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コラム「野球一考」WEB版 「コントローラブルなことに集中せよ!」 赤池行平

【コラム】野球一考 WEB版
東京国際大専任講師 赤池行平

「コントローラブルなことに集中せよ!」

 

新型コロナウイルスは、野球界全体にも大きな影響を及ぼしています。授業や行事なども中止に追い込まれている各学校などは、部活動に対しても制限を課すことを余儀なくされているところも多いようです。

一昔前のように「野球部だけは特別」のような考え方は通用しない時代ですから、他の学内活動と同様に、野球部の練習にも制限がかかるのは、今回のような状況では仕方ないと思います。練習をしたい選手にとってみれば、歯がゆい思いをしていることと思いますが、こればかりはいくら声をあげても変えられないことです。これこそ自分自身ではどうしようもないこと、つまりアンコントローラブル(Uncontrollable)なことです。

それよりも、現状で自分自身に何ができるか、コントローラブル(Controllable)なことは何なのかということに焦点を当てて行動した方が、今後にプラスになる経験を得られると私は思います。

学内施設での自主練習は許可されている高校であれば、通常の自主練習を行うだけですから、不便なことはあまりないと思いますが、学内施設の使用が禁止されている学校の野球部員にとっては、自分で場所を探さなくてはなりません。「なんでウチはダメなんだ…」と愚痴ってる暇があったら、どこかの空き地・公園・河川敷などを探して、何ができるかを考えるべきです。そういう場所でさえ、中南米のドミニカやキューバといった開発途上国の環境からすれば、何倍も整っている場所ですから、工夫すればいくらでも練習はできます。

私も大学1年生の7月に、野球部のグラウンドが芝の張り替え工事のため全面使用禁止になった際、近くの多摩川の河川敷に行って自主練習をした覚えがあります。その時に私がやったことは二つあります。

まず実際のバッターボックスに立って素振りをしたことです。ネクストバッターズサークルから歩いて打席に入り、状況・投手を自分で設定し、実際に投手が投げてくる球を想定して、それに対してスイングするのです。実際の試合では、通常練習のようなネットに囲まれてもいないので、自分一人だけしかいない開放感がスイングの感覚を崩します。全体練習のフリーバッティングでは打てても、何を投げてくるか分からない実際の投球に対処できない選手は多くいると思いますが、そういった通常練習との周囲の状況の違いが、練習と試合を別物に感じてしまう原因の一つだと私は感じていました。

ならば、実際の打席で素振りしちゃえ!と思い、それを実行したのです。フリーバッティングは、四方をネットに囲まれ、ピッチャーも「どうぞ打ってください」という打ちやすい球を投げてくれますから、打てて当たり前です。(フリーバッティングでファウルチップばかり打っているのならば、論外。練習量が足りないとしか言いようがないので、とにかく半分以上は確実にライナーが打てるまで練習してください。)

確かに技術を覚えるためには、そういう簡単な状況の練習で感覚をつかむことも大事ですが、何回も言いますが、「試合で打てなきゃ全く意味がない」のです。試合で結果を出したかったら、試合と同じ状況下で練習するしかありません。

そのために、誰もいない河川敷のグラウンドの実際のバッターボックスで、1スイングずつ、丁寧に素振りをする練習を勧めます。連続して何回もスイングするのではなく、一回スイングしたら、それが自分のタイミングで振れたのかどうか、自分で確認しながら行うのです。回数は多くはできませんが、試合で打てるようになるためには、いい練習だったと思っています。

もう一つは、シャドーフィールディングです。ピッチャーはボールを持たずにシャド―ピッチングを行い、バッターはシャドースイング(いわゆる素振り)をします。ならば、内野手はゴロを捕る動作だけをする「シャドーフィールディング」もありなんじゃないかと思い、それを実行しました。

このWEBサイトに、1月下旬にゴロ捕球の練習用動画を投稿しましたが、あの練習は大学の野球部に入部した直後に繰り返しやらされた練習です(多少、私自身がアレンジしてありますが)。やはり技術を覚えるには、「正しい動作」を習得することが大事です。それに尽きると言ってもいいのではないでしょうか。「気合で体で止めろ」とか、「とにかく前に出ろ」しか言わない野球は、それはリアクション芸人がやる罰ゲームとしか言えません。

木製バットはゴロの質も金属バットと違います。金属バットはどこに当たっても、一定のスピン量で飛んでくるのに対し、木製バットは回転量の違いにより、打球が変化することが多いので、全部真っすぐ飛んでくるわけではありません。

入学直後からこういった違いに戸惑っていたので、「8月の全体練習では後れをとりたくない」という思いから、少しずつ自分で考えながら、河川敷のグラウンドの自分の守備位置に立って、実際に動きました。

選手、指導者として大学野球の選手を多く見てきましたが、この長期オフに練習をしてこない選手は、高い確率でメンバーから漏れます。逆に、この期間にきちんとやってきた選手はいずれ頭角を現します。中学・高校野球では、成長が早く体力があれば、あまり練習しなくても試合に出られる選手はいます。しかし、大学はそうはいきません。

この新型コロナウイルスの蔓延は、人類が経験したことのない状況であるため、こうすれば大丈夫だという策は誰にも分かりません。だからこそ、いろんな意見はありますが全体が協力して収束に向けていくしかありません。

ただ、各地で野球部の練習が再開するときに、20球程度打っただけで息が切れてしまったり、前まで捕れていた打球に追いつけないという自分がいたときに、「練習禁止だったから仕方ない」とう言い訳をするようでは、最低だと思います。そういう人は、負けた時に「公立だから」とか「勉強があるから」とか、逃げ口実を作ります。

今強いと言われているチームは、最初から強かったのではなく、自分たちよりも格上のチームに対し、番狂わせと言われるような勝ちを積み重ねた結果、今の地位があるのです。桑田・清原両選手を擁して黄金期を作ったPL学園も、そもそもは勝てないだろうと言われた当時最強だった池田高校を下し、「大番狂わせ」を演じたことが発端です。

「なんで部活まで禁止するんだ」などと考えずに、自分自身がコントロールできること、つまりコントローラブル(Controllable)なことに焦点を当てて、それに全力で対処するしかないのではないでしょうか。アンコントローラブル(Uncontrollable)なことをコントロールしようとすると、結果は破滅的なものになると、私は経験上思います。

<あかいけ こうへい>
長野市出身。長野高―慶大卒。早大大学院修了。トレーナー資格のCSCSとNSCA-CPT取得。セガ―サミー野球部トレーニングコーチ、東京国際大野球部コーチを歴任。

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