長崎サッカーマガジン「ViSta」

竹村栄哉テクニカルダイレクター インタビュー前編:V・ファーレンの成長・変化・強化。「サポーターは選手にとっての大きな力にもなる。それは強化や監督にもできない部分」

Jリーグが誕生する前年の1992年にフジタ(ベルマーレ平塚)加入を皮切りに、以後5つのJクラブでプレーし、2007年に地域リーグを戦っていたV・ファーレン長崎に加入。以後、選手としてクラブのJFL昇格に貢献し、引退後にフロント入り、Jリーグ参入後は強化部としてらつ腕を振るった竹村栄哉テクニカルダイレクター(以下:竹村TD)。2018シーズン終了後に一度クラブを離れ、J1のベガルタ仙台で強化を担当し、今年帰還した竹村TDにクラブの成長や変化、強化について話を聞いた。

■まずは、おかえりなさい(笑)。今回4年ぶりの長崎復帰ですが、戻ってきてクラブの変化を感じる点を聞かせてください。

前にクラブにいたときも、一度離れる直前の頃(2017シーズン)あたりは、環境面なんかもかなり整ってきていたんですが、そういったものがさらに整備されてきた感じがありますね。選手が良い準備ができるようになっていて、レベルアップした良い環境ができてきたなと思います。以前に僕がいた頃より、アカデミーのレベルも上がってきていると思います。

■竹村TDはアカデミー発足時のコーチでもありますが、アカデミーの成長についてはどう感じていますか?

去年もプリンスリーグ九州で優勝していますが、4年前の僕がいた頃にはちょっと想像できなかった成果ですね。二種登録できる選手も増えていますし、安部大晴もプロ契約になった。安部だけじゃなく、他の選手もレベルが高く、トップの練習に参加しても違和感なくやれています。ここ3年くらい急ピッチでレベルが上がってきたと思っています。

■アカデミーからトップに昇格しそうな選手が増えている一方、3月には白井陽貴選手(法政大)の特別指定が発表されました。竹村さんのクラブ復帰が決定した段階では、すでにチーム編成もある程度固まっていたと思うので、復帰後最初の獲得選手となるわけですが、獲得にあたって評価した点を聞かせてください。

彼の場合は落ち着いてプレーできるところが大きいですね。足元の技術もありますし、スピードもある。ディフェンダーとして必要な要素を持っている選手だと思います。もちろんまだ完璧じゃないんですが、まだまだ伸びる可能性をたくさん持つところが魅力的ですね。何か武器になるものがないとJ1では戦えないんですが、彼の場合はセンターバックの選手でありながら、スピードもあるのは大きかった。少しでも早くプロを経験することで伸びてもらいたいと思ったし、J1でプレーすることを想定して獲得を進めました。

来季の加入が内定している白井陽貴(法政大学)

■J1後も見据えて動いているわけですね。そのあたりを踏まえて、現状のチームについてはどんな補強を考えていますか。

今のチームを分析したときにベテランが多いというのは特徴の一つだと思っています。それは必ずしも悪いことではないし、僕も経験上、昇格する・強くなるためにはベテランの力が絶対に必要だと思っています。その一方でチーム全体の数年後を見据えると、彼らの次の世代が少し少ない。チーム編成は1年後、2年後、3年後・・その先というふうに長いスパンで考えていかなければならないので、そこはこれからの補強ポイントにはなると思っています。

■現状のチームは戦力的に高いと評価されていますが、開幕から苦戦する試合が多くありました。そこについてはどうとらえていますか?

今年のチームは去年からのベースを継続して、そこに新しい力を入れていこうという方針でやっています。去年の良い戦いをしたチームをベースにしているぶん、去年からいた選手はやることがわかっている一方で、新しく入ってきた選手にはまだ小さなズレがある。例えば守備に戻るとき、去年からいた選手は、この状況ではここに味方の選手がいるはずだと思ってプレーするんですが、新加入選手がその位置に入れていないとか、少しだけ遅いとかですね。でも大枠では間違っていないので、キャンプでは大きな問題が出なかった。それが苦戦した原因の一つになったとは思います。でもどの選手も本当に頑張ってくれているし、彼らの個が去年のベースにうまくハマると、第3節の大分戦のような良い勝ち方もできるわけです。今は焦れずに継続していくしかない。選手たちもそこは理解してくれているので、チーム内での意識や約束事の共有が進めば、勝ち点3は取れていくと思っています。

自身も長崎で現役としてプレー経験もある竹村栄哉TD(画像右 背番号11)

■クラブとして単にJ2を戦うだけでなく、J1昇格後も見据えて強くなっていかなければなりません。そこについてはどういった構想を持っていますか。

構想はありますけど、これをやれば即J1に行けるようなものじゃないんですよね。結局は積み重ねだと思うんです。負けてから何か新しいことをしたり、もがいたりしても遅いんですよね。最初から、勝つために必要だと思うことを考えて、それを信じて全力でやる。それしかない。その中で補強の必要があれば補強するというスタンスです。チームとしてはまず、去年のベースを継続するという方針を信じて、チームに関わる全員が同じ方向を向くことが大事だと思います。長崎が2017年にJ1昇格を達成したときの一体感って、選手もスタッフも、その周囲も含めてものすごかったじゃないですか。同じ方向を向いていれば、負けたときに誰が悪いとかそういう空気にはならないんですよね。選手が頑張っていないなんてことは絶対にないんです。それは監督も他のスタッフも一緒。僕だったら強化として100%、クラブもクラブとして100%やるべきことをやる。それぞれが全力で支え合って、それがうまく一つになったときに昇格が見えてくると思っています。

■サポーターも含めての一体感の重要さですね。

そういう意味で、僕が長崎に帰ってきて意外だったのがホームでの入場者数です。勝てない中でも応援してくれていて、本当にありがたいんですけど、クラブとして100%昇格すると打ち出しているシーズンで、いろんな事情があるとはいえ、サポーターの力をもっと貸してほしいなって。仙台で勝てない試合を多く経験したんですが、連敗中でも試合中ずっと手拍子で応援してくれて、それが本当に選手の力になっていたんですよ。長崎のサポーターにもそういう力があることを僕は知っているので。そこも一体感だと思うんですよ。それが強く、大きくなれば、ホームでは負けないという空気が強くなる。選手もやっぱりサポーターにたくさん来てほしいって言うんですよ。みんなで力を合わせて、良いときも悪いときも共感しながら戦う。厳しい戦いを乗り越えていくには、それが今一番大事なことだと思っています。

■サポーターの力を必要と感じているんですね。

お願いばかりで申し訳ないんですけど、選手を後押ししてほしいんです。スタジアムにたくさんのサポーターが来てくれれば、選手はホームで変な試合はできないと思うし、大きな力にもなる。それは強化や監督にもできない部分なんじゃないかって。僕は2018シーズンが終わってときに長崎を離れて、今回4年ぶりに帰ってきたんですけど、長崎のサポーターの力を知っているぶん、一緒に戦ってほしいと思うんです。クラブとしてやると決めたことをやり続けることが大事だし、僕らはそうやって戦っていくので、サポーターの力も借りて一緒にJ1昇格を果たしたいです。

reported by 藤原裕久

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