ニイガタフットボールプレス

【頼もう、感想戦!feat.北條聡】~明治安田生命J2リーグ第16節vsFC琉球vol.5~「ここからも新潟は、とても楽しみだし注目していくよ」

陥落から1週間で首位の座を奪還した第16節・京都戦。逆転で4試合ぶりの勝利を収めた90分を、元サッカーマガジン編集長の北條聡さんと語り尽くします。やはり抜群に面白く、そして長くなった話を、全5回でお送りしてきた今回のラストは、次節・甲府戦の展望編です!

 

 

■危険! この先、深い森!!

――夏の新潟に、補強はあるのかどうか。大いに注目しています。今シーズンの昇格のチャンスを逃したくないですから。

「本当に大チャンスでさ。来年は2チーム多く降格してくるわけだし。夏の補強で手を抜くわけにはいかない。ただ、本間至恩選手が抜けちゃったら、新潟は一大事だね。なかなか穴は埋め切れないよ」

――だから、その話題はやめましょうよ~。

「なんで(笑)? 新潟の関係者は避けてるの?」

――そういうわけじゃないですけど、考えるだけで不安になってくるじゃないですか。

「まあ、あれだけの選手はそうそういないからね。そういう意味で、京都は選手層が厚い。アタッカー陣に至っては、全員入れ替えても成立するくらいの質の高さ。現時点での選手層からいうと、京都がリーグで一番だと思う。

選手層で今のJ2をランク付けするなら、京都が1位。仮に選手層の厚さランキングを昇格展望の材料とすると、新潟が昇格2枠のもうひとつの枠を争うのは、磐田、琉球、甲府、それから長崎あたりになってくる。実際、昇格争いに絡んできそうな地力のあるチームだよね。

だからさ、次の川中島ダービーは本当に大事な試合なんだよ。甲府は、なかなか面倒なチームだよ。勝つのが難しい。俺の中での甲府は、ニック・ボックウインクルだから。AWA世界チャンピオンの。あるいはリック・フレアー」

――すみません、そこまでプロレス事情に詳しくないんです……。

「もうね、懐は深いし、相手を引き込むのは上手だし、突然、スタイルを変えて打ち合うこともできる。厄介なチームだよ。もしかすると、今年のJ2で一番、勝ち切るのが難しい相手なんじゃないかな。

甲府と試合をするとさ、何だか深い森に迷い込む、みたいなところがあるから。いいところまで攻め込んでいたはずなのに、『あれ? 道に迷った?』みたいな感じで、いつの間にか泉澤仁選手あたりにやられちゃう、っていうね。意外にボールもつなげるし。京都も甲府の手練手管にしてやられて、勝ち切れなかった(第15節・京都0-0甲府)。京都としては珍しい試合だったよ。自分たちの試合に持ち込みながら、押し切ることができず、勝てなかったんだから。

泉澤選手がすばらしいんだよね。泉澤選手と至恩選手の『左のアタッカー対決』だね」

――新潟ユース出身ドリブラー対決でもありますし。

「おお、それは熱いね! まあ、甲府は一筋縄では行かないと思う。なかなか崩し切れないんじゃないかな。守るときは3421から523に変形して、後ろが5枚になる。

守りの堅さだけじゃなく、攻めに関してはつなぐこともカウンターもできるし。しかも前からプレッシャーに行くときと行かないときがあって、それは対戦相手には分からないからね。相手の特徴や、試合展開によって変えてくる」

――前からプレッシャーに行くかどうかで、試合をコントロールされかねない。

「それができるのも、球際で戦える選手が揃っているからなんだよ。しかも甲府が厄介なのは、1人でボールを運べる選手もけっこういるところでさ」

■見どころ満載、川中島ダービー

――そうなんですよね。

「泉澤選手だけじゃなく、荒木翔選手とか関口正大選手とか、グイグイっと持ち上がれる選手がいて。新潟的には、パスをつないでくる相手より、ドリブルでくる相手の方が嫌なんじゃないかな。押し込んで攻めることを目指す新潟は、ボールを奪われても素早く切り替えて奪い返しに行けるところが強みなんだけど、甲府にはそこでひょいっとかわされて、そのまま運べる選手がいる。

そのあたり、球際の攻防はポイントの一つになるだろうね。後手を踏むようだと、甲府のカウンターに苦しむことになるかもしれない。

だからこそ新潟としては、カウンターを受けないように、押し込んだときに押し切って、点を取れるかどうか。あとはセットプレーだね。

甲府の伊藤彰監督は、新潟の攻め手はすべて想定済みだろうけど。本当は伊藤監督も、今の新潟みたいなサッカーがしたいはずなんだよ。甲府といえば堅守速攻、みたいなイメージがあるかもしれないけど。ハーフスペースをきっちり抑えにくると思うよ。

あとは左のセンターバックのメンデス選手には気をつけた方がいい。めちゃめちゃヘディングが強いんだよ。セットプレーは危険だね。

なんにせよ、川中島ダービーは見どころの多い試合になると俺は思ってる。楽しみだなあ」

――オープンで派手な打ち合いになるというより、一見、地味なつばぜり合いが続いているようで、実際は濃厚な駆け引きが繰り広げられている試合になりそうですね。アルベルト監督がしばしば言うところの、ボニートなサッカーにはならないだろうなあ……。

「まあ、甲府がさせてくれないだろうね。だけど、ここで新潟が勝ち切ったり、ましてやスペクタクルな勝ち方を収められるようだと、相当な力があると証明できるわけで。しかも相手は、いま状態がいい甲府だからね。勝てれば、大きな弾みがつく」

――しかし、次から次へと難敵が登場してきますね。

「あっさり昇格してもさ、面白くないじゃん。スリルとサスペンスがあるからこそ、昇格で来たときの喜びも大きくなる。サポーターからすれば、そんな心臓に悪いことは嫌ですよ、ってことになるんだろうけど(笑)」

――そうですよ。左うちわで昇格したいです。

「いやいや、昇格する大変さをかみ締めながら、J1に上がっていこうよ(笑)。いずれにせよ、リーグ戦は長い。取りこぼしをすることなく、きっちり勝つことを続けていけば、自ずと上に行けるはずだよ」

――リーグ戦だからこそ、ですね。

「たとえば上位陣との直接対決で負けたとしても、それで何かが決まるわけじゃない。だから京都に負けたことを引きずる必要はまったくない。シーズン終盤だと話は変わってくるけど、いまの時点ではね。それに、これからけが人も戻ってくる。明るい材料で、ポジティブだと思う。あとは、この夏に移籍爆弾がさく裂するかどうか、だけだね(笑)」

――やめてくださいよ~~~。

「ははははは(笑)。何にせよ、新潟は楽しみだよ。アルベルト監督が昇格というミッションにどう取り組むのか。注目してる」

――そうですね。6月も感想戦、よろしくお願いします!

「はいはい~。おつかれでした~」

(了)

 

【プロフィール】北條聡(ほうじょう・さとし)/フリーランスのサッカーライター。Jリーグ元年の1993年にベースボール・マガジン社入り。ワールドサッカー・マガジン編集長、週刊サッカーマガジン編集長を歴任し、2013年に独立。古巣のサッカーマガジンやNumberなどに連載コラムを寄稿。20203月からYouTubeでも活動。元日本代表の水沼貴史氏、元エルゴラッソ編集長の川端暁彦氏と『蹴球メガネーズ』を結成し、ゆる~い動画を配信中。同チャンネル内で『蹴球予備校』の講師担当。20213月から部室と称したオンラインサロンも開始。もう何が何だか……

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