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【アカデミーレポート】敗れざる強豪高2021:国見高校~「力ぞ、力」。再び全国で歌声を。新生国見が求める本当の力~

「青と黄色の縦縞をもう一度、全国へ」
選手権県大会の会場に入ってそう書かれた横断幕を見た瞬間、グッときた。卑怯である。こんなの出されたら、選手権の名場面が甦ってしまう。頭の中では「振り向くな君は美しい」が鳴り響き、あらゆる年代の試合が勝手に脳内再生されるのだ。

国見ファンかどうかなど関係なく、高校サッカーを見てきた人なら大なり小なり同じことを感じるだろう。だが国見が最後に全国大会へ出場したのはもう11年も前である。十年ひと昔という言葉に従うなら、全国を席巻した強い国見は昔話のようなものだ。

そんな国見がここ数年は再び全国へと近づきつつある。一昨年は選手権の県予選を勝ち上がり、決勝戦で敗れたもののプリンスリーグ九州に見事参入してみせた。昨年は中島大嘉(現 コンサドーレ札幌)が高校から直接Jリーガーになった。部員は100名をゆうに超え、Jのスカウトが注目することも増し、今年の新人戦では県だけでなく九州王者にも輝いた。

木藤健太監督は「昔の国見は全てがすごすぎた」と、小嶺忠敏前監督(現 長崎総合科学大学付属高校サッカー部監督)が率いたときの国見に対して最大級のリスペクトをしつつ、「今の国見は当時とはやはり違う。なので国見復活と言われるより、新生という感じですね」と語る。だがやはり周囲は名門復活をイメージする。過去の歴史と比較されるのは名門ならではの悩みだ。

だが、過去の国見をイメージして木藤健太監督の国見を見れば印象は大きく変わるだろう。木藤監督の国見はゴリゴリのパワーサッカーではなく、ボールを保持して動かすことをベースに据えた非常に近代的なスタイルだ。本川瑠空・田﨑翔真・日髙希星・北村一真・川添空良といったボールを動かせるメンバーを組み合わせ、走力も生かしながら相手をいかに崩すかを主眼に置く。1月の県新人戦と2月の九州新人戦では、これらの選手らが勢いを持って戦い見事に優勝をさらった。

だがボールを保持するスタイルは機能すれば変幻自在で強力ではあるものの、その成長スピードや浸透は決して早くはない。プリンスリーグ九州や県高総体あたりでは、そこが苦戦の原因となった。主導権を持ってボールを動かしながら、得点を奪いきれずに失点して敗れる。選手にとって最も悔しい負けを国見は何度も何度も味わった。それでも国見は戦い方を安易に変えはしなかった。それは彼らが短期の結果ではなく、真の強さ、未来へつながる強さを求めていたからだ。

私が見る限り、木藤健太監督は県内高校サッカーの指導者としては最もプロ型の指導者である。しっかりとした理論を持ち、選手にスタイルを押しつけるのではなく、理解させる、浸透させることに力を注ぐ。物腰もスマートで高校サッカーの指導者としては珍しいほど、試合中に声を荒げることが少ない。目先の勝ちより強くなることへの要求が強いタイプで、だからこそ公立校のサッカー部としては異例な数のライセンス持ちだらけであるスタッフ陣が、その周囲には集まっている。そして、そういうスタッフ陣全員で取り組んでいるのが今の国見スタイルなのだ。だからこそ安易なスタイル変更には走らない。

九州新人戦優勝以降は苦戦続きの国見だったが、それでもスタイルを貫いた結果、国見は4-3-3のシステムを徐々に開花させていく。プリンスリーグで神村学園と対戦したときも、敗れたもののボールを支配する国見の戦い方は、スカウト陣の注目を大いに集めた。アビスパ福岡戦では圧倒的なボール支配率を見せた。選手権県予選前には再び「国見の優勝もあり得る」という声が聞かれるようになっていく。

選手権県予選の初戦を大勝発進し、続く鎮西高校戦では堅守に苦戦こそしたものの延長で振り切り準決勝へ進出。準決勝の創成館戦でも大会屈指の好勝負と言われる戦いを繰り広げて見せた。だが延長戦でも決着がつかなかった準決勝はPK戦に突入し、県最強GK永田健人の前に涙を飲むことになってしまった。

それから約2週間後、国見はプリンスリーグ九州の第17節でリーグ首位のV・ファーレン長崎U-18と対戦していた。結果的に0対2で敗れたものの、数人の故障者を出しながらも国見は途中まで互角の戦いを見せた。その戦いぶりに、取材している記者の間でも「選手権でこの状態ならもっとやれたんじゃないか」と言う声が出るほどの成長ぶりだった。国見OBでもある対戦相手の原田武男監督は、試合後、「国見にも残留してほしいですね」と呟いたが、それはOBとしての感傷から出ただけの言葉ではないだろう。

それから4日後、国見はコロナ禍で延期となっていたプリンスリーグ第10節を戦った。本来は国見高校側(長崎県)で開催されるべきゲームだったが、筑陽高校側のスケジュールに空きがなく、止むなく国見が福岡県へ移動して戦うことを強いられ0対1で敗れてしまう。これで国見はリーグ最終節を待たずにプリンスリーグ最下位が決定。プリンスに残留するには、現在プレミアリーグWESTに所属する大津・サガン鳥栖・東福岡が全てプレミアに残留し、プリンスリーグ上位2チームのV・V長崎U18と神村学園がプレミア昇格を達成しなければならない。

他力である。他力ではある。だが、幸いにもプレミアリーグ所属の九州勢3チームの残留が決定した。あとはV・V長崎・神村の2チームがプレミア昇格を達成すれば残留決定だ。そして国見もプリンス最終戦の日章学園戦を3対2で勝利し意地を見せた。悪あがきと言われようが、ここで見せた意地が報われることを今は祈るしかない。

「力ぞ、力(ちから)」。
国見高校の大きな試合では必ず貼り出される横断幕に書かれた言葉である。国見高校の校歌の一節である「見よ溢るるは力の泉。力ぞちから、国見高校」からの引用である。この校歌とともに国見は歴史を刻み続けてきた、県大会でも、九州でも、全国でも・・。強い国見にとても似合う歌詞だ。われわれ高校サッカーを愛する者は大なり小なり、この校歌が似合う強い国見の台頭を待っている。やはり国見には強くあってほしいのだ。青と黄色の縦縞が再び全国の舞台に立ち、全国を席巻する、そして彼らが誇らしげに歌う、「力ぞ、力」。

その歌声が再び全国で聴ける日を、私はずっと待っている。

reported by 藤原裕久

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