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ニイガタフットボールプレス

【頼もう、感想戦!feat.島田徹】~明治安田J2第15節・アビスパ福岡戦vol.3~「アルビのポテンシャル」

ピックアップしたゲームを選りすぐりの論客と語り尽くす、この企画。第四の論客として登場するのは、サッカーマガジン時代の先輩で、現在は福岡を拠点に活動するライターの島田徹さん。第15節・福岡戦の感想戦も、いよいよ大詰め。新潟と福岡の、現時点でのポテンシャルやいかに。

vol.2

■チームをいかに熟成させるか

――全然、第15節の福岡対新潟の感想戦になってないですね。

「今、アビスパの話するの、気乗りしないんだよなー」

――いやいや、そう言わずに。

「何を言っても無駄。待つしかない、という」

――芽吹くのを。

「そう。今は我慢するしかないと思うよ。長谷部さん(長谷部茂利監督)もJ1に上がりたいと言ってるけど、上がるだけじゃなくて、定着することを考えているはずだから。

だから今のサッカーをやり続けているわけで。調子が悪いから、ちょっと守備を固めて勝って勢いを付けよう、とかじゃない。今の積極的な攻守をやって、形にした上でJ1へ。そういうことを監督自身が腹をくくってやっているわけだからさ。周りの俺たちも我慢するしかないじゃん。そこを見てない人たちは、いろいろ意見もあるんだろうけど」

――結果が出るには時間とプロセスが必要ですからね。その意味では、アルベルト監督は停滞感がないんですよ。確実にチームが良くなっていくので、そこはすごいな、と。

「そのキモはどこにあるの?」

――まずキャンプで求めたのがパススピード。必然的に距離感やタッチ数の少なさといったところも徐々に熟成されていって。

ただ、後ろからビルドアップするんだけど、蹴っていいシチュエーションなら蹴ればいいじゃん、ってダブルスタンダードをいきなりキャンプで提示しちゃったから、選手たちはちょっと混乱しちゃいましたね。リーグが中断している間に、そのあたりがかなり整備されて、パスの部分はチーム全体に浸透したかな、と感じます。

それもあって、再開後から得点力は爆発したんですけど、守備は追いついていなかったんです。複数失点が続いたり、勝ち切れなかったり。今、そこから守備が少しずつ修正されて、攻守のバランスが取れつつある。それに伴って、順位もじわじわ上がってくるという、そんな流れです。

ここから夏の補強や、1カ月離脱していたファビオ選手の復帰によって、さらに上昇気流に乗ることができれば。

「チームの作り方の順番が違うのかね? 一度、村松さん(村松尚登通訳)に『サッカークリニック』の記事でインタビューしたとき、スペインの指導者は、失点が多いときは攻撃を見直す、って言ってたんだよね」

――なるほど。

「逆に点が取れていないときは、守備を見直す。それは、サッカーでは攻守が直結してるってところから来ているんだろうけど」

――アルベルト監督は、数字の中ではチャンスの数を重視してますね。実際の得点や失点より。チャンスを作れない状況を、私は一番心配する、みたいな言い方をよくします。リーグが再開してしばらく、失点が多かったり、引き分けが続いていたときも、「もしチャンスが作れていなくて、そういう状況なのであれば問題だが、実際にはチャンスは複数ある。それを決めることが大事である一方、そこまで私は心配していない」と。

「なるほどね」

――サッカーにはミスがつきものだから、チャンスがすべて得点になるわけじゃない。それに相手もミスをするし、そこから得点できることもあれば、相手のミスに救われて失点を免れることだってある。だから、アルベルト監督の「初手」はチャンスをつくることなんです。

「チャンスをつくるということは、攻撃しているわけで、すなわち守備に回る時間がそれだけ減って、ピンチの数も減る。そういう発想も成り立つよね」

■最も気になったアルビの選手は?

