ニイガタフットボールプレス

【ことばでワンツー 】~早川史哉選手との対話~①

いま、早川史哉選手はどこに立ち、どう前に進もうとしているのか。28番の現在地に向き合う「ことばでワンツー」。これは、史哉選手と対話をしながら歩もうとするインタビュー企画です。

■リアルな話、いま、試合に絡めるのかどうか。

――先日、街中でたまたま会いましたよね。

「そうでしたね」

――そこに居合わせたのが、熱心なアルビのサポーターさんで。“史哉くん、この間の練習試合に90分フル出場して良かったね! 調子はどう?”という質問が出て。

「はい」

――そのとき、史哉選手に僕が逆質問されました。“大中さん、どう見てます?”と。

「はいはい」

――そこで僕、ことばに詰まっちゃった。

「そうでした(笑)」

――それが僕の中でずっと引っ掛かっていて。あのとき、あの場で、何と言えばよかったんだろう、言うべきだったんだろう、というのが。

「なるほど」

――そして気づいたことがいくつかあって。それで、この企画をやらなければならない、という考えになったんです。僕が言うべきだったこと、何より、史哉選手のいまをみなさんに知ってもらうことは、すごく大事なんじゃないかな、と。チームの勝ち負けとは、また違うテーマとして。あのとき、僕がことばに詰まって、どう感じましたか?

「チームメートやコーチングスタッフ以外では、僕がサッカーしているところを大中さんは一番、見ているわけじゃないですか。それであのときは、“どこまで言っていいのかな”という表情に見えました」

――というのは。

「リアルな話として、いま、試合に絡めるのか、絡めないのか。それを正直に話していいのか、ためらっている印象でした。その辺りを、どううまくにごせばいいのか、という(笑)」

――にごしたわけではないんですけど(笑)。僕は、“少なくとも、後退はしていない。でも、とにかく大変な取り組みの真っ最中”という言い方をするのが精いっぱいでした。Jリーグを取材して原稿を書くようになって15年になりますけど、比較対象となるケースがないですから。Jリーガーは現在も過去にもたくさんいますが、現時点で史哉選手は、史哉選手しか戦っていないところ、戦ったことがないところで戦っている。

「どこを探しても、自分のようなケースはないですからね」

――だから、ことばに詰まってしまった。それを、あそこに居合わせたみなさんも感じたと思うんです。

「何だろう、言ってみれば自分との戦いですからね。大中さんはことばを使って仕事をされているから、いい加減なことは言えないじゃないですか。その重さは感じました。仕事としているだけに、そこは慎重なんだな、と。サポーターのみなさんもそうだと思うんですけど、普通だったら“トレーニングゲームで90分出たし、だいぶ上がってきてますよ”となりそうなところを」

――でも、それも間違いではないですよね。

「もちろん。ただ、やっぱり楽じゃないですから。トレーニングゲームに90分出たからといって、また次から次へと課題が出てきますし。だから決して、単純にただ右肩上がりに上がり続けているわけではなくて、フィジカル的にもメンタル的にも、上がったり下がったりがずっとあるんです」

(つづく)

[プロフィール]はやかわ・ふみや/ DF、28番、1994年1月12日生まれ、新潟県新潟市出身。170cm、68㎏。小針レオレオサッカー少年団→新潟ジュニアユース(現U-15)→新潟ユース(現U-18)→筑波大学を経て、2016年、新潟に加入。開幕の湘南戦にCBとして先発出場、リーグ戦3試合、カップ戦2試合に出場し、4月、急性白血病と診断された。昨年11月12日、契約凍結が解除された。

text by 大中祐二

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