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【西部謙司のQ&A】「人種差別問題について」など質問4問

 J2リーグも3分の1を消化して、勝負の夏に入っていくタイミングですが、今回はピッチ外の話題が多めです。人種差別問題とクラブ運営、そしてW杯について、4つの質問に答えました。

 

Q.いつも楽しく拝見させていただいています。さて、西部さんへの質問としてふさわしい内容か迷いましたが、浦和の人種差別横断幕事件について質問させていただきます。再発防止、運営の不手際などを考えれば、処分やクラブの対応は妥当だと思いますが、事件の意図に対する追究も個人への処分も甘過ぎるように思います。真の再発防止を含め、今回の件、西部さんはどのようにお考えですか。

西部:スタジアムは必ずしも無害な場所ではありません。相手チームへのヤジ、挑発など、ある種の「毒」があります。その中で、人種差別と暴力は「猛毒」です。これを放置すると、サッカー自体の命にかかわります。ですから、この2つの関しては徹底的に排除しなくてはいけません。そのうえで浦和の問題についてですが、「無観客試合」というJリーグの処分は重すぎると思いました。問題のバナーが「人種差別」なのは明らかです。掲示の意図とは無関係にそう読めます。なので処分は必要です。しかし、欧州の例からすると今回の罰はかなり重い。CLのバイエルンvsアーセナルで、浦和のケースよりもっと酷いバナーがスタジアム内で掲示されましたが、客席の一部閉鎖と150万円程度の罰金でした。ある意味、欧州は人種差別慣れしていて、すでに罰則の例がたくさんあるからでしょう。この程度なら過去の例に照らしてこのぐらいという流れがある。日本は今回が初めてのケースでした。再発を防ぐために断固とした処置をしたといえます。ただ、私にはJリーグが理想論に傾きすぎているように思えます。今回の薬が効いてくれればいいのですが、世界中みまわしても悲しいかな戦争と人種差別はまずなくならないのです。今後、スタジアムで差別や暴力が顕在化する可能性は排除できないと思います。そう考えると、コンコースへの掲示で「無観客」はちょっとハードルを上げすぎた気がします。もしスタジアム内で同種のバナーが出たら、下手をすればクラブが消滅しかねません。浦和のケースは、バナーそのものよりも、それをしばらく放置したことを重くみているようですが、それでも罰則は重すぎるように感じました。現段階ではJリーグの姿勢を明確に出すPR効果は大きかった。しかし、将来この基準でやっていくのは大変だろうと心配しています。今後、各クラブはバナーの掲示について神経を使うようになり、コストもかかるでしょうね。再発防止に関しては警備の強化とともに、教育しかありません。Jリーグが積極的に反人種差別の行動を起こしていく、再発を未然に防止することが重要でしょう。

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