――だからといって、アルベルト監督は決してボールを握ることに陶酔することなく、リアリスティックな一面もあります。

「大中、プログレッションサッカーって知ってる?」

――いえ、耳慣れない言葉です。

「サッカーマガジンの記事のために長谷部さんにインタビューしたとき、その言葉が出てきたんだけどさ。『僕は選手にプログレッションという言葉で説明してますけど』みたいな感じで。で、俺が『監督の練習を見ていると、ダイレクトプレーを選手に求めてますよね?』って質問したら、『そうなんです。ゴールに直結するプレーを増やしたい。ですけど、選手たちにはプログレッションという言葉を使っているんですけど』と言われて、俺もその場は、はいはいと分かったふりをして流したんだけど(笑)。

帰って調べたら、スペインがポゼッションサッカーでワールドカップを取った2010年の後くらいに、ドイツ代表のレーヴ監督とかが、ポゼッションとカウンターの中間みたいなイメージで打ち出したらしく。優先されるのはダイレクトプレーなんだけど、それだけだと相手も中を締めてくるから、そのときはポゼッションするよ、という。長谷部さんもそのことを言ってたんだと、後から理解した」

――勉強になります。

「まあ、単なる言葉なんだけどさ。だけどやっぱり、言葉って大事だから。俺もいい勉強になったよ」

――今回、新潟の試合を見た感想を聞かせていただけますか?

「まずは、将来性を感じる。おそらく細かいところはまだで、粗削りなんだろうけど。そのあたりは、夏の移籍で有力選手が複数、加入したってことも関係してると思う」

――「粗削りな」とは、たとえばどういうところに感じますか?

「特に守備だね。ボールを奪いに行くとき、勢い任せにひとりで行っちゃうところが目についた。若いから動けるんだろうけど。あのあたり、もう少しうまく整理されると、新潟はすごく怖いチームになるよ。あとは渡邉新太選手の目つきね」

――なかなか雰囲気があるでしょ。

「日本人ストライカーで、ああいう雰囲気を出せるFWは少ないと思う。日本人っぽいFWっていうと、鹿島の上田綺世選手とか、“周りをうまく使うことも自分の仕事のひとつです”みたいなストライカーのことね」

――点を取ることだけがFWの仕事じゃない、的な? 鹿島の大先輩、柳沢敦さんのように……。

「そうそう。だけど、ちょっとそういう和風ストライカーとは異質なものが感じられて、渡邉新太選手はいいなあ、と」

――本間至恩選手は?

「至恩選手は、最近の日本サッカーに生まれてきたスタイルのプレーヤーかな。だけど渡邉新太選手の場合は、ああいう選手を作ろうと思っても、なかなか作れないからね。そこはスペイン人監督のもとでどう変化していくか楽しみ。あと2年くらいはプレーしてほしいね」

――最初は、かなり混乱していたんですよ。ポジションの取り方もいろいろあり過ぎて。そこが今、かなりしっくりき始めている。「たとえば、どういうところ?」と聞くと、「たくさんあり過ぎるから、説明できない」という答えが返ってくるんですけど。

「特に若い選手はさ、監督にこうしろってはっきり言葉にしてもらいたがる傾向があるじゃん。だけど大人なサッカー選手はさ、あれもこれも全部ひっくるめた上で、『で、方向としてはこっちだね?』と選択、判断してプレーできる。

サッカーで、ひとつひとつ全部を理解していくとか不可能だからさ。全体をざっくり理解した上で、妥協するわけじゃないんだけど、細部は受け流すというか。そういう部分は日本人選手に足りないところだと思うから、渡邉選手がスペイン人監督のもとでそのあたりを吸収して、プレーで表現できるようになったら、化ける可能性はあるんじゃない?」

■舞行龍のパスに驚嘆

――そのポテンシャルは十分にありますね。基準がたくさんあって、選手が混乱するということでいうと、今シーズンの開幕戦(〇3-0群馬)でクリアボールからファビオ選手が裏に抜け出して、そのままゴールを決めたんですよ。だけど、チームはボールをつなぐことをやってるじゃないですか。それでリーグ再開の甲府戦(第2節△3-3)で、ものすごく細かい崩しから新太選手が点を取って。

イメージからすると、断然、甲府戦のゴールなんですけど、アルベルト監督は、どちらでもいいよ、と。ファビオが決めたようなゴールで点を取れるんだったら、それでいいんだよ、というんですね。

そういうダブルスタンダード的なところに戸惑っていたチームの方向性が、だいぶ定まってきた感はあります。そこで効いているのが島田譲選手とか、福田晃斗選手とか、舞行龍選手とか、大人の選手たち。うまく若手を導いてる感があります。

