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【コラム】報道と野球人気

全国高校野球選手権大会は2年ぶりに阪神甲子園球場で開かれている。入場制限や長雨による度重なる順延と、これまでの「夏の甲子園」とは異なる様相だが、マスメディアを通した露出からは注目度の高さをあらためて感じさせられる。

7月に行った長野大会(地方大会)も2年ぶりであったり、有観客開催であったり、高校野球の人気ぶりを再認識させられた。

↓ 観客がよく入った、2年ぶりの長野大会決勝

注目度の高さを感じさせられるものの一つに、メディアに取り上げられる量がある。夏の大会になると、春や秋の大会と比べものにならないほどの取材陣が集まる。

全国紙(地方版)や地方紙、地域紙、そしてスポーツ紙といった紙媒体から、NHK、地方局、ラジオ、ケーブルテレビといった放送関係、そしてバーチャル高校野球のネット配信と、メディア総出の様相になっている。

決勝戦ともなればテレビ、ラジオともNHKと民放1局が中継すると言う、アマチュアの地方大会としては、考えられないような手厚い体制で報道されている。

ここに創刊10年のナインズのような新参メディアが加わるなど、高校野球に関してはほかの競技と比にならない、報道網で伝えられている。露出という面では、ダントツ恵まれているカテゴリーと言っていい。一方で、〝情報過多〟と見られてもおかしくない。

野球離れが叫ばれて久しいが、これだけ取り上げられている高校野球の人気は、まだまだ根強い証しと言える。

しかし、それは「見る側」の注目度の高さを反映しているのであって、「やる側(新たに始める)」への刺激には思うように結びついていないようだ。

今年度の長野県内の高校球児数は2625人(女子マネジャーも含む)で前年より122人減少した。ナインズが創刊した10年前の2011年(3526人)からだと約25%減ったことになる。

球児減少は全国的な傾向だが、この10年間で全国の登録部員数が約21%減少したのと比較すると、長野県の減少幅はより大きくなっている。

長野ではこれだけ多方面で報道されているのでこの減少幅で済んだ、という見方もできるかもしれない。しかし、着実に減り続けている。小中学生のカテゴリーも深刻だ。

東京五輪では、野球の侍ジャパンが金メダルを獲得した。一方で、スケートボードやスポーツクライミングなどなどほかの競技も頑張り、それぞれの魅力が伝えられた。スポーツ界全体には素晴らしいことだ。

野球の金メダルだが、WBC初代王者になったときほどの「野球やりたい熱」には達していないように思える。

まだまだ高校野球はメディアにとって、紙面や放送枠を割くだけの価値があるコンテンツということ。取り上げられているうちが花である。プロ野球は地上波からほとんど消えた。

露出が多いうちに、見る側はもとより、野球を「やりたい」気持ちをくすぐるような発信を一層心掛けないといけない。

(nines編集長 小池剛)

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