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★無料記事【レビュー】J2第10節千葉1-1福岡@フクアリ「組み立てはやれている。あとは課題の崩しのところ」(2013/4/22)

ロスタイム、“疑惑”の同点弾

 山口智の同点ゴールはロスタイムに入った93分でした。右に開いた田中佑昌からのハイクロスが福岡のゴール前に飛来します。ハーフウェーラインから少し敵陣に入ったあたり、しかもタッチライン際からの滞空時間の長いクロスでした。GK水谷雄一にとってはボールを注視する時間がそれだけ長くなります。ただ、ボールは水谷のいる場所に向かっていて、難なくキャッチするだろうと思われました。

「GKにぶつからないように、前に入れば(GKの視野を遮るので)何か起こるかもしれないと思って行った」(山口)

 滞空時間が長いぶん、山口が落下点に間に合った。山口がジャンプしたとき、水谷はボールをつかみかけていました。スローの映像を見返すと、ジャンプの際に山口が振り上げた左腕が水谷の腕に接触しているようでした。厳密に言えばファウルだったかもしれません。ただ、山口がジャンプで腕を上げるのは自然な動作であってGKとの接触もそれほど強くなかったと思われます。疑わしいところはありますが、判定ミスというほどではないでしょう。GKがつかんだボールをヘディングしたのか、こぼれて当たったのかはよくわかりませんが、ラッキーとはいえ諦めない姿勢が生んだゴールでした。

福岡の変形フォーメーション

 少し雨が降って、芝生は滑りやすい状態でのキックオフ。福岡のフォーメーションを見て「おやおや?」と、ちょっと驚きました。通常は[4-1-2-3]、サイドにFWを張らせるフォーメーションなのですが、3人のFWは中央に寄っています。[4-3-2-1]の並びでした。しかも、ボランチ3枚の間隔がやたらと広い。

 要は、千葉のフォーメーションにピッタリ合わせてきたわけです。佐藤勇人、佐藤健太郎の2ボランチのところからマークして、ビルドアップを阻止しようという狙いですね。ただ、千葉のCB山口、竹内彬を見る役は1人だけです。また、前掛かりにプレスするのではなく、ハーフウェーラインで待ち受ける形でした。しかし、ディフェンスラインは高めに置いているのでハーフウェーラインから30mぐらいの地域をコンパクトに守っています。

 というわけで、山口と竹内のところだけはやたらと余裕があるのですが、そこから前にボールを入れるのが簡単ではなかった。前半はちょっと戸惑っているというか、慎重になっている感じでしたね。ボールは支配しているけど攻めきれない千葉、しっかり守れているけどカウンターができない福岡という45分間でした。

高橋峻希の左SB

 先制点は福岡、49分でした。左SB大岩一貴の攻め上がった裏をつかれたのが発端です。ポジションが大岩と入れ替わっていた谷澤達也がカバーしますが間に合わず、中原秀人の中央へのパスを坂田大輔が決めました。坂田は走り込む途中でマークしていた佐藤勇人と接触、佐藤勇人がバランスを崩して転倒したためにフリーになっていました。

 さすがにこういう場面での坂田は強いですね。以前、「草サッカーのスーパースター的ストライカー」と書いた覚えがあります。悪い意味ではありません。草サッカーだと、縦1本で抜け出して1人でシュートを決めてくれるFWがいると絶対的に強いんですよ。坂田はそういう状況にやたらと強い。今回もそれが出ました。

 千葉はケンペスのパスから田中がフリーでGKと1対1になる決定機がありましたが、左足のシュートはバーを越えてしまいます。この57分のチャンスがここまで唯一の決定機でしょう。1点をリードされた以上、何か手を打つ必要が出てきました。

 前半、佐藤勇人がディフェンスの近くまで下りてくるビルドアップを途中から行っていました。福岡はそこまではついてこないので、後ろで数的優位を作り、その間に田中がインサイドへ移動して空いたスペースに米倉恒貴を走り込ませる狙いです。日本代表でよくやっているアレですね。効果的だったと思いますが、それだけでは足りない感じでした。

 鈴木監督は大岩に代えて高橋峻希を送りました。いつもは右SBですが、左での起用です。

「左でプレーできるかとは言われていました。左は久々なのでボールを持って考えてしまうこともあったのですが、まあヘンに考えすぎず自分らしさを出そうと」(高橋)

 高橋の登場で、それまでほとんどなかった左サイドの攻撃が活性化しましたね。右に比べると、ちょっとギクシャクした感じはありますが良かったんじゃないでしょうか。このあたりから高かった福岡のラインが後退しています。前にパスをつなげなくなり、ラインが引きっぱなしになりました。

 千葉は谷澤に代えて深井正樹を投入して、深井とケンペスの2トップに形も変えます。さらに佐藤勇人→ジャイール、残り時間約10分に賭けます。そしてロスタイムに待望の同点弾、その直後にもジャイールにチャンスがあったのですが逆転はなりませんでした。

270分間で1ゴール

 ここ3試合で勝利がありません。2分1敗、270分間で山口のロスタイムゴールだけというのは寂しいですな。とはいえ、組み立てはやれているので、あとは課題の崩しのところでしょうか。

 右の米倉は強力な武器になっています。これで高橋が左でブレイクしてくれると両翼が揃います。あとはコンディションを落としている選手や負傷者が戻ってくれば、攻撃力は上がるでしょうから、そんなに心配はしていないのですが。

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