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【コラム】長崎サッカーの風景 『三菱重工長崎SCの紆余曲折。この街のサッカーを支えるクラブ』

2005年のV・ファーレン長崎誕生は、以後の長崎サッカー界に大きな影響を与えた。この長崎県初のプロチームは、九州リーグ優勝・全国社会人選手権優勝・JFL昇格・J2参入・J1昇格といった長崎カッカー界での未知の出来事をもたらしてくれた。

だが、長く長崎の社会人サッカーを支えたチームとなれば、やはり三菱重工長崎SC(以下:重工)となるだろう。1947年に三菱重工業株式会社長崎造船所のサッカー部として創部されたこのチームは、長崎の代表的な社会人サッカーチームとして、元Jリーガーを含む多くの長崎県出身選手を受け入れてきた。その中にはV・ファーレンでプレーしていた選手たちも大勢含まれる。

同時に、V・ファーレン長崎の誕生で最も影響を受けたクラブも重工だった。加入内定選手や主力を引き抜かれた格好になったこともあるし、V・ファーレン誕生の前年には、V・ファーレンの母体クラブにならないかと話を持ちかけられたこともある。あるときは国体県代表の座を懸けて戦ったこともあれば、事実上の合同チームとして共に全国を相手に戦ったこともある。

そんな重工は今、長崎県社会人1部リーグに所属している。

「3年前に九州リーグから降格して、翌年に復帰できずに、去年も3位に終わってしまって。申し訳ない成績に落ちてしまっているんですけどね」

三菱重工長崎SCの根橋和文総監督は、苦笑交じりにそう語る。だがチームを取り巻く状況が大きく変わったことの影響は大きい。2014年の長崎国体成年男子チームで主体を務め3位という好成績をおさめたが、その後の世代交代や主力退団でチーム力を大きく低下。そのため2016年から苦戦が目立つようになり、2017年に10位となって県リーグへの降格が決定した。かつての主な練習場だった三菱球場も、2017年の野球部廃部以後は使用機会が減少し、今は長崎市営サッカー・ラグビー場や長崎県体育協会人工芝グラウンドでやることが多くなっているという。

そういうさまざまな外的影響を受けるのは、いかにも社会人チームらしいが、その中でしぶとく立ち上がるのも重工というチームらしさだ。

海星高校でインターハイベスト8に出場したときの主力である『平野皓巴』、長崎総合科学大学附属高校・大学で先頭に立って全国を戦ってきた『成瀬美喜人』、創成館高校で歴代最高のキャプテンとの呼び声も高い『城臺映伍』といった若い選手たちが増え、大学サッカーでの経験や知見がチームに加わった。かつての重工は個人技を前面にゴリゴリと押していくサッカースタイルだったが、今は勢いだけじゃなく落ち着いたサッカーも展開している。

「去年くらいから新しいメンバーが加わって、勢いがでてきているところだったんですけど、今年も新しいメンバーが入ってきて、まだ少し課題はあるんですけど、九州リーグにいたときくらいのチーム力が戻りつつあるのかなと」

チーム在籍最年長の安部真一がそう語るとおり、重工は着実に復活へと向かっているのだ。

「負けちゃいました。まだまだですね。」
天皇杯長崎県代表を決める長崎県選手権の決勝戦でMD長崎に敗退したあと、あるチームの試合を観に行ったときに安部はそう言って苦笑した。悔しさもあるのだろうが、笑えるのは負けても見つめ直すところがあると思えているからだろう。チームが下降線ではなく、上昇曲線に入っているからこその笑いなのだと思う。

ちなみにこのとき安部に会った場所は、V・ファーレン長崎U-18の公式戦の会場だった。8月にV・ファーレンで二種登録された息子の安部大晴を見に来ているという。ミスター重工と呼ばれる選手の子は、U-12からV・ファーレンに所属している。小学生だった安部大晴が、V・ファーレンのスクールに来た時に「安部ちゃんの息子が来てますよ」と当時のスタッフに言われたことを思いだす。

8月に重工とV・ファーレン長崎U-18が練習試合を行ったあと、根橋総監督は「(原田)武男(V・ファーレン長崎U-18ヘッドコーチ(重工で2011年にプレー))も、小森田(友明)(V・ファーレン長崎U-18コーチ(重工で2013・2014年にプレー))もいるし、これからU-18に練習試合なんかもやらせてもらえるようになればね」と言って笑った。いろいろな関わりの果てに重工とV・ファーレンもようやく適切な距離感や関係ができたのだと感じた瞬間だった。

「重工のオーバー40のチームに入ったんですよ」
去年、知り合いの国見高校OBの居酒屋店主がそう言っていた。同じ年の末に、思案橋のラーメン屋に入ると、えらく笑いながら絡んでくる人がいたので適当に相手をしていたら、重工のオーバー40でプレーする既知の選手だった。
「今日も試合やったんですよ(笑)。」
「めっちゃ走ったけんね!」
隣に来て座り、楽しそうにサッカーの話をする。

あらためて思う。長崎の街にとって、重工というチームは本当に近い存在なのだ。そして、これからも重工というチームは、この街にそうやって息づいていくのだろう。
「今度、試合を見に来てくださいよ」
そう言って店を出る選手の背中をみながら、街クラブでも、純粋な企業クラブでもないクラブのあり方も素敵だなと思えたりした。

reported by 藤原裕久

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