ニイガタフットボールプレス

【十日町ノート】~大切なものをつかんだトレーニングゲーム~

■背番号20が躍動!

ホーム、ビッグスワンでヴァンフォーレ甲府に0-2と完敗し、4連敗となった昨日の今日ですから、十日町のクロアチアピッチで12時から行われた松本山雅との練習試合が、どれだけ重要な意味を持つのか。誰よりも分かっていたのは、ピッチで躍動した選手たちでした。

ゴールマウスを守ったのは、松本でもプレーした野澤洋輔選手。試合前の円陣で片足を高々と上げ、ゴールのクロスバーにぶら下がるいつもの姿に、スタンドからも歓声が。新潟だけではなく、きっと松本サポーターの方々からの声も含まれていたはずです。

試合状況、展開を冷静に見ながら、大きな声できめ細やかな指示を出し続けた野澤選手。クリーンシートの原動力の一人になりました。2-0で始まった後半早々、左クロスと思わせて相手が狙ってきた鋭いミドルシュートを横っ飛びではじき出した場面は圧巻でした。

4-2-3-1の新潟に対し、3-4-2-1の松本がパワーを持って前からボールを奪いに来なかったこともあり、試合序盤からボールを丁寧に動かしながらチーム全体で前進し、相手陣内に入っていきます。

5分。高い位置でボールを持った右サイドバックのサムエル・サントス選手からくさびのパスがゴール前に入ります。コントロールしようとしたシルビーニョ選手が倒され、いきなりPKのチャンス。しかし、ゆっくりとした助走で駆け引きしたシルビーニョ選手のPKは、GKにストップされてしまいます。

微妙な空気になりかねないのを打ち払ったのが、背番号20の躍動でした。トップ下で先発した本間至恩選手の仕掛けに、最初の歓声が沸き上がったのが15分。相手ボールをカットした至恩選手がドリブルで持ち上がると、並走するシルビーニョ選手、サムエル選手も「シオン!」と大きな声で名前を呼んでボールを要求します。至恩選手の選択は、自らのシュート。これは相手にブロックされましたが、直後の18分、再び自らボールを持ち運ぶと、ペナルティエリア手前で右足を一閃。強烈なミドルシュートがゴール左に突き刺さりました!

さらに至恩選手は40分、1トップの平松宗選手とともに相手のバックパスに猛然とプレッシャーを掛けます。苦し紛れに蹴り返したボールをシルビーニョ選手がカット、素早く至恩選手にパスすると、中をよく見てペナルティエリア左からの至恩選手のパスを、ゴール前に走り込んだ加藤大キャプテンがきっちり決めて2-0とします。

■チームに宿る熱量

後半が始まる前、堀米悠斗選手から「絶対に、このままでは終わらない。相手は入り、パワーを持って来るからね」と気を引き締める声が仲間に掛けられます。その松本のパワーに、後半も新潟は堂々と対抗しました。56分、平松選手が中盤まで下がってきて、素晴らしいボール奪取を見せます。相手ともつれて倒れ込みながら、戸嶋祥郎選手を経由し、しっかりとヨンチョル選手にボールが渡ります。中央を一気に持ち上がったヨンチョル選手は、シュートを打つ前に少しボールを右に動かし、GKのタイミングを外す冷静さを見せ、ゴールネットを揺らせます。

球際でのファイトで上回るシーンが何度も見られた、この試合。61分、祥郎選手が決めた4点目もそうでした。ボランチから右サイドハーフにポジションを変えていた祥郎選手は、タッチライン際の思い切った寄せからボールを奪うと、そのままぐいぐい持ち上がり、ペナルティエリア内に侵入。相手DFをスピードで振り切り、決め切りました。

70分には、交代出場でトップ下に入った秋山裕紀選手がマサル選手からのパスをペナルティエリア手前で受け、相手に囲まれながらもターンして思い切りよく左足シュート。5点目が決まりました。

一人一人のエネルギッシュなプレーが、そのまま結果に直結した今日の練習試合。ディフェンス面でも、DF広瀬健太選手が約70分プレー。前回のJAPANサッカーカレッジとの練習試合では約30分のプレーだったことを考えれば、大きな前進といえるでしょう。

チームが置かれた状況は、依然として厳しいものがあります。しかし、ここから浮上する力が、間違いなくチームにはある。そう実感した練習試合でした。思い切ってシュートを打つことの大切さ。ポジティブな声で、仲間を鼓舞することの大切さ。チームワークの大切さ。チームは、確かな学びとともに、オフ明けのトレーニングを再開させます。

【選手コメント】~トレーニングゲーム・松本山雅戦後~

本間至恩選手コメント

「昨日の試合で思い切りが足りず、シュートを打てていなかったので、今日はどんどん狙おうと思っていました。最初のシュートの場面では、シルビかサムエルにパスしても1点入っていたところでしたが、強引に打ちました。すぐに同じような場面になって、そこでゴールが決まって、やっぱりシュートを打つことは大事だと改めて感じました。これからも、積極的に狙います。

(2点目のアシストの場面は)相手のビルドアップの準備ができていなかったので、ボールを取れると思って宗君とプレッシャーを掛けました。シルビもいい形で相手を限定しながらカットしてパスしてくれたし、あとはゴール前に走り込むマサル君にパスするだけでした。

今日は宗君と2トップのような形で、自分が落ちる役割。宗君は競り合いが強いし、相手のラインを押し下げてくれるから、自分はラインの間に入って、いろいろなところに顔を出しながらビルドアップに関われました。守備でも、うまく限定で来たと思います。今度は、公式戦でしっかり結果を出したいです」

