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ニイガタフットボールプレス

【頼もう、感想戦!feat.北條聡】~明治安田生命J2リーグ第5節vs東京ヴェルディvol.4~「アルベルトのパッケージ」

13度目の対戦で初めての勝利。それも7-0の圧倒的な大差で、開幕からの連勝を5に伸ばした第5節・東京ヴェルディ戦。あまりに強烈なインパクトの試合を語り尽くすのは、感想戦に初登場となる元サッカーマガジン編集長の北條聡さんです。相変わらず抜群に話がおもしろく、そして長い(笑)。今回は、合の手を入れることすらままならず、全5回の長期連載になります。

Vo.3はこちら

■それがうまくいかないとき、どうしますか?

――あのう、大風呂敷を広げることだと分かっているんですけど。

「うん」

――たとえばペップ(グアルディオラ)のチームだったり、今のフロンターレだったり、リーグそのもののサッカーを変えるようなインパクトがあるじゃないですか。

「ああ、インフルエンサーとしてのね」

――今年の新潟は、J2でそんな存在になるポテンシャルがあるんじゃないのかな、と思っていて。それで今回、北條さんの話をうかがって、曺貴裁監督の京都もかなりのインパクトを与えるのだろう、と思うようになりました。

「今年の新潟にしてもそうだし、去年でいうと徳島ね。スペイン閥の監督のチームは、ポジショナルプレーをやってるよね。永井秀樹監督のヴェルディもそうだし、金明輝監督の鳥栖もそうなんだけど。監督によってポジショナルプレーを落とし込むチームは、J1でも増えてきてる。だからそれ自体、スタンダードになっていくと思う。で、それとセットになるのが、相手が前から追いかけて来たときにどうするか、っていう話でさ。

あと、それこそ鳥栖は、フロンターレやマリノスのようにタレントでも勝負するというより、ポジショナルプレーに工夫を加えることをやってる。言い方を変えると、フロンターレやマリノスと同じことをやっても、なかなか勝つ確率は高まらないだろうという発想から、新しさや違いをスパイスとしてポジショナルプレーに加えることができている。だから今、いい戦いができているんだよね。

そこにいくと新潟は、監督がバルサと関わりのあるアルベルトさんということもあって、ある意味、ペップとかがやってきた王道路線の印象なんだよね。その完成度が上がってきているのが現在で。同じようなことをやろうとしているチームは他にもあるけど、完成度の高さという点において、今の新潟はJ2で優位に立てているんだと思う。

曺貴裁監督が京都でやろうとしているサッカーは、ペップのマンCというより、どっちかっていうとクロップのリバプールとか、ビエルサのリーズに近い。とにかくインテンシティが高いフットボールで、ビエルサ的かな。ただ守備のやり方はドイツ式だから、そういう意味ではクロップのリバプールに近いんだけどね。

京都のインテンシティは、すでにJ1レベルなんだよ。特に相手ボールになったとき。それが今、J2の中でメリットとして働くことが多い。とはいえ、現段階ではJ1のチームと対戦しても、プレスを外されて、裏返されてしまうと思う。だから、『そうなったとき、どうしますか?』という手立てを、チョウさんも今、準備している最中なんだと思うよ。

で、そこもひっくるめて最初からゲームモデルに組み込んでいるのが、アルベルト監督なんだよ。ローブロックでも守る、っていうことを、ちゃんと落とし込めている。

ただ、ローブロックを組んで失点を防ぐというやり方は、あくまでも最終手段だから。その認識を全体で共有しないまま、いきなりその最終手段を取っちゃうチームがけっこうあるんだよ。だけど、そこは最後に取っておこうよ、と俺は思うのね。その前に攻撃するための守備をしましょうよ、というプライオリティであって。新潟は前からの守備がうまくいかないとき、ローブロックで守りましょうよという段取り、手順が整理されて、チームとして共有されているところがいい。

普通、攻撃型のチームって、どうしても攻撃に比重を置きがちなんだよ。もちろん、それはすごく大事なんだけど、当然、裏返しとして『相手ボールのときにどうしますか?』という問題は常に突き付けられているわけで。新潟は、そこのオーガナイズが行き渡っているんだよね。

