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【アカデミーコラム】敗れざる強豪校2020 第1回(全3回) ~強者の伝統(長崎総合科学大学附属高校)~

創成館高校の初優勝で幕を閉じた2020年の全国高校サッカー選手権大会長崎県予選。今年も熱戦が展開された素晴らしい大会で、参加した各校や開催に尽力した関係者には厚くお礼を申し上げたい。

今回、長崎サッカー応援マガジンViSta(ヴィスタ)では、ベスト4まで進出した3校にスポットを当ててみたい。3校の健闘ぶりを少しでも知ってもらえれば幸いである。

今回は、決勝戦で惜しくも敗れた長崎総合科学大学附属高校について書いてみたい。

■長崎総合科学大学附属高校~強者の伝統~

選手権予選における小嶺忠敏監督の勝負強さは有名だ。どんなに苦戦した年でも、選手権予選の頃にはキッチリとチームを仕上げてくる。中でも予選決勝戦での強さは、もはや伝統と言っていい。関係者に聞いても選手権の県大会決勝戦で、小嶺監督が負けた記憶を持つ者に会ったことはまだない。詳しい人に聞いても返事はこうである。

「たぶん、初めて国見高校を率いて戦ったときだけじゃないですかね、高木琢也さんがいたときの国見が平戸高校に負けたときの試合。あとはないんじゃないかなぁ」

延長戦に突入しようが、PK戦になろうが、学校が変わろうが、チームが不調とされようが、選手権決勝における小嶺監督が率いるチームの強さはすさまじく、神通力とまでいう人もいるほどだ。

「県外の指導者にときどき言われるんですよ。ずっと選手権に出場し続ける小嶺先生もすごいけど、いつまでも勝てないお前らも情けないって。でも、そのときに思うんですよね、選手権予選決勝戦での小嶺先生の強さを知らないだろって(笑)」とは、長崎日大の亀田陽司監督の言である。

苦戦の伝えられる今年の長崎総大附属だったが、日大が3回戦で敗れ、国見や創成館が静かなスタートを切った中、周囲からは「やはり長崎総科大附属が有力」という声があがった。準決勝の戦いぶりから、決勝戦は創成館有利という声があった中でも、選手権決勝における強さを知る人たちは「創成館有利であっても・・」という気持ちを拭えないでいた。だがついに今年、小嶺監督率いる長崎総大附属は決勝戦勝者の椅子を降りることになった。

小嶺監督は超実戦型の指導者である。徹底的に試合を繰り返し、その中でチームを鍛えあげ、周到なスカウティング情報と組み合わせて大会を勝ち進んでいく。それが、今年の総科大附属は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やチーム内の事情のため、チーム作りが例年よりも乱れた。岩永空潤・藤田和也・梶原駿哉など、他校から見ればそうそうたるメンバーがそろってはいたが、「鍛えあげる時間も人数も少なかった」とは準決勝後の小嶺監督の弁だ。

主力候補と目されていた選手たちが、選手権県予選では登録メンバーに入りはしたが、当初は背番号なしとなっていたのもそのためだ。選手権予選の準決勝で2トップを組んだのが、本来ボランチの一宮優斗と別府史雅だったことにも、それはうかがえる。

それでも選手個々の能力や、走力・勝負にかける思いの強さを発揮して、長崎総大附属は決勝戦まで勝ち上がった。それは選手たちの意地だったのかもしれない。高校の3年間を、こんな終わり方にしたくないという反骨心だったのかもしれない。決勝の舞台に立った彼らから、例年のチームほど笑顔がなかったように感じたのも、その必死さ故だろう。そう思うと、試合終盤で体を張って守る長崎総大附属の姿に「彼らは何と戦っているのだろう」と思い、涙が出そうになった。

近年の長崎サッカー界において、長崎総大附属は常勝王者である。本人たちがどれだけ挑戦者のメンタリティーを持とうと、チーム作りが順調にいかなかったとしても、彼らは県内では常に追われる側で、強者と見なされる。そんな重圧の中で彼らは決勝へたどり着き、最後の最後まで闘い続けた。それはどれほど過酷な戦いだったろうか。

試合終了の笛が鳴ったとき、長崎総大附属のある者は倒れ込み、ある者は膝をつき、ある者はうずくまった。ベンチを出てピッチを見ていた小嶺監督は、静かにきびすを返してベンチへと戻っていった。

「(負けると)今も悔しいね。悔しくて夜も眠れないくらい。寝ようとするとね、思い出すんだよ。あのときに・・ってね。いくつになっても悔しいのは変わらんね(笑)」

以前、小嶺監督にインタビューをしたときのコメントが思い出され、同時に準決勝後、「もし新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で選手権本大会が中止になっていたりしたらどう思いましたか」と質問したときの答えを思い出した。

「仕方がないなと思うだけですよ。受けいれていくしかない。(高校サッカーや選手権は)そうやって自分を強くする場所ですよ。良い修行の場。だからこそ喜びもあるわけですから(笑)」

8度目の優勝を狙った長崎総大附属の戦いは終わった。彼らは義務とすら思っていた選手権出場を果たせなかった。それでも彼らは敗者ではない。勝負には敗れても、戦うことから逃げなかった彼らは強者だったのだと思う。

ピッチに立った選手たちの多くは、このまま卒業となる。だが、この悔しさは次の世代へと引き継がれ、また新しい強者の伝統を作っていくのだろう。そしてこの悔しさが、彼らを一層成長させてくれることを願わずにはいられない。

reported by 藤原裕久

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