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【頼もう、感想戦!feat.小川佳純】~第23節・京都サンガ~vol.2「強度vs強度、スタイルvsスタイル」

勝てば得失点差でJ1昇格圏内に再浮上する京都戦は、予想通り激戦となり、1-1で引き分けました。改善すべき部分、継続・発展させたい部分がたくさん見えた第23節を、サンガスタジアムまで足を運んで観戦した小川佳純さんと語り尽くします。本題に入る2回目です。ハイインテンシティの京都のプレスに対応し続けながらも、1点を失った前半の戦いの構図とは!?

■この守り方ではもたないと思っていたが…

――サンガスタジアムでの京都との一戦は1-1の引き分けに終わりました。ズミさんの目には、どのように映った90分でしたか?

「まずは僕自身、Jリーグの試合をスタジアムで見るのが久々で。お客さんが入っている試合で、スタジアムもすばらしく、シンプルにサッカーを楽しむことができました。試合は予想していた通りインテンシティが高く、お互いがチャンスをつくって、見ているみなさんも楽しめたのではないでしょうか」

――試合の入りから京都が非常に高い強度でハイプレスを掛けてきて、そのテンポ、ペースのまま34分に失点してしまった印象があります。もちろん新潟もしっかり応戦していたのですが。

「前半は完全に京都のゲームだったと思います。新潟のGK小島亨介選手のところまでどんどんプレッシャーに来たし、攻めるときは攻めるときでハイテンポにボールを動かして、新潟のスライドが間に合わないのも仕方がないというくらいの勢いでした。

新潟はGKも含めてボールを動かしてビルドアップしますけど、それに対して京都はGKのところまではめに来ました。そういうはめ方をすると、どこかにスペースが空いてくるものなんですよ。だけど京都は、それも織り込み済みで前から来た。それは京都のスタイルだと思うんですよ。新潟対策ではなく。

ある程度、ディフェンスラインの背後を取られるリスクがあるのは承知の上でのプレスで、洗練された守備だと感じました。それがうまくはまっていた前半でしたね。京都がホームの勢いを生かして、自分たちのスタイルを貫こうという部分が見えた45分でした」

――実際、その流れが続く中で荻原拓也選手に決められ、先制されてしまいました。そしてセンターバック(CB)のヨルディ・バイス選手が、京都のハイプレスをより効果的にしていたというのが、僕も実際にスタジアムで観戦しての実感です。サッカーのツボをよく心得た上でのディフェンスライン、引いてはゲームコントロールぶりでしたが、ズミさんはバイス選手対新潟の戦いを、どうご覧になりましたか?

「京都の守り方というのは、本当に負担が大きいんですよ。新潟のディフェンスラインとGKのところに前の3枚がプレスに行く。4-3-3の中盤もそれに連動する。新潟のサイドバックには自分たちのサイドバックが出ていく。そうなると新潟のサイドハーフに対しては、京都のCBが長い距離を走ってスライドする場面も多々出てくる。CBがケアしなきゃいけない範囲が非常に広いんですね。

だから勝手な僕のイメージで、運動量的にこの守り方はもたないと思っていたんです。ところが全然、そんなことはなくて。数的不利になってピンチになりそうな場面でも、バイス選手は新潟の選手のちょっとしたコントロールミスを逃さずスライディングしてピンチの芽を摘んだり、本当にサッカーをよく知っている。経験値から生み出されるバイス選手の守備のプレーはひと味違うな、と僕も見ていて思いました」

■新潟目線の前半は

――守備だけではなく、攻撃でもバイス選手は目立っていましたね。

「前半、セットプレーの流れからゴール前で決定的なシュートも打っていましたよね(15分)」

――あの場面、小島選手がすばらしいフットワークで止めてくれました。現在のスタジアムは観戦していて選手の声がよく聞こえる環境ですから、バイス選手のパスを出しながらの指示の声がとても印象的で。ただ名前を呼んだり、「フリー!」というだけなんですが、短く、的確な大きな声で、京都の選手たちはとてもプレーしやすくなっているんだろうな、と感じました。グランパスでズミさんも一緒にプレーした闘莉王さんをほうふつさせる、手強いCBでした。

「僕もトゥーさんに似ていると思ってバイス選手を見ていました。たたずまいとか。くさびや背後に入れるボールで攻撃の起点になることができて、常に相手が嫌がるところを狙っているボールの持ち方をしている。攻守に渡って存在感がありました」

――新潟目線での前半は、京都のスタイルに対応しなければならない時間が続きました。

「新潟も、京都があれだけインテンシティの高いプレスを仕掛けてくるのは分かっていたと思うんですよ。相手のサイドバックがそれだけ長い距離を走って前にプレッシャーに来るわけだから、後ろはCB2人だけの状態になることさえあった。だったら、一つ飛ばしたパスを出したり、サイドバックの裏をシンプルに突くことをもう少しチーム全体で共有してできていれば、前半からもっとチャンスを作れたのではないでしょうか。

自分自身、今、ティアモを指揮していて、試合が始まると相手がどういう守備をしてくるかを見るわけです。スカウティング通りなのか、違うことをしてくるのか。強度と精度は……。

京都はサイドバックがこちらのサイドバックまでプレッシャーを掛けるために出てくる。だったらワンタッチのパスをつないでそれをはがせば、背後には広大なスペースがあるはず。じゃあ、そこに誰かを張らせてけん制しようとか、そういう狙い、相手のプレスにはまっていることへの解決策が、前半は見えづらかったですね。

ボールを保持することに、ちょっと固執してしまったのかな、とも思います。京都が嫌がることを、全然できていなかった。だから相手からすれば『しめしめ』という感じだったのではないでしょうか。『新潟がつないできてくれたら、ここでボールを取れる』というところに、まんまと自分たちではまりに行ってしまったというか。京都としては新潟がプラン通りに来てくれて、『うまくいく』と思いながらプレーしていただろうし、新潟は京都にとって嫌なプレーをできていなかった。そんな前半でした」

(つづく)

【プロフィール】小川佳純(おがわ・よしずみ)/1984年8月25日生まれ、東京都出身。現役時代はサイドハーフ、セカンドトップ、トップ下といった攻撃的なポジションに加え、ボランチでも抜群のサッカーセンスを発揮するMFとして活躍した。市立船橋高3年時に選手権で優勝、決勝の国見戦で決勝点を挙げた。明治大に進学し、07年に名古屋に加入。11得点を挙げた08年、ベストイレブンとリーグ新人王をダブル受賞。10年、J1優勝。17年、鳥栖に移籍し、17年8月、新潟に期限付きで加入した(18年に完全移籍)。19年いっぱいで現役引退。20年に関西1部のFC TIAMO枚方の監督に就任し、JFL昇格に導く。今年も引き続き、FC TIAMO枚方の指揮を執る。

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