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★無料記事【西部謙司現地特別コラム】ジェフ千葉目線のコンフェデレーションズカップVOL.2 イタリア4-3日本

スペクタクル!

 もう、スコアのとおりの試合でした。第三者的にみれば大味なゲームということになるのでしょうが、スタンドも盛り上がっていましたし、見ているぶんには大変面白い試合でしたね。同時に、いろいろと考えさせられる試合でもありました。

方向性が決まった?

 コンフェデ杯の焦点の一つは、来年のブラジルW杯に向けてアジア予選の延長でチームを作っていくのか、それともアジア仕様からW杯仕様に変える必要があるのか、ということではないかと思っていました。

 ブラジル戦ではコンディションに差があるのを認めて、少し守備的なプレーを選択しました。2010年W杯(南アフリカ)バージョンほどではありませんが、ロンドン五輪的な戦術ですね。守備はまあまあだったのですが、もともと守備仕様のメンバーではない。あのやり方をするなら人選も見直したほうがいいと思います。また、致命的だったのはカウンターができなかったことです。トップに2、3秒キープしてほしいときにそれができなかった。このあたりは前回書いたとおりです。で、イタリア戦はどうしたのか。

 従来のアジア・バージョンをぶつけました。メンバーも前田が先発復帰して明確に元に戻したわけです。結果はご存じのとおりですが、日本は現在持っている力を発揮できたと思います。一方で、現在持っている課題もそのまま露呈しました。

 内容はポジティブです。ボールを保持して押し込み、敵陣で素早くプレスして奪回する。いわばバルセロナ的なスタイルですが、この流れのときに日本の力は最も発揮されやすい。繰り返しますが現在のメンバーでは引いて耐えることも、そこからカウンターすることも難しい。しかし、日本のスタイルで押し通せば良いリズムでプレーができた。つまり、内容から判断すれば「やり方を変える必要はない」ということになります。

 しかし一方で、結果は4失点の敗戦であることをしっかり受け止めなければいけません。日本らしいプレーをして3ゴール奪っても、まだ負けてしまう。イタリアは試合間隔が1日少なく、かなり疲れが溜まっていました。1点リードするや、とたんにカテナチオに徹して省エネを心がけています。現在のイタリアはもうそういう仕様に適していません。にもかかわらずそうなったのは、コンディションに自信がなかったからでしょう。それでも日本は負けてしまったわけです。結果から判断すれば、「このままではW杯でも格上には勝てない」ということになります。

 クラブチームでも同じことはよく起こります。ジェフ千葉も良い内容のプレーをしながら負ける、勝てないという試合はよくありますよね。自分たちの目指すスタイル、試合の流れになっていながら勝てない、そうすると「内容より結果だ」「やり方を変えるべきだ」という声が出てきます。しかし、それが当たっているかどうかはケースバイケースです。大事なのは近い目標(課題)と遠い目標(課題)を間違わないことではないかと思います。

4失点の原因

 イタリア戦の結果から考えてみましょう。まずどんな相手でも4失点もしたらまず勝てません。最初の失点はCKからデ・ロッシのヘディング、セットプレーの守備は明らかに日本の弱点ですね。千葉も同じ弱点を持っています。

 シーズン前からこの弱点ははっきりしていたので鈴木監督に聞いたことがあります。監督も弱点は把握していました。その時点ではゾーンで守っていて、シーズンもそのままの形になっています。鈴木監督はマンツーマンへの変更も考えていたようでした。ただ、どちらにしても劇的に改善されることはありません。日本代表は相手の空中戦の主要選手にマンツーマンでつき、ニアと正面をゾーンで固める併用型ですが、マンマークのエースの一人である今野が競り負けているわけですから、こちらもどうしようもないといえるかもしれませんね。

 むしろ、前半最後の5分間にイタリアに攻め込まれていたことが問題でしょう。日本は立ち上がりから飛ばしていたので、どうしてもスタミナが切れる時間帯でした。しかし、日本が引いて守れない理由の一つは相手のセットプレーが増えるからです。もちろんこういう我慢の時間は必ずあるのですが、そこで耐える力とともに、そういう時間を少なくする必要があるでしょう。2-0とリードした後に、今度は日本が省エネしてボールをキープする時間を増やす、より安全なパスを回しながら相手を前がかりにさせて1人か2人が裏を狙う攻撃をするべきだった。3点目を取りにいくのはいいのですが、その方法に課題がありました。守備のためのポゼッションをしながら、相手の出方によって単発的にシュートを狙えば十分です。2点のアドバンテージを生かすべきだと思いました。

