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【レビュー】J2第36節千葉2-1神戸@フクアリ「首位撃破! 長い眠りからようやく目を覚ます」(2013/10/7)3,121字

“自分探し”の終わり?
 強いところには強い。ガンバ大阪に続いて、ヴィッセル神戸にも勝ち越し(※1)です。これで自動昇格がないというのが辛いところではありますが。ただ、例年どおりの秋口からの失速も、これで出口が見えてきたのではないでしょうか。

 そもそも何で毎年毎年、同じぐらいの時期に調子を落とすのか。原因は毎年違うのかもしれませんが、共通しているのはメンタルかなと思います。J2では抜群の戦力、周囲の昇格への期待、上がって当然というプライド…しかし、相手は千葉には必死で立ち向かってきます。それをことごとくねじ伏せるだけの力が残念ながら足りない。でも、プライドは高い。プライドというより、千葉は下を見ていないんですよ。いつも理想の自分を探してしまう。そして理想と現実の狭間で、ちょっと自分を見失ってしまう。

 若い人が「自分探しの旅」に出たいと言うと、僕はたいてい「やめたほうがいい、見つからないから」と言います。旅に出るのはいいんです。見聞を広めるのは大いにけっこう。ただ、自分なんか見つかるわけがない。自分はもうここにいるので、探す必要がないんですよ。旅先では自分なんか忘れて周囲を見るべきなんです。旅先で自分をたまに見つけて気になるのは鏡に映った自分です。旅をすると日常より時間の余裕があるので、ふいに鏡に映っている自分を見ることもある。それだけだと思います。

 話が抽象的になりましたが、要は「自分」なんか気にするなと。G大阪、神戸に勝ったゲームについて言えば千葉は必死でした。自分たちがどんなサッカーをすべきかとか、ミスがどうこうなんて、気にしている余裕はなかったはずです。そして、そういうときの千葉のほうが強くて、「自分」のキャパシティーも広がっているわけです。「自分」なんて毎日変わる。

 チームとしてどうプレーすべきか、その軸は絶対に必要です。しかし、その程度を自分たちで決める必要はない。自分で自分の値段をつけなくていいんです。神戸に勝って、目が覚めたのではないでしょうか。

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