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【アカデミーレポート】令和3年度長崎県高校新人戦を終えて~力を増す県4強。南山・九文は存在感を示す~

『令和3年度長崎県新人体育大会(第56回)サッカー競技』は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で決勝戦が中止となったため、国見高校と長崎総合科学大学附属高校の同時優勝で幕を閉じた。今大会で感じたのは国見・長崎総大附属・日大・創成館の県4強の強さだった。

国見はエース北村一真がたくましさを増しており、準々決勝・準決勝ではマークをつけられても、試合終盤にしっかりチャンスを作るなど強さを見せた。サイドでも左で中村敦貴がスキルの高さを感じさせ、右では幸偉風がスピードのある仕掛けで活躍。北村とともにボランチを務めた濱田渉帆もプレーの安定感を増していた。CBも上田陽南太・川久保幸之介の2人が対人で強さを発揮。コンディションのため川添空良は途中出場となったが、出場すれば多くのチャンスに関わるなど、層の厚さや多彩さを思えば優勝も妥当だと感じさせた。

長崎総大附属はGK亀井一起・竹田天馬・平山零音ら選手権でも活躍した選手が、好調を維持。新キャプテンの竹田、平山も攻守両面で中心を担い、亀井の安定感も際立っていた。児玉勇翔・原口玖星が抜けたCBも、徳田壮馬・京谷來夢が大会無失点の安定感を披露。新10番の山下竣介が勝負強さを見せるなど、あらためて選手の粒がそろっていた。一方、2回戦の島原商業戦では前半に縦に早いサッカーで3点を奪ったが、後半はボールをつないでゲームを支配しながら得点できないシーンも目立った。このあたりが今後の課題となりそうだ。

長崎日大は、起点となってパスを出せる高嶺史哉、得点源の梅野雄大、ボールを引き出すこともパスを出すこともできる白石快周、足元のスキルが高い山口大斗、高さのある田中蓮など攻撃のタレントが多彩だった。伝統のボールをつなぐスタイル以外にも、長いボールからの攻撃もでき、例年よりも攻撃の引き出しは多くなっている。また昨年の反省からプレー強度にもこだわっており、準決勝の長崎総大附属戦でも中盤で激しいチェイスを見せていた。DF陣はまだ完全に固まっていないが、昨年からレギュラーをつとめるGK福田雅哉などタレントは健在。その選手層と質は今年も十分に高い。

手堅さだけでなく、仕掛けもできるチームになりつつあるのが創成館だ。高いスキルで攻撃の中心を担った田川蓮翔、スピードを生かしてチャンスに多くからんだ山崎雄貴と、得点感覚の良さを披露した波多野太一といった攻撃陣は安定して力を発揮した。昨年は出場機会を失っていた波多野太一が復活したことは、チームにとって大きなプラスだろう。松井奏斗以外ほぼ一新されたDF陣も、GK濱村達也や対人に強いCB武内貴大が強さも見せるなど伸びしろを感じさせた。まだコンディションの関係で起用していないレギュラー格が控えていることを考えれば、チーム力はやはり県トッププラスなのは間違いない。

今大会は実力・結果ともにこの4チームが、他校を頭一つ引き離している感があった。今年の長崎県サッカー界はこの4強が中心となって回っていくだろう。

サイドから積極的に仕掛ける姿勢が目立った長崎南山

これ以外に好評価だったのが長崎南山高校と九州文化学園だ。
南山は山村和雄・山口琉偉のサイドに、吉村優伸や益永新大といったセンスのある選手が絡んで良い攻撃を展開していた。立ち上がりに受け身に回る悪癖や、守備の不安定さがあるものの、撃ち合いに持ち込めばかなり危険なチームだろう。

九州文化は個々の技術が高く、カンミンギュや津島理音以外にも、宮本真大や梅野哉汰といったボールを扱う技術が高い選手や、中川星のような身体能力の高い選手が、積極的に仕掛けるスタイルは2回戦で創成館をあと一歩まで追い込んだ。高総体や選手権、県2部リーグでは台風の目となる可能性を秘めたチームだった。

九州文化学園は創成館と延長の末に惜敗

総じて今大会は、しっかり走り体を張れるチームが多かった。そのため、全体的なレベル格差は減っているのだが、県四強との間には格差が広がっているように感じた。準々決勝の4試合全てで2点差以上の差がつき、6対0も2試合あった一方、準決勝はどちらに試合が転んでもおかしくない接戦だったことにもそれは感じられた。この差が高総体のときに広がっているのか、縮んでいるのか。そこに今後は注目していきたい。

最後になるが、今年も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大という中で、大会開催に尽力された関係者に、最大限の感謝を示したい。

reported by 藤原裕久

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