ニイガタフットボールプレス

【頼もう、感想戦!feat.成岡翔】~明治安田J2第24節・大宮戦vol.1~「改善ポイントは攻撃にあり」

後半アディショナルタイムに点を取り合って、引き分けた第24節・大宮戦。痛恨の結末でしたが、ビッグスワンで観戦した成岡翔さんは落胆することなく建設的に問題を提起し、改善策を打ち出します。

■まず、謝りたいことがあるんです

――リーグ再開の大宮戦(第24節△2-2)は、ビッグスワンで観戦されたのですね。

「そうなんです。以前から、このタイミングで新潟に家族旅行する計画を立てていて。アルビの試合を見に行こうと考えていたし、いろいろ知り合いの方に会えるのを楽しみにしていました。

ところが新型コロナウイルスの感染が、また急拡大したこともあって、いろいろ予定を変更せざるを得ませんでした。新潟に行くにあたっては家族全員、しっかりとPCR検査を済ませて、最小限の行動範囲で、最小限の人にお会いして、という状態でした」

――聖籠に練習を見に行く予定もあったそうですね。

「テラさん(寺川能人強化部長)も気にかけてくれていたんです。だけど、残念だけど今回は見送りました。

選手にも会いたくて、達さん(田中達也選手)に連絡していましたが、『こういう状況だから、やっぱりやめておこうか』と。ただ大宮戦が終わった後、スタジアムで達さんには会えたので、立ち話ではありますけどあいさつすることはできました」

――ビッグスワンは何年ぶりですか?

「(本間)勲さんの引退試合以来だから、3年ぶりですね。2018年の夏以来」

――観客としてビッグスワンで見るのは初めてだったわけですね。

「そうですね。しかも、選手時代にメンバー外になったときは2層目から見ていましたが、今回は1層目だったんですよ。そこから見える光景も新鮮で、面白かったです。完全に、1人のサポーター目線になっていました。今は大きな声を出して応援することができないですけど、点が入ったら、やっぱり『ウオーッ!』という感じになりましたね」

――それはなりますよね。ただ、何とも悔しいドローゲームとなってしまいました。

「まず、新潟のサポーターに謝りたいことがあるんです」

――謝りたい?

「後半アディショナルタイムに勝ち越したときに大喜びして、一緒にいた子どもも周りの雰囲気で『喜んでいい場面だ!』と分かったんでしょうね。みんなで盛り上がっていたんです。『よ~し、勝ったぞ!』と子どもとはしゃいでいる間に、点を決められてしまいました……」

――失点場面を見ていなかった(苦笑)。

「そうなんスよ。あれは完全に油断していたし、失態でした。元選手として、あるまじき態度。俺の油断が悪影響を及ぼしたと思います。失点の責任を感じます」

――いやいや、谷口海斗選手のあのゴールには、歓喜しますよ。直後、ロングボールからのクリアを、DFの西村慧祐選手にスーパーなボレーで決められてしまいました。

「痛かったし、悔しかったですねえ。試合を通して、大宮はやっぱり苦しんでいるな、という印象を持ちました。それだけに勝点1を積み上げたというより、勝点2を落とした試合になってしまいました」

■いでよ、ゴリゴリ系

――2失点とも、緩やかな軌道のロングボールをはじき返したところから喫しました。

「こぼれ球に対しての反応というか、ポジショニングは気になりましたね」

――どちらも、ぽっかりスペースが空いていました。

「それが気の緩みから起こったことなのか、チームとして立ち位置が整理されていなくて起こったのか。後半は、大宮にボールを持たれているとき、あまりプレッシャーに行けてなかったんですよね。そうなってしまったら、アンカーの両脇とか、空いているスペースをしっかり埋めなきゃいけない。その上で、予測や相手を見ながらポジションを取ることが大事になるんです」

――ボールではなく、人を見ながら。

「自分たちのゴール前、シュートを打たれるエリアでは。ヤンツーさん(柳下正明元監督、現金沢監督)も、『最終的にシュートを打つのは人だから』とよく言っていました。そのエリアより前であれば、スペースを埋めながら人を見るのが守備のセオリーですけど、ゴールに近づけば近づくほど、シュートを打つ人を捕まえなきゃいけない。そこで寄せられる正しい立ち位置を、大宮戦でも取りたかったですね」

――この試合で、チームの改善点として気になったポイントはありましたか?

