【頼もう、感想戦!feat.島田徹】~明治安田J2第19節・ギラヴァンツ北九州戦vol.3~「これぞ、フットボール的な魅力がたっぷり」
ピックアップしたゲームを選りすぐりの論客と語り尽くす、この企画。サッカーマガジン時代の先輩で、現在は福岡を拠点に活動するライターの島田徹さんとのサッカー漫談……ではなくて感想戦も、いよいよクライマックスです!
■王国出身ストライカーはカナリアの鳴き声を発す!?
――北九州戦の感想戦も、いよいよ大詰めです。島田さん的に言い残したことはありませんか?
「村松さん(※)。の動きに注目していたんだけどね」
(※村松尚登通訳がF.C.バルセロナ・オフィシャルスクール福岡校のスタッフだったとき、島田さんはしばしば取材をされたそう)
――記者席からベンチ内の動きは、それほど分からないでしょ?
「分かんなかった。ほとんど何も分からんかったわ。イヤフォンをして、けっこう忙しそうだなあ、っていうのは伝わってきたけど。だけど、あまり監督の近くにいなかったな、試合中」
――それはアルベルト監督がテクニカルエリアに出ずっぱりだからじゃないですか?
「あ、そういうことか。そこに付いて行っちゃいけないもんね。あとはさ、ファビオ選手の試合中の(裏声で)ハイ、ハーイ! ってボールを呼び込む声がやけに気になったな」
――そこっすか?
「だってさ、大きな声を出したらCBに動きがバレちゃうじゃん」
――それでも自分のところにボールが来たらキープしたりコントロールする自信があるんでしょう。今度ファビオ選手にも、どういうつもりなのか聞いておきますよ、機会があったら。
「なんだろうね、あのブラジル人選手特有の黄色い声ってさ」
――民謡のお囃子(はやし)とか合の手みたいなものなんじゃないですか? それでリズムを作っていく、みたいな。
「なんかさ、けっこうみんな同じ周波数を出してるよね」
――確かに、裏声で仲間を呼ぶブラジル人選手は、ままいますわな。
「よく通るんだろうけど。俺なら声を出さずに忍ぶけどね」
――黙ってプレーしていたら、味方も気づかないじゃないですか。
「いや、そこはプロなんだから、みんな顔を上げてプレーしてるだろう」
――そんなピッチ上では寡黙な島田さんが、記者席から北九州戦を見て最もボルテージが上がった新潟の選手は?
「ボランチの福田晃斗選手やな。渡邉新太選手の切れ味とか、本間至恩選手のドリブルとかはさ、前回の福岡戦(第15節〇1-0)で話しちゃったというのはある。だけど福田選手の、『ばんばん前に出て行ってボールを取ります!』っていう感じは、相手からするとかなりの恐怖だと思うよ」
――1人で横幅68メートルを破らせない雰囲気を醸し出しつつ、ものすごいスプリントで前に出て行くプレーぶりは、確かに強烈です。
「福田選手ってさ、鳥栖時代にユンさん(尹晶煥監督、現千葉)のもとでやってる?」
――2013年、14年と、鹿屋体育大学に在学中、特別指定選手として一緒にやっていますね。2シーズンでリーグ戦4試合、リーグカップ戦2試合に出場しています。
「やっぱりね。ユンさんのときの鳥栖は、守りに対する意欲がすごかったんだよ。トップの豊田陽平選手からして、身構えて相手ボールをカットしてやる感満載で守備をする。そういう守備を全員がやっていたんだけど、北九州戦で生で見た福田選手のプレーは、あの頃の鳥栖っぽさをひしひしと感じさせた。あれは相手は怖いで」
――チームにとって、非常に大きな夏の補強になりました。
「僕と同じ苗字である島田譲選手のパフォーマンスは、普段から比べてどうだったの?」
――いつものように、しっかりとバランスを取りつつ、ボールを散らしていました。決して悪くはなかったと思います。2失点ともに絡んではいますが、いずれもチームとして改善すべき失点ですし。
「新潟と試合をやる前に、伸二さん(小林伸二監督)と話しをしたとき、島田選手のことをビルドアップの能力が高いって評価していたんだよ。だから対戦するにあたって、相当、警戒していたはずで。伸二さんは『島田選手にボールが入ると、新潟の攻撃のスイッチが入る』って言ってたから、もしかすると攻撃面では福田選手より警戒していたかも」
――ボールを散らすだけではなく、怖がらずにどんどん縦パスを入れて攻撃のギアを上げていきますからね。
「試合を見て思ったのは、レフェリングに対して繊細だった、ってこと。長崎のときは、そんなにイラつくような選手じゃなかったからさ。確かに判定は、ちょっと中途半端なところがあったけど」
――とはいえ、それでプレーのリズムを崩していたようには見えませんでしたが。
「総合すると、俺にとって今回、驚きだった選手は、島田選手とボランチコンビを組んでいた福田選手だな」
――2人とも履いてるスパイクがアンブロっていう、渋すぎるドイスボランチ。
「ほうなん? アンブロのスパイクは、俺もまだ一足、持ってますよ!」
――それ、履いてるんですか?
「履いてる、履いてる。草サッカーをやってる」
――元気っすね。
「まあね~。北九州のサポーターもさ、今回の試合をきっかけに新潟に注目するようになると思うんだよ。勝ったのはもちろんあるけど、フットボール的にすごく面白い試合だったから。
この試合から、ミクスタでは手拍子が解禁になったんだけどさ。拍手だけだったけど、相当、盛り上がったのが分かったね。
拍手でサポーターの感情が分かるし、伝わってくる。これが良かった。俺はさ、アスレティック・ビルバオのように、チャントとかじゃなくて、すべての感情を拍手で表現する応援スタイルが好きなんよ」
――うんうん。
「今のリーグによる応援の規制は、サポーターからすると窮屈に感じるものなんだろうけど、拍手だけでの応援もいいものだな、と」
――それ、すごく分かります。拍手で喜怒哀楽を表現するすばらしさ。
「この時期だからこその、特別な状況なんだろうけど。拍手だけで応援しようとすると、よりしっかりと試合を見ようとするじゃん。選手のいいプレーや頑張りが見えたとき、それを称える拍手だったり、発奮させるための拍手だったり。ミクスタでも、いろいろ拍手を使い分けられていたんだよね」
――試合の最後、新井直人選手のロングスローが連続すると、思わずスタンドから悲鳴が上がってましたね。
「それだけ試合の最初からひやひやさせられてたからさ。北九州のサポーターは怖かったと思うよ、試合終了のホイッスルが吹かれるまで。そのスリルがまた面白いじゃん、フットボール的で。そういういろいろなものを含めて、エキサイティングなゲームだったね」
――今回もありがとうございます。シーズン後半、ビッグスワンでの福岡戦(第26節)、北九州戦(第32節)も、ぜひ感想戦をお願いいたします。
「了解~~~」
(了)
【プロフィール】島田徹(しまだ・とおる)/広告代理店勤務の後、1997年にベースボール・マガジン社に転職。サッカーマガジン編集部、ワールドサッカーマガジン編集部で2006年まで勤務した後、07年より福岡にてフリー活動を開始。サッカーマガジン時代に担当を務めたアビスパ福岡とギラヴァンツ北九州をメインに、ほぼサッカーの仕事だけで生きつなぐ。現在はエルゴラッソの福岡&北九州の担当に。現在、選手と同様に過密日程でヘロヘロ状態にある。北九州の公式HPで、インタビューシリーズ「シマダノメ」を連載中。