それこそ去年の徳島でも、そこまで相手ボールを奪いにいく感じじゃなかった。どちらかといえば手堅い守備で。

今、浦和でリカルド・ロドリゲス監督が苦しんでいるのも、なかなかアグレッシブに守備に行けないところなんだよ。去年の徳島も、相手ボールになったらハイプレスに行って、それが外されたら一度、整えて、またアグレッシブにミドルプレスに行って、というやり方が機能するようになったのは、本当にシーズン終盤あたりだった。だからボールを持つ力のあるチームに対しては、ポゼッションで負けちゃう試合もけっこうあったんだよ。北九州とやったときとか、ほとんどボールを持たれたからね。

結局、相手ボールを奪う力がないと、ポゼッションも上がっていかない。ということは、自分たちがやりたいことをできない。そこも全部織り込んで、ちゃんとやりましょうと、新潟はひと通りパッケージとしてチームづくりをしていて、その質が全体的にじわじわ上がってきた。チームづくりとして、うまいと思うよ。優先順位を付けてるわけじゃないから。『うまくいかないときもあるよね、じゃあこうしましょう』というのをひっくるめて、総合的にチームで共有されているところがいい。

そういう意味で、新潟は穴が少ない。ツボにはまったときはいいんだけど、はまらなかったときには勝ち点を落とすっていうチームもあるからさ。たとえば現時点でのチョウさんの京都もそうだと思う。前から行って、磐田に裏返しにされてカウンターで失点を重ねた試合は、まさにそうで(第4節●3-4)。だけど実際にあの勢いで来られると、たいがいは押しつぶされちゃう。そういう勢いが京都にはある」

■足で稼ぐサッカー経済学

――新潟は5月にビッグスワンで京都と対戦します(5月23日、第15節)。

「楽しみだね。もちろんこれはどちらにも言えることだけど、けが人が出たりするとまたチーム状況は変わってくるけど。ただ、今のところ京都はヨルディ・バイス選手と本多勇喜選手のセンターバック2人がすごい。すごすぎる。そこが変わったらどうなる? というのはあるけれど、今のメンバーのままチームが成熟していったら、相当なインパクトがあるんじゃないかな。

それから別の意味でのインパクトは秋田だね。鹿島はザーゴ監督が来て、おそらく秋田がやっているようなフットボールがたたき台としてあると思う。ラングニックがライプツィヒでやっていたようなクロージングフットボールが。ボールサイドに極端に人を寄せて、狭い局面で同サイドを破っていくっていうやり方ね。昔、相馬直樹さん(現鹿島コーチ)が町田でやっていた『スモールフィールド、ワンサイドアタック』も、まさにレッドブルグループの虎の巻でさ。

で、今、秋田がそれをやってるんだけど、徹底ぶりがすごいんだわ。とにかくロングボール。だってさ、それでプレスも回避できちゃうわけだから。放り込んでセカンドボールを拾えれば、攻撃は敵陣でスタートするし、パスでプレスをはがさなくても話は一緒だろ? っていう割り切り方。どちらかのサイドに大きくボールを振って、相手がタッチラインに逃れたら、そこからロングスローを入れて点を取る、っていうね。もう、『どんなサッカーですか?』っていうくらいに徹底されてる。

あれはね、はまっちゃうとなかなか怖いよね。ツボを突くサッカー。逆にはまらないと、途端にやろうとしている方が難しくなっちゃうんだけど。

ただ秋田は、押し込まれてもギューッと中締めして、そう簡単にはシュートを枠内に飛ばさせない。新潟が対戦するときも間違いなくそういう展開になるはずで、簡単には崩せないかも……というのはあるね。

徹底されているという意味では秋田も面白い存在だし、京都もそう。去年のJ2で今季の京都に近いチームを考えると、水戸がそうかな。ツボにはまったときの水戸を、どんどんグレードアップしていこうというのが今の京都だと俺は見てる。これはちょっと、対戦相手としては厄介ですよ。水戸はさ、毎試合できないんだよ。波がある。野球でいえば、一発持ってるブライアントみたいなチームだから(笑)」

――ブライアント、近鉄バファローズの(笑)。

「そう(笑)。ホームランか三振か、みたいな。すごくいいサッカーで勝ったから、『これ、次の試合も絶対に面白くなるぞ!』と期待して注目していたらコロッと負けて、秋葉忠宏監督が怒ってる、みたいなことが去年はよくあった(笑)。

その打率を上げていこう、っていうのが今季の京都。これはちょっと怖い存在だよね。だから新潟と京都の試合は、マンC対リバプールになぞらえることができるんじゃない?」

――いやあ、そこまで風呂敷広げちゃって大丈夫ですかね……?

