー」、ストライカーが「点を取ること以外のやるべきこと」が多いと日本の現状を分析し、ゴールを奪うために必要な発想やトレーニング、メンタルなどをいろんな人の意見を聞きながら論として構築しています。

文体も平易で読みやすいのは「岩波ジュニア新書」での刊行だったからかもしれません。どの項目もすんなり頭に入ってくるので、話のボリュームはありますが、読了しやすいでしょう。

あえて難癖を付けるとすると、それはこの本が本当に「ジュニア」向きでいいのかという部分です。内容は、もちろん中高生に考えてほしいことでもありますが大人にとっても楽しい話ばかりですし、提言の部分には中高生の環境をつくってあげるべき大人に対する話題も入っています。

なのでこの本は、中高生が買うか、あるいは中高生に買ってあげて自分も読むか、はたまた子供に読ませるから買っていくんだよ、というふりをして大人が読むか、ということになるかもしれません(もちろん冗談です)。少なくとも、中高生だけに独占されてはいけない本だと思います。

 

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