長崎サッカーマガジン「ViSta」

【アカデミーコラム】新型コロナで高校サッカーやJクラブアカデミーが受けた影響~U18県1部リーグの順位確定や試合の任意開催に思うこと

今年1月、コロナ禍の中で行われた高校サッカー選手権に出場した創成館高校

「♪おーおーきなー、ノッポの●●●(個人名)~、●●(学校名)の点取り屋~♪」

Jリーグでめったに聞くことはないが、高校サッカーでは聞くことが多いチャントの一つである。ピッチ横、あるいは決勝や準決勝のスタンドからベンチ入りできなかった選手や1~2年生が懸命に声援を送る光景が見られなくなって2年近くがたとうとしている。

2019年の長崎校高校サッカー選手権決勝。スタンドからは多くの声援が

10年以上前にサポーターをやっていた経験から感じるのは応援とは戦うことの疑似体験だということである。彼らはピッチ外にいるが、ピッチ内で戦う選手に声援や拍手を送ることでピッチ内での戦いを疑似体験する。だからこそ、ピッチ内でのワンプレーや得点、失点、勝敗に強烈に同調し、悔しさや喜びをわがことのように感じるのだ。この疑似体験の強さこそが、観客とサポーターと呼ばれる人種の一番の違いだろう。

プロでもアマでも、サポーターは応援を通じてピッチ内での戦いを疑似体験する

そう考えると、現3年生と2年生は何ともモヤモヤした感情があることだろうと思ってしまい、同時に高校サッカー特有の応援文化的なものを1年生が経験していないことに、勝手に不安を覚えてしまうのである。このまま高校サッカー特有のチャントがなくなったらどうしよう・・と。もちろん、それは杞憂に終わるのだろうが・・。

昨年はまだ新人戦が通常開催だったので、そこでは少しは応援もできたのだが、今年は新人戦も高総体も声を出しての応援などができなかった。来月から始まる選手権の県予選も決勝戦と準決勝以外は無観客開催だ。今年も、選手権県予選決勝恒例のブラスバンドによる応援も、ピッチに立てなかった選手による、ときにワルノリ半歩手前くらい(笑)の応援も、試合後に敗れた対戦相手に「お疲れ、●●(学校名)」というチャントも聞けないのだろう。

今年1月の長崎県新人戦決勝戦。声を出しての応援はできない

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)でピッチから失われたのは応援だけではない。全国に緊急事態宣言が出された影響で、高校生にとって最も成長する高総体後からの期間に2カ月ほど対外試合ができなくなった。U18長崎県1部リーグは、前半戦終了時点の成績が最終順位となり、残る対戦は対戦校同士の任意開催となった。そのため1位の長崎総合科学大学付属高校の優勝が確定し、同勝ち点の2位長崎日大や、リーグ前期に長崎総大附属を破っていた3位の創成館は逆転優勝の道が閉ざされてしまった。一方、長崎総大附属のプリンス昇格や国見のプリンス残留にも左右されはするが、このままなら諫早商業や島原商業という県央・島原の名門が県2部リーグへ降格となる。何とも不運だ。

先日行われた長崎県1部リーグの島原 対 V・V長崎2nd。この試合も任意開催だった

影響を受けたのはJクラブのアカデミーも同様だ。Jユースリーグは全国大会の中止が決定し、グループステージの残り試合は任意での開催となった。「チームとしての目標がプリンスリーグのみになって、選手たちがちょっとかわいそうですね」とは原田武男V・ファーレン長崎U18監督の言葉だ。高校もJクラブのアカデミーもチーム強化にどれほどの影響を受けたことだろう。

来年こそ、こういう影響を受けることなく、チームを強化し、大会を戦い、声援を送る・・。そんな日常が戻ることを祈らずにはいられない。

reported by 藤原裕久

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