「若手の純粋に突っ走るところは、それはそれで魅力なんだけどね。若いのに、変に大人びたプレーをされても、というのはある。難しいところではあるけど、サッカーは、そういう大人な部分が必要かな、と。今の新潟は、いいバランスなの? 大人とやんちゃな子どもたちと」

――いいバランスだと思います。

「舞行龍ジェームズ選手」

――どうしたんですか、突然。声に出して読みたいJリーガーの名前ですか。

「いや、福岡との試合でも、すげえパスをいっぱい出してたな、と思って。舞行龍選手って長崎にいたことがあるじゃん」

――はいはい。新潟からの期限付き移籍で(2012年~2013年8月)。

「当時、長崎に取材に行ったとき、舞行龍はけがしてたのか、ほとんど試合に使ってもらってなくて。すっげえつまらなさそうに練習してたんよ」

――ああ、確かけがをしていたはずです。

「舞行龍選手が新潟に戻って試合に出るようになったころ、当時、長崎の監督だった高木(琢也)さん(現大宮監督)に聞いたんだよ。舞行龍選手、試合出てますね、って。そうしたら、急に機嫌が悪くなってさ。それは俺の見る目がなかったということか? みたいに(笑)。目指すサッカーのスタイルによって、起用する選手は変わってくるから、別にいいんだけどさ。

だけどすげえパス、いっぱい出してるな、とあらためて思ったよ。普通、CBがさ、右を向いてて、『右にパスすよ』って感じなのに、急に足の角度を変えて左にパスしたりしないじゃん。恐ろしいパスの出し方するな、と」

――福岡戦の舞行龍選手は、ちょっとこれまでにないポジショニングでしたね。左タッチ際に思い切り開いてボールを受けて、パスを出して。それが福岡対策なのか、新たなチームのやり方なのかは、まだ分かりませんが。

「プレスを回避するためかな」

――そこまで福岡に前から来られた印象はないですけど……。

「いや、最近の試合では行ってた方だよ」

――プレスのスイッチを入れるのがフアンマ選手で?

「もうさ、アビスパの試合を見てて何がストレスかって、フアンマ選手がいちいちレフェリーに文句を付けるんだよ。とにかくそれが目について。そうやってプレーのリズムを作ってるのかもしれないけどさ」

――なかなかなリズムの作り方ですね。

「新潟戦はましだったけど。言われたのかもね。長谷部さんはそういうのを嫌ってるから。練習中にうまくいかなくて、フアンマ選手がペットボトルをバーンって蹴り上げたことがあったんだよ。その瞬間、長谷部さんがバーッと走っていって、通訳に『何で今蹴ったのか、理由を聞け! どういう感情で蹴ったんだ⁉』って(笑)」

――どういう感情……、むしゃくしゃしたからじゃないですか?

「細かいやり取りは分からなかったけど、そのあと周りの選手に向かって、『選手だから不満はいろいろあると思う。その不満をみんなで共有しよう』『ボトルを蹴るとかじゃなく、直に聞かせてくれ』って。なるほどね、長谷部さんはこうやってチームをまとめていくんだ、というのが見えたね」

――それでフアンマ選手はおとなしくなったんですか?

「しばらくおとなしかったんだけど、自分がなかなか点を取れてないから、フラストレーションをまたためてるっぽい。福岡に来たころ、『大宮で高木さんは守備をしろとしか言わなかった』って愚痴をこぼしてたらしいんだけど、今、長谷部さんにも守備をしろって言われてる(笑)」

――宇宙の真理ですね、きっと。

「どう、役に立った? この感想戦」

――この5連戦の締めくくり、北九州戦の予習になりました。

「19節ね。楽しみにしてていいと思うよ、その一戦」

――北九州戦の感想戦も、ぜひよろしくお願いいたします!

「了解~~~」

(了)

【プロフィール】島田徹(しまだ・とおる)/広告代理店勤務の後、1997年にベースボール・マガジン社に転職。サッカーマガジン編集部、ワールドサッカーマガジン編集部で2006年まで勤務した後、07年より福岡にてフリー活動を開始。サッカーマガジン時代に担当を務めたアビスパ福岡とギラヴァンツ北九州をメインに、ほぼサッカーの仕事だけで生きつなぐ。現在はエルゴラッソの福岡&北九州の担当に。現在、選手と同様に過密日程でヘロヘロ状態にある。北九州の公式HPで、インタビューシリーズ「シマダノメ」を連載中。

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