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上田硬式野球倶楽部が創部 誰もが野球を楽しめるチームを目指して① 【社会人野球レポート】

【レポート】 ライター山﨑竣

上田硬式野球倶楽部は、県内6チーム目となる社会人硬式野球のクラブチームだ。2020年の1月末に念願だった日本野球連盟(JABA)への加入を果たし、現在は公式戦に向けて練習に励んでいる。

試合前に円陣を組む上田ナイン

 

チーム創設の中心となったのは、2017年に休部中だった長野大学の硬式野球部を復活させた当時の3年生たち。社会人になっても硬式野球への情熱を持った選手が多く、チームを立ち上げる決意をした。

在学中の18年の冬からツイッターなどのSNSを利用して、チーム創設の情報やメンバーの募集を発信したところ、予想以上に反響が大きかった。シーズン入りを控え、30人近くの選手が集まり活動している。

人数が増えてきたことで、実戦を想定した練習や紅白戦ができるようになったが、学生時代の部活とは違い、普段の生活で顔を合わせない選手たちが週末のみ練習で息を合わせるため、まとまり切らない部分も出てくる。

「最低限(の人数)はクリアした。今はチームの形を作っている真っ最中です」と選手兼任でチームの代表を務める、長野大OBの中島健選手。今後は練習や試合を重ね、チームの結束を深め、経験を積んでいくのがチームの課題となりそうだ。

 

主な活動日は、週末の金曜日から日曜日。金曜日は日置電機(上田市)の室内練習場に仕事や学校を終えた選手が集って練習する。土、日曜日は長野大学のグラウンドなどで全体練習を行ったり、遠征試合に出向いたりしている。

メンバーには高校生、大学生、大学院生もいるが多くは社会人。そのため仕事の都合などで毎週は参加ができない選手もおり、全選手が毎回そろうわけではない。

間曽唯斗選手は、高校時代に守っていた外野手の他に、中学生以来となるファーストやキャリアを通じて初めてとなるキャッチャーにも挑戦中。万が一の場合に備え、多くの選手が複数のポジションを守れるように練習をしている。

複数のポジションをこなす間曽選手

 

特定の協賛企業がついていないため、連盟への加盟費や遠征費、用具代などは選手たちから毎月部費を徴収して、それに充てている。こちらは、チームの中心となっている長野大OBたちが大学時代に野球部を立て直した際にも似たような経験をしているため、活動に支障をきたすことなく運営をしているが、今後は法人化やスポンサー企業集めにも力を注いでいく。

チーム創設時から「日本の野球の変革」をチームコンセプトに掲げ、昔ながらの野球を見直し、合理的な手段を選択できるチームを目指している。

これについては、「誰もが野球を楽しめるチーム。野球がうまくなる手段は1つではない。色んなプレースタイルもあれば、色んなアプローチもある。選手それぞれが、それをしっかり持って、追及できるチームを作りたい」と中島選手。従来のチームとは違い、チームには専任の指導者を置かず、選手同士で意見を出し合い、お互いの考えを尊重し、技術を高め合っている。

自由度が高いチームゆえに山崎惇平選手は「人間性が試されるチーム」とチームを表現する。山崎選手を含め、高校での野球未経験者や高野連に所属していない高校生の選手も多数在籍し、それぞれが自分の目指す選手像を追い求めている。

その先に目指すのが、チーム全体の底上げ。そして、公式戦での勝利、クラブ選手権・都市対抗の二大ドーム出場を見据える。上田硬式野球倶楽部の取り組みが結果を出し、新しいチームの形を提示することで、野球界に変化をもたらす存在になる―。そんな青写真も描いている。

公式戦デビューは5月に開催予定の北信越クラブカップ一次予選。新しいスタイルを追求したチームで、まずは公式戦初勝利を目指す。

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