「守備ではなく、攻撃なんですけど。新潟らしいつなぎは随所に出ていました。中盤のエリア、あるいは最終ラインで動かすときも、完全に主導権を握って組み立てることができていたと思います。だからこそ最後、アタッキングサードで、もっとダイナミックさが欲しいと感じました。

分かりやすく言えば、ゴリゴリ仕掛ける系ですね。『いつでもシュートを打つよ』というタイプが1人いれば、攻撃の迫力は相当、増すと思います。

チームでやろうとすることと関係していると思いますが、間できれいにボールを受けて崩しに入るんですけど、最後の押し切ってほしいところでも、止まってパスを選択することが、たびたびありました。『チャンスだな、行けるな』という場面で、シュートではなく、パスで崩そうとする。

無闇にシュートを打っても、引っ掛かってカウンターを受けるだけですが、やっぱりアタッキングサードでは相手が怖がるプレーをもっともっとできるチームになってほしいです。そこは後半、特に感じたところですね。

前半でいうと、ボールを握っている時間がかなり長くて、前線の3人プラス、サイドバックが高い位置を取れていたんですね。ゴメス(堀米悠斗選手)も藤原(奏哉)選手も。だから、前に4人、多いときには5人くらい入ることができていた。それに対して、大宮の今のチーム状況が反映されているのかもしれませんが、4枚、あるいは5枚がグッと下がって、その前に中盤の4枚がいて、ゴール前はスペースがない状態になっていました。

それを崩しに掛かるとき、新潟の前線の4枚が動きだすわけですが、誰かが落ちたら、そのスペースに誰かが抜けるということを、セオリー通りにしっかりできてはいたんですけど、動き方がボールに対して直線的だったんですね。まっすぐ落ちてくる、まっすぐ裏に抜ける、という感じで。そういう動き方だと、相手の視野の中で完結してしまうので、大宮からすれば、守りやすかったんじゃないかな。前半の途中までは、そういう状態でした。

それが途中から、オフサイドになったけど、ヨシ(高木善朗選手)が舞行龍からだったかな? パスを受けたシーンだったり、谷口(海斗)選手が斜めに、ダイアゴナルの動きだしをするようになって、一発で裏に抜けられてチャンスになることも増えてきた。やっぱり、そういう相手のディフェンスラインを横切るような、斜めの動きやパスは効果的だと感じましたね」

――それは前線での動き方を、ピッチの中で選手たちが修正できたとも捉えられますね。

「そうですね。前半を戦いながら、明らかに変わっていった部分でしたから。選手たちが感じ取って変えたのであれば、チームが成長している証にもなりますね」

(つづく)

【プロフィール】成岡翔(なるおか・しょう)/1984年5月31日生まれ、静岡県島田市出身。藤枝東高校から2003年、磐田に加入。11年に福岡に移籍し、13年、完全移籍で新潟に加入した。サイドハーフ、ボランチ、そしてFWでたぐいまれなサッカーセンスを発揮し、新潟で最初のシーズンは全34試合に先発出場。在籍した5シーズンでリーグ戦113試合に出場し、10得点を挙げ、17年にはJ1リーグ通算300試合出場を達成した。18年、J3のSC相模原に移籍。19年、J3の藤枝MYFCに加入し、11月5日に同年シーズンでの現役引退を発表した。今年はサッカースクールSKY(https://www.sky-soccer.net/)での指導が主になる。

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