チョ・ヨンチョル選手コメント

「今日は、みんなアップからすごく集中していたし、気持ちを感じました。ゲーム前に監督から言われたことを理解してできたし、試合の入りも良かった。みんなアピールしたい、試合に出たいというモチベーションがすごくありました。

得点場面は、宗がしっかり起点になってくれて、カウンターを仕掛けることができました。サチからダイレクトでパスをもらったとき、目の前に相手DF1人しかいなかったので、抜けたらチャンスだと思い、勝負しました。シュートを打つ前に、少しタイミングを外したのも狙い通り。理想的なゴールでした。

ベンチからだったり、スタンドからだったり、試合に出られない選手は悔しい思いをしています。なかなかチームの力になれない悔しさがある。僕は今年、久しぶりに新潟に帰ってきて、J1昇格の力になろうと思っているのに、今はそうじゃない。その悔しさを、プレーで出せたんじゃないかなと思います。

今日は前半から何度も突破できたし、最近、調子がいいし、何とかアピールしようと思っていました。ハーフタイムに、監督からも『もっと仕掛けて、ゴールを狙え』と言われていたし、良いアピールになったと思います。監督に、ヨンチョルを使いたいと思ってもらえるように、練習から頑張ります」

堀米悠斗選手コメント

「結果に関して言うことはないし、内容もとても良かったと思います。3バックの相手だと守備がなかなかはまらず、ボールを持たれる展開が多かったですが、今日はしっかりボールを持つことができました。相手ボールになっても、サイドハーフとうまく連係しながら、ボールを奪いに行く守備とゴールを守る守備を使い分けられたと思います。実際、2点目は高い位置で奪って、そのまま決めることができましたし。

相手のメンバーどうこうではなく、自分たちのクオリティーで戦意を喪失させるところまで持って行けた試合でした。決めるべきところを決めてくれたことも、大きなプラス。個人的にも、チームとして相手の5バックを横に広げつつ、その間に顔を出してビルドアップに関わりつつ、サイドハーフが1対1で仕掛ける場面を作れたと思います。相手の反応を見ながら、意図を持ったポジションを取れました。

(試合中、急ぐ必要はない、何度もやり直していいという声掛けがたびたびありましたが?)今日は暑かったし、余計にボールを持つことが重要になったので。洋さん(野澤洋輔選手)も後ろから同じことを言ってくれて、すごく説得力がありました。

4連敗して、今、自分たちはサッカーに対する向き合い方がすごく大事だと感じます。今日はポジティブな声掛けをみんな意識していました。ミスをしたらカバーすればいいし、仲間がカバーしてくれるから、一人一人がさらに積極的にプレーできる。それを、今日プレーしたメンバーは体感できたはずです。こういう気持ちでサッカーをすれば、変えられるというのを、オフ明けのトレーニングから提示していきたいです」

秋山裕紀選手コメント

「(トップ下に入ったが?)状況を見て、出るポジションを決めるよ、とあらかじめ言われていたので、ボランチでもトップ下でも、どこで出てもいいように準備をしていました。トップ下に入ったので、役割としては相手の5バックをどう動かすか、というところでした。

相手が嫌がるポジションでボールを受けて、ゲームをコントロールすることを考えながらプレーしました。強く意識したのは、ボランチのマサル君、サチ君、途中から史哉君がうまくボールを引き出していたので、前を向いたとき間、間にポジションを取ることです。

(ゴールシーンは?)その直前に似たような形になって、シュートではなく、パスを選択したら、野澤さんから『打て!』と言われて。次に同じようなシーンになったとき、思い切り打ったら、たまたま決まりました(笑)。

今日の練習試合の大切さは、みんな分かっていました。試合前にゴメス君からも、常にポジティブな声掛けをしながら、プラス、個々のアピールをしよう、まずは結果を出さないと、いくらいいプレーをしてもアピールにはならないという話があって。

今日は勝つことが大前提で、個々もしっかりプレーできたと思います。今週のトレーニングがすぐに始まりますけど、甲府戦に出た選手たちが“まずい”と脅威に感じるくらいのプレーを僕らが見せないと、チームは良くならない。僕らがプレーするチャンスも来ませんし。今日の練習試合が良かったからこそ、今週のトレーニングはいっそう大事になります」

reported by 大中祐二

ニイガタフットボールプレスとは

アルビレックス新潟を取材して18年目のライター、大中祐二による応援メディアです。アルビの練習場に日参し、週末の試合を取材する日々を過ごしたあと、2021年2月からは、愛媛の今治を新たな拠点に、リモートワークのアプローチを駆使して取材と発信を続けています。

モットーは、チームが良いときもそうでないときも、光に照らされる面、光が差してくる方を追い続けることです。

主な内容としては、

・“このゲーム”をさまざまなアングルから考察する ~プレビュー、レビュー~
・離れていてもファミリーの1人として ~選手、監督・スタッフインタビュー「Voice of the Pitch」~
・長年のアルビ取材を通して培った人脈をフル活用 ~OB、識者と語り尽くす「頼もう、感想戦!」~
・源泉掛け流しのように思いの丈を存分に書きつける ~コラム「勝手に蹴りやがれ」~

J1昇格を目指すチームとともに、シーズンを駆け抜けます!

 

大中祐二(おおなか ゆうじ)
1969年生まれ。愛媛県出身。相撲専門誌、サッカー専門誌を経て、2009年にフリーランスとなる。サッカー専門誌時代の2002年ワールドカップは、韓国ラウンドを取材。04年、アルビレックス新潟の担当となる。フリーに転身した09年からは新潟に移住し、アルビレックス新潟の練習場に足を運んで、週末の試合を取材する日々を送る。21年、故郷の愛媛に戻り、活動を続けている。

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