 2失点目は吉田のミスです。これについては後述しますが、あの場面でははっきりプレーを切るべきでした。

 3失点目のPKは誤審でしょう。バロテッリのシュートを長谷部がブロックした後、はねたボールが手に当たっただけです。ハンドは明らかに意図的ではなく、あれをPKにされたのは不運だったと思います。もっとも日本が得たPKも疑問のある判定でしたが。

 4点目、日本の左サイドから崩されましたが、これも原因は今野のパスミスです。まとめるとCKとPKはまあ仕方ないとして、ミスがらみの2失点が問題です。

 どちらも自陣からつなごうという意識が裏目に出たものといえます。というよりも、どちらもはっきりつなぐというより中途半端なプレーをしてしまった。ここに大きな改善点があるとともに、現在の日本の立ち位置と今後の方向性を決めるカギが隠されていると思います。

結果のみの分析は大局を失う

 結果論でいえば、吉田も今野もはっきり大きくクリアしてしまえば失点にはならなかったでしょう。しかし、このケースは対症療法で終わりにできない側面が含まれています。

 パスをつないで押し込み、ボールを失っても敵陣でプレスして奪う、カウンターをカットする、そういう流れに持っていけば日本は勝てる可能性が増えます。ところが逆にいうと、そういう展開でしか勝てない。守っても攻めても強いバイエルン・ミュンヘンみたいなチームは希です。どのチームも得意な形があるわけですが、日本の場合はちょっと極端なんですね。選手もそれがわかっているから、簡単にボールを放棄したくないわけです。

 ジャッケリーニに入れ替わられてしまった吉田は、CKに逃げようと思えばたぶんできたでしょう。しかし、マイボールにしようとして結果的に裏目になりました。CKから失点していますから、できればCKにしたくなかった気持ちはよくわかります。

 今野のミスも、もっと大きく蹴り出せたかもしれません。あるいは確実につなげる場所もあったように感じます(リプレーを分析していないので断言はできませんが)。これもつなぐかボールを放棄してもいいか、その判断の是非は問われるケースでしょう。

 結果からいえば、繰り返しますがセーフティーファーストでいい場面でした。けれども、そこを広げすぎないほうがいい。むしろ、自陣でもボールをつなぐ意識はいままで以上に持つべきなのです。つなぐ意識を持ちつつ、ボールを放棄すべきだったというのは矛盾しているようですが、つなぐ意識を強く持つことで逆につなぐべきでないケースもはっきりするものだからです。

 イタリア戦でも、まだ攻め急いでスピードを上げすぎて自滅したり、後方でつなげる場面で蹴ってしまうことがありました。日本の特徴を生かすには、減らしていかなければいけないプレーだと思います。そこを徹底させれば55パーセントだったポゼッションも60パーセントぐらいには上がるでしょう。そうすればもっと日本のリズムでやれたはずです。

 敵陣でのプレーはこれでいい、ただし自陣でのパスワークはまだ改善の余地があります。GKも含めてボールをつなぐ、相手のプレスをかわす技術を上げることが日本の特徴を発揮するポイントになります。その過程では、今回の吉田や今野のような代償を払うことになりますが、そこでつなぐ意識を捨てては元も子もありません。ミスはミスですが、その対症療法が将来につながるとはかぎらないのです。

 イタリア戦の内容は良かった、しかし結果にはつながらなかった。イタリアに勝つのは近い目標ではありません。一つの戦い方しか通用せず、セットプレーにはっきりと弱点のあるチームが、毎回イタリアを圧倒して勝てると思ったら虫が良すぎます。一歩ずつ近づいていけばいいのではないでしょうか。結果が出なかったからといって、良かった内容まで反故にしたら退歩してしまいます。

 もう少し戦い方を整理して、つまりつなぐ意識を徹底させればポゼッションは60パーセントぐらいに上がると書きましたが、実は60パーセント程度のポゼッションでは勝敗に大きな影響を持ちません。スペインのように70~80パーセントという異常値に達してはじめて効力を持ち得るものだと思います。そこまで到達するには、たぶんあと1年では足りないでしょう。強豪に確実に勝つというのは、そういうことなのです。

 進んでいる道は正しい、というより現状でほかに選択肢が見つかっていない。険しくても時間がかかっても、その道を登るのが結局は一番近いのではないでしょうか。

 部分的に変えたほうがいいと感じることはいくつかあります。それは次回のメキシコ戦ではっきりすると思うのでそのときに書きます。ただ、日本の方向性は決まったと思うので、そこはあまり結果に左右されずに追求すべきだと考えています。

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