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【アカデミーレポート】2022 長崎県高総体サッカー(男子)総括~県内4強は揺るがなかったものの全体の底上げが確認できた大会。そして台頭する九文~

6月4日から10日まで開催された『令和4年度(第74回)長崎県高等学校総合体育大会 サッカー競技(男子)』は、長崎総合科学大学附属高校の優勝で幕を閉じた。

今夏の長崎総大附属は例年よりボールをつなぐ傾向が強かったが、同時に竹田天馬をキッカーとしたセットプレーや、福島文輝の高さを使った攻撃など武器がハッキリとしていた。攻守両面でエースである竹田の存在感は際だっていたが、京谷來夢・瀬戸俊樹ら高さのあるDF陣、チーム全体でのタイトな守備、GK亀井一起の好守など総合的な守備力が抜きん出ていた。決勝戦で大会中一番良いゲームをしたことからも、実戦を戦いながら仕上げる勝負強さがあった。

準優勝の国見は決勝でも長崎総大附属を相手に優位にボールを動かすなど、総合的な実力はかなり高レベルだった。途中出場中心の濱田渉帆、中山葵といった選手が目立ったように、個の特徴も試合で出せるようになっていた。それだけにフィニッシュを高めたいところ。得点源が明確になれば、北村一真・川添空良といったタレントもさらに力を発揮するはずだ。上田陽南太や村田一翔など、守備にもタレントがおり、攻守のポテンシャルがまだまだ残されている。

準決勝で長崎総大附属に敗れた創成館だが、安定感では長崎総大附属とともに大会屈指だった。田川蓮翔や波多野太一などタレント的にも選手の粒は揃っていた。一方でチームを鼓舞し、引っぱる存在にもっと出てきてほしいところ。手堅い戦い方は十分にできるだけに、ここからの対外試合でチームとしての逞しさを身につけてもらいたい。同時に福田虹斗や篠原太希といった選手の成長にも期待したい。

同じく準決勝で国見に敗れた長崎日大だが、今大会で白石快周・大束康誠・山口大斗・友永響・永吉稔空ら前の選手が流動的に動くスタイルを一段階深化させた。予備知識なしの相手を混乱させる初見殺しの形は見ていて面白かった。故障していたレギュラーが復帰すれば、梅野雄大といった得点源もいるだけにより活躍できるはずだ。このスタイルが選手権予選までにどこまで高められるかに注目したい。

大会の結果だけを見れば、新人戦とベスト4の顔ぶれは変わらないが、今大会は県内の勢力図や状況には変化が見られた。

島原商業・鎮西といった強豪が初戦で敗れた一方、長崎西が堅守で新人戦に続いてベスト8に進出。長崎工業や海星も敗れてもなお、多くの関係者が試合内容を評価するなど、フロックではない強さを見せていた。県内全体の底上げは着実にできている。

そして今大会で最大のインパクトを与えたのが九州文化学園だ。エースのカンミンギュが故障で離脱した大会ながら、有光亮太監督は正式就任3年目で県大会ベスト8進出を達成。ボールを動かす一方で長いボールを使って裏を狙った速攻も見せ、相手をハメに来る戦い方は、他の強豪校からも「厄介な相手になってきた」「面白い戦い方をしている」と評価する事があがっていた。今後、県内で台風の目となりそうだ。

大会を制覇した長崎総大附属と、準優勝の国見は、18日から鹿児島で九州総体に挑み、長崎総大附属はそこから7月末からのインターハイへと挑む。
「昨年のインターハイ初戦で青森山田に負けて悔しかったので、今年はベスト8の壁を破りたい(亀井一紀)」

昨年の雪辱を狙う長崎総大附属の活躍を期待したい。

reported by 藤原裕久

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