★無料記事【レビュー】J2第11節京都3-3千葉@西京極「試合内容はドローで仕方なしも、主導権を握る戦いができなかった」(2013/4/29)
点の取り合い
2点を先行されながら3点奪ってひっくり返しました。そこまでは良かったんですが、勝ちきれませんでしたねえ。というより、最初の2点がすでに痛かったです。大まかには京都のリズムで試合は進行していたので、内容からすれば勝ち点1で仕方ないともいえるわけですが、一度は逆転したのでもったいない感じは残ります。
狭小展開に巻き込まれる
京都は独特の狭小サッカーです。大木武監督はヴァンフォーレ甲府のときからやってますし、京都でもずっとこれですから今さら驚くには当たらないのですが、それでもやっぱり珍しいスタイルには変わりありません。
ボールを持ったらピッチの半分は使いません。ほぼ全員がボールのあるほうの横半分に収まってしまいます。例えば、右にボールがあるときの左SBの位置はピッチの中央ぐらいになるわけです。
その狭い地域でショートパスをつなぎながら相手を食いつかせて、裏を狙っていくのが得意な形ですね。狭いから当然つなぐのは難しいんですが、相手もボールを奪った瞬間は狭いのですぐにいい展開はできません。狭いのに慣れているぶん、京都のほうが有利になることが多い。なので、対戦相手はなるべく普通サイズのゲームをすればいい。そうすれば京都の優位性はありません。
千葉も京都とは何度も対戦しています。相手がどういうプレーをするのかは十分わかっています。しかし、前半は風下だった影響もあったのか京都のペースで進みました。狭い地域での展開が続きます。これはもう、ある程度しょうがないのでしょう。京都のやり方を知っているといえ、年に2回程度しか対戦しないわけで。力に差があれば別ですが、そうでなければ京都のやり方に巻き込まれやすくなります。
京都が意図的だったかはどうかわかりませんが、千葉の右サイドからの攻め込みが多かったですね。[4-4-2]の左MF、駒井善成が柔らかくてキレのあるドリブルでチャンスを作ります。千葉の右SB米倉恒貴の攻撃力を牽制しながら、まだ不慣れなところがある守備をついていこうという狙いでしょうか。
左の攻め込みで得たFKから、短くつないで久保裕也がミドルを叩き込んで先制します。左から流れてきたボールをゴール右へ無回転気味のシュートを打ち込みました。野球でいえば流し打ちみたいな感じでしょうか。リラックスしてきれいにミートしたのは上手かった。方向も読みにくいシュートです。
さらに左サイドに流れた久保のクロスを横谷繁が決めて2-0。低いクロスに対して中は2対2だったのですが、ニアで工藤浩平が上手く潰れたので横谷のマークがずれてフリーに なってしまいました。
米倉の活躍で同点
完全に京都の流れになっていたゲームだったのですが、千葉は前半のうちに同点に追いつきました。
39分、左サイドのFKを大岩一貴が一気に逆サイドへ蹴り、素晴らしいスピードで走り込んだ米倉が浮き球をワンタッチでコントロール、さらに地面に落とさないままもうワンタッチしてから強烈なシュート。大岩の判断、ボールの質も素晴らしかったですが、これは米倉の個人技ですね。京都もちょっと対応が遅れていました。
さらに米倉のクロスから、2人のDFの間へ入ったケンペスがヘディングで合わせて2-2。こっちはケンペスのポジショニングと正確で強いヘディングでのゴールでした。ゴールキックを田中佑昌が落とし、米倉のクロスから ケンペスのヘッドと電光石火の1点でした。
前半の終わりごろ、千葉は谷澤達也と兵働昭弘のポジションを入れ替えました。最初は兵働がトップ下で谷澤が左サイドだったのですが、狭いスペースでのボールの奪い合いが続く展開の中で、体の強い谷澤を中央に置いたほうが生きると判断したようです。
ついに逆転も終盤に追いつかれる
後半も流れは大きく変わりません。風上に立ったので、前半よりもパスは通るようになりましたが、相変わらずピッチは“半分”のまま。
それでも53分には、米倉のクロスをケンペスがヘディングで合わせる決定機を作ります。押し込みながら谷澤がキープしてタメを作り、外側を走り抜けた米倉へ。米倉の速いクロスを2人のDFの間に入ったケンペスがシュートという流れは2点目とよく似ていました。GKオ・スンフンのファインプレーに阻まれましたが、米倉のクロスとケンペスのヘッド、このセットはかなりの武器といえるでしょう。
京都は久保を宮吉拓実に交代。中央へ直接パスを入れる攻撃が増えていきました。千葉は大岩を高橋峻希に代え、両サイドからの攻め込みを狙います。横谷のドリブルシュート、宮吉のボレーと、千葉にとってはヒヤリとする場面が続きます。
73分、千葉は谷澤に代えてナム・スンウを投入。これで流れが少し変わりました。兵働から右へ流れるナムへ2度、長いパスが通ります。京都の選手がいない逆サイドを狙ったカウンターは、得点にはなりませんでしたが良い形でした。
逆転の3点目は中央突破からでした。ケンペスがDFを背負いながら佐藤勇人へ、さらに裏へいいタイミングで走った田中へスルーパスが通り、田中が冷静に決めます。きれいな形で崩しましたね。
しかし、終盤にCKからクリアしきれず、バヤリッツァに決められて3-3で試合終了。これで勝っていれば盛り上がったと思いますが…。
まあ、全体の流れは向こうにあったと思いますし、その中で散発的にしろ薄いところをついて得点もしたし、チャンスも作れていた。試合内容からすればドローで仕方ないかなと。千葉がボールを支配して主導権を握った戦いができればいいんですが、現状でそこまでの力がなかったということでしょう。