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【西部謙司現地特別コラム】ジェフ千葉目線のコンフェデレーションズカップVOL.3 日本1-2メキシコ

直面した新たな壁

 スコアのうえでは1点差、イタリア戦(3-4)と同じですがメキシコ戦のほうが敗北感は強いのではないでしょうか。前半の20分ごろまでは日本のゲームで、「これは勝てるかな」という気もしたのですが、後半は完全に流れをもっていかれてしまいました。

 では、なぜ日本は途中でリズムを失ってしまったのでしょうか。簡単にいえば、メキシコがイタリアとは違うチームだからです。

似ているが1枚上

 今大会、日本が強豪国と対したときの課題は明確にされたと思います。

 敵陣でのプレーは十分通用します。本田、香川がバイタルでプレーし、遠藤がサポートし、長友がサイドを駆け上がる、岡崎がシュートを狙う…。そうした日本の攻撃は引いている相手を崩してチャンスを作る力を見せましたし、得点も取れています。また、前線から素早くプレスしてボールを奪うプレーも効果的でした。

 一方、自陣でのプレーは課題が浮き彫りにされました。自陣でつなぎのミスがあったり、空中戦の弱さも顕著でした。敵陣でプレーするときの日本は攻守とも素晴らしいのですが、自陣ではまったくそうではない。ですから、なるべく敵陣でのプレーを増やすのが得策です。そのために残り1年を使うべきだというのは前回触れたとおりです。

 で、前回はあえて書かなかったことがあります。メキシコ戦ではっきりすると思ったので、そのタイミングでいいかなと。

 ボールを奪う力が足りないということです。なぜ、イタリア戦でそれを書かなかったのかというと、イタリア戦ではボールを奪えていたからです。イタリアはリードすると深く引いて守りました。今回のイタリアの編成からすると、あまり好ましくないやり方ではないのですが、疲れていたのでやむを得なかったのでしょう。ともあれ、イタリアが引いて日本が敵陣でプレーする時間が長かったので前からプレスする得意の形で守れていました。これならば日本はボールを奪う力があります。

 ところが、メキシコはイタリアよりボールをキープできます。そのかわりイタリアほど守備に耐性がないのですが、パスワークは定評がある。メキシコは日本と似たタイプなんですね。似たもの同士の場合、どちらが主導権を握るか、日本対メキシコのケースならどちらがボールをキープできるかで趨勢が決まります。

 日本がボールを持って攻め込んでいる時間帯は日本が有利でした。しかし、メキシコが日本のプレスをいなしてボールをキープし、押し込み始めると形勢は一気にメキシコに傾いています。ここで問題になるのは、日本が本来やりたいサッカーができなくなったときにどうするかということです。

やりたいサッカーのためのスパイス

 ジェフ千葉にあてはめて考えてみます。ガンバ大阪と対戦すると、おそらく千葉は自分たちのやりたいサッカーができなくなります。どちらもパスワークのチームですが、向こうのほうが1枚上手だからです。J1の上位クラブと対戦してもそうなるでしょう。そのときにカウンターアタックができること、トップにボールの収まりどころがあるかどうかがポイントになるという話はブラジル戦のときに書いたとおりです。

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