「いやいや、あくまで『J2の』だよ。イメージとしてだから。『そんなノリです』っていう(笑)。

でも真面目な話、Jリーグもレベルが上がったよね。俺、8年くらい前は、Jリーグの試合を見るのが本当に苦痛だったからね。ポイチさん(森保一、現日本代表監督)の広島が強かったころ。だってさ、ドルトムントとバイエルンがあのサッカーでチャンピオンズリーグ決勝を戦っているような時代に、いきなり前半開始からドン引きされてもね。『はあ?』ってなっちゃうじゃん。『これを1年間、見続けなくちゃいけないとか、たまったもんじゃない』と思っていた時代から、ようやく今、前からボールを取りに行くチームが増えてきた。

今年でいえば、ダミアン選手(川崎F)、前田大然選手(横浜FM)、古橋亨梧選手(神戸)、永井謙佑(FC東京)だよね。彼らを中心に前からプレッシャーが掛かったら、相当ハイレベルで強烈。そりゃあ、相手もビビるよ。そういうチームがJ1の上にはいる。新潟も今から、『それが当たり前』くらいに思ってやっていかないと。新潟はそんなことはないんだけど、いくら『俺たちはボールを持つサッカーですから。ポゼッション80%でゲームを支配します』とぶち上げたとしても机上の空論で、『いやいやあなた、そもそもボールを持ってないですよね?』ってことになりかねない」

――相手にボールを奪われ、相手のボールを奪えなければ。

「そういうこと。俺はさ、よくサッカーを経済にたとえるんだけど。ボールはお金なんだよね。で、ゴールが商品で。商品を買おうと思ったら、まずはお金が必要でしょ? お金がないのに、買うことばかり言っても仕方ないじゃん」

――いくら欲しがっても。

「そうなんだよ。まずは金を稼ぐところから始めろよ、って話でさ。で、新潟戦のヴェルディは、全然、稼げなかった。ポゼッションでいえば五分五分だったけど、貨幣価値が新潟とヴェルディじゃ全然、違った。敵ゴールに近づいてボールを奪うほど、そのお金の価値は上がっていくからさ」

――なるほど。

「自陣でボールを奪っても、せいぜい数百円の価値だよ。それが敵陣深いところで奪えたら、数万円くらいに跳ね上がる。それくらいの意気込みで守備をしないと、なかなかゴールという商品を買うことは難しいんだよ」

――鼻息も荒く稼ぎにいかないと。

「そこが他のポゼッション型のチームに比べて、ヴェルディは違うなあ、と感じるところで。で、間違ったメッセージが世に送られるのもよくないと思うし」

――間違ったメッセージ?

「解説者にはヴェルディ好きが多いから。それは別にいいんだけど、自分たちのボールのときじゃなく、相手ボールになったときのヴェルディをよく見てよ、って話でさ。そこを見ずして、『いやあ、ヴェルディはパス回しがうまいですからね』とかべた褒めしちゃうのもどうかと思うよ。そのあたり、新潟戦のDAZN中継では、解説の梅山修さんがヴェルディの守備のところをチクチク言ってて、『そうですよね~』と共感したんだけれども。

パス回しだけじゃ生き残っていけない時代だから。そこにボールを奪う力とインテンシティを合体させないと。そうじゃないとボコボコにされるよっていう、いい例がこの試合だったよね」

(つづく)

【プロフィール】北條聡(ほうじょう・さとし)/フリーランスのサッカーライター。Jリーグ元年の1993年にベースボール・マガジン社入り。ワールドサッカー・マガジン編集長、週刊サッカーマガジン編集長を歴任し、2013年に独立。古巣のサッカーマガジンやNumberなどに連載コラムを寄稿。2020年3月からYouTubeでも活動。元日本代表の水沼貴史氏、元エルゴラッソ編集長の川端暁彦氏と『蹴球メガネーズ』を結成し、ゆる~い動画を配信中。同チャンネル内で『蹴球予備校』の講師担当。2021年3月から”部室”と称したオンラインサロンも開始。もう何が何だか……。

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