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長崎サッカーマガジン「ViSta」

【川崎戦直前コラム】 ~川崎戦2日前。岩は珠となる。~


川崎戦2日前のトレーニング終了後、高木琢也監督はMF翁長聖の居残り練習に付き添っていた。

「もっと空間を意識しろ」
「高さはゴールポストを基準にして考えてみろ」
居残り練習といっても、あくまで自主的なものなので、監督の声にも厳しさより、和らいだ響きがある。別の場所ではコーチ陣が別の選手に付き添い、また別の場所では強化スタッフと選手が談笑している。フッと昨年の光景が重なった。

「良い状態じゃないですか。今、チームも監督も力が入り過ぎず、かといって気持ちが緩んでもいない。肩の力が抜けた一番良い状態・・・力が出しやすい状態じゃないですか」
昨年の今頃、高木監督とチーム状態の話をしていた時、私はそう伝えた。素直な感想だった。「そうかな、自分のことはよくわからないんだよね」そう言った高木監督は、その後「でも、ずっと見ている藤原さんがそう言うなら、そうなのかもね。確かにあんまりプレッシャーとか感じないんだよ。(J1)昇格が目の前にきたら、もっと重圧かなと思ったんだけどね」と続けた。

長崎で指揮を執って6年目を迎えている高木監督だが、最初の数年、その存在感は絶対の孤高者といった感じで、岩のように堅く重かった。Jリーグに昇格したばかりのクラブを降格させず上を目指していくためには、それは必要な凄みだったのだろう。チームの体制が整っていくにつれて岩のようだった存在感はそのあり方を変え、昨年のJ1昇格を前にした頃には、ずいぶんと落ち着いたものとなっていた。それは水の流れに岩が磨かれて珠になるようなものだったのかもしれない。

「何か、去年の昇格前みたいな良い状態の感じが出てきましたね」
川崎戦前の様子について、そう伝える私に監督はこう返した。
「そうだね。練習のガツガツした感じや居残り練習の雰囲気に、去年はこんなだったなって思い出したよ。勝敗は何があるかわからないから何とも言えないけど、良い準備はできたと思うし、恥ずかしい試合にはならないと思うよ」

その言葉には余計な力みも、油断もなく、ただ自然体であることだけが感じられた。
そんな川崎戦2日前の光景だった。

reported by 藤原裕久

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