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【エジリの定理】VOL.7 クロスボールのシュート「決まった答えがあるわけではなく、自分の感覚を持つこと」(取材・構成:西部謙司)(2,975文字)2014/06/12

 前回の「大局観」と比べると、やけに具体的なテーマとなっております(笑)。ちょっとその前に、「大局観」で思い出したことを一つ。

 バルセロナの選手は「記憶でプレーする」と言うんですね。サッカーの常識は、見て→考えて→プレー、この順番なんですが、チャビなんかは実際考えてません。考えるというより自動的に答えが出ちゃうみたい。それはなぜかというと、「記憶」から回答を引っぱり出しているから。チャビじゃなくても、ある程度何度も経験しているような状況なら、誰でも自動的にプレーすることはあるはずです。そういうときは別に考えてない。

 チャビやバルサの選手の場合、相当複雑な状況でも「記憶」でやれてしまえる。つまり、「この状況は味方は必ずここにいる」というような、「定石」の数が圧倒的に多い。それを非常に多く経験していると思うんです。もはや判断の必要もないぐらいに。いつも通っている道を車で運転するのと似ているかもしれません。

 で、クラブのカラーを作るメリットはそういうところにあるんじゃないかと。ジェフなら「ジェフのプレー」というのがあって、育成のときから叩き込まれていて、その「記憶」でプレーできる選手を数多く育てるのが大事なのかなあ、とそんなことを思い出した次第です。

 さて、今回のテーマはクロスボールをダイレクトで合わせてシュートするという、至ってシンプルