nines WEB

【コラム】高校野球秋の県大会を終えて

秋季県大会は佐久長聖の優勝で幕を閉じた。準優勝の上田西、3位の東京都市大塩尻の3校が10月10日からの北信越大会(富山)に出場する。

長聖は左腕・出口の台頭で試合をつくれたのが大きかった。地区予選の背番号10からエースナンバーに昇格した出口のストレートは120㌔行くか行かないか。それをスライダーとチェンジアップ、時には90㌔台のカーブを交え、緩急と出し入れを駆使して遅い真っすぐを補った。先輩左腕・梅野より10㌔ほど遅いが、けん制もうまくタイプは似ている。

一方で出口に続く投手が確立できたとは言えず、このあたりも昨秋の投手事情に近い。

打線は試合を重ねるにつれ活発になり、スクイズなどの小技を含め隙なく点を取った。ただ、「こいつに回せば」という核となる打者は不在。また終盤の大量点は持ち味の半面、相手のエースクラスが状態のいいときに打ち崩すまでの打力は感じさせなかった。

北信越で、相手校の2枚目もエース同等の力がある場合、継投で逃げ切られないよう序盤に主導権を握れる打力に期待したい。

上田西は打線の破壊力はさすがだった。どんな投手にも対応できるのが強み。足とパンチ力のある笹原が出て、中軸でかえす形ができていた。一方で、安打数の割に得点につながらない、つまり残塁が多かった。チャンスでの一本、または先頭打者の出塁率を上げていきたい。

投手は実績十分の左腕エース山口は心配なさそう。ただ、上田西も2枚目に見通しがついたとは言えない状況だった。

3位には都市大塩尻が入った。予選から〝格下〟にも苦しめられる場面もあったが、1年生の左右2枚が安定し、堅実な守備、そしてしぶとい打線がかみ合ってきた。

夏季大会でも唯一2年生でベンチ入りした捕手の松田主将の存在は大きく、扇の要として、また好打者として攻守でチームをけん引している。

前評判の高かった松商は3位決定戦で敗退。中軸打線の迫力は県内屈指だが、厳しいマークを乗り越えないといけない。不安視された投手陣もだいぶ整備されたが、相手が県上位の打線になるとまだ抑えられなかった。

このほか、統合後、初出場の飯田OIDE長姫は初戦を突破し、2回戦も上田西に0-6と食い下がった。好投手松下の力投が光った。また更級農もエース宮坂の好投で長聖に1-3と競り合った。あらためて公立が私立に対抗するためには投手力の整備が不可欠と思わせた。

南信3位の伊那北も初戦を突破し、2回戦では都市大に3-7と食らいつく健闘を見せた。

それでも北信越を見据えると、県全体に投手力はいま一つ、と感じた。球速はあるにこしたことはないが、しっかりインコースを攻められたり、ウイニングショットとなる変化球の精度が高かったり、もう一つ、二つ上の投球を期待する。

また打撃もそうしたインコース攻めや落ちる変化球で勝負に来られた場合、対応できるか。好投手になるとそうは簡単に攻略できないが、失投を逃さない集中力がほしい。

今大会はこれまでにも増して、私立校で県外出身者のレギュラー率が高かった印象がした。県外出身者が、信州の高校を選んで、大いに活躍してレベルを上げてくれることは歓迎だ。

その一方で、県内出身者がチーム内競争に勝って、レギュラーを取り切れないのにはどんな要因があるのか。捕球なら一歩目のスタートなのか球際のグラブさばきか、打撃ならインパクトまでの入りや間の取り方なのか。県出身者をひとくくりにして言えるものではないが、
もし小中学校過程の指導で、ここを変えて見たら、というものが見えてくると高校でのプレーの質も変わってくるかもしれない。

「県外からうまい子が来ているから仕方ない」で片づけているうちは、いつまでたっても長野県のレベルは上がらない。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