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【コラム】2020年を振り返る(上) 高校野球代替大会

新型コロナ終息の兆しが見えないまま、2020年が終わろうとしている。長野県の野球界も、シーズン突入の3月から新型コロナに振り回され続けた。プレーヤーは長く歯がゆい思いもしてきたが、可能な形で大会が催されていった。

異例ずくめのシーズンを3回に分けて振り返る。初回は高校野球の代替(夏季)大会をプレーバック。

この夏の主役は、前年秋の北信越で県勢最高の4強入りした佐久長聖か、県制覇の上田西か。はたまたプロ注目の常田唯斗を擁し連覇を狙う飯山か。熱いシーズンの開幕が待たれた3月、新型コロナの影響で学校は一斉休校になった。

センバツ甲子園が中止になり、一連の春季大会もなくなった。その後、夏の甲子園も中止。最後の望みが絶たれた中、県高野連は選手権大会に代わる代替(夏季)大会の開催を決めた。

分散登校を経て、ようやく全体練習が再開されたのが6月。優勝しても甲子園がない難しいモチベーションに加え、感染対策で練習内容が限られたり、時間がなかったりした中で、当初の予定より2週間遅れの7月18日に開幕を迎えた。

ただ、いつもの夏とは違った。試合は、一定数の保護者以外は無観客。静かなスタジアムで熱い戦いが繰り広げられた。トーナメント方式ではあったが、春秋のように4地区勝ち上がり方式となった。全県一区のトーナメントとは異なるドラマが生まれた。ベンチメンバー20人を試合ごとに入れ替えできるようにしたもの異例の措置。複数の私立高が3年生主体にメンバー構成し、試合ごとに入れ替えもしていた。

↑ マウンドに集まった際も距離を置き、グラウを口に当てた

↑ 決勝も無観客でスタンドはガラガラ

特別な夏を制したのは佐久長聖。3年生52人が交替でベンチ入りし、多くの選手を出場させながらも戦力を落とすことなく頂点に立った。

大会6試合を通じてわずか3失点と、投手力を中心にディフェンス力が安定していた。絶対エース梅野峻介が健在だったものの、5人の投手を積極起用。藤原弘介監督は各チームが実戦不足の状態で変化球に十分対応しきれないと読み、変化球がいい羽毛田聖也を4試合で先発され、きっちりゲームをつくった。6試合(50イニング)で5投手の与四死球は15と、極めて少ないのも失点を抑える要因になった。

打線は本塁打0と迫力を欠いたが、後半に相手投手を攻略するしぶとい攻撃が光った。特にセーフティやプッシュバントは、連係プレーの練習が不十分だった各チームに有効だった。
バント系の練習を通年行っている成果を、状況を加味して発揮させた。

唯一1年次に夏の甲子園を経験している藤原太郎主将が、献身的に大所帯のチームをまとめ上げ、2年ぶりの夏の頂点に貢献した。

【佐久長聖 優勝の瞬間】

準優勝は飯山。2連覇こそ逃したが、公立校の2年連続決勝進出は30年ぶりで、大健闘と言える。

常田が、エースにふさわしい投球をした。昨年までのひ弱さは消え、マウンド上にはたくましさがあった。全6試合に登板したが、決勝戦はあきらかに疲れが見えた。絶好調時に、長聖打線との対戦が見たかった。

常田に頼らざるをえなかったのは、期待した控え投手に実戦を積ませる機会が少なかったため。昨季の終盤は台風被害、今季はコロナと、吉池拓弥監督には誤算が続いた。

投手陣が苦しむ中、打線が援護。決勝こそ完封負けだったが、それまでの5試合で38得点。9番馬場ひろとがポイントとなり、上下位打線が効率的につながった。

↑ 準決勝を競り勝った飯山

ベスト4には都市大塩尻と上田西が入った。都市大を複数投手による継投と自慢の堅守で勝ち上がった。準決勝では、終盤に佐久長聖に突き放されて敗れたが、秋の北信越進出にもつながる新たな都市大のスタイルを見せた。

↑ 準々決勝を突破した都市大塩尻

本命の上田西は、昨秋の下級生レギュラー陣を外し、オール3年生で臨んだ。140㌔右腕の阿部巧雅、阪神指名の髙寺望夢らタレントがそろっていたが、昨夏に続き、準決勝で飯山に苦杯を喫した。

↑ 準々決勝サヨナラ勝ちの上田西

ベスト8はそのほか松商学園、岡谷南、長野日大、下伊那農が入った。松商もオール3年生で臨み、昨秋はスタメン漏れして選手が躍動。長く故障に苦しんだエース長野健大の好投が光った。

↑ 先行していた松商だったが(準々決勝)

岡谷南は3年連続で8強入りは見事。昨夏に続き、準々決勝で飯山に敗れ、雪辱はならなかった。

↑ 南信を勝ち上がった岡谷南

昨秋県3位で北信越に進んだ長野日大も3年生だけで臨んだが、準々決勝敗退となった。

↑ 昨秋県3位の長野日大は8強に終わった

下伊那農はノーシードから、東海大諏訪がシードのブロックを勝ち抜き、56年ぶりのベスト8。突出した選手が不在の中、選手それぞれが自分の仕事に徹した。

↑ サヨナラで56年ぶり8強を決めた下伊那農

一次戦(地区予選)は、勝手の知った同地区同士の対戦。全県一区の通常の夏とは違うであろうドラマを生んだ。

北信では、更級農が3回戦でシード長野商を破り16強入り(全県レベルで)。長野もシード篠ノ井を破り16強に入った。

東信は、8強常連の小諸商がブロック代表戦で佐久長聖に敗れ敗退。長聖、上田西の2強が君臨する東信予選ならではの展開となった。

南信はシード3校が、3回戦までに敗退。東海大諏訪は3回戦でノーシード松川に惜敗。その松川もブロック代表戦で、下伊那農に延長で敗れた。

中信は、シード4校が順当にブロック代表戦に進出。松商ブロックには、松本第一、松本国際の私立勢が固まり、つぶし合う形となった。

大会全般に、練習、実戦不足を感じさせるプレーが見受けられた。また、無観客で声援のない静かな球場で、円陣にもソーシャルディスタンスを取るなど、未経験の設定に戸惑いも感じられた。

気の毒とも言える条件下で、各チームの選手たちは、用意してもらった夏の大会にすべてをぶつけた。例え栄冠の先に甲子園がなくても。優勝した佐久長聖の藤原太郎主将の涙が選手たちの思いを象徴していた。

【上位進出校の好投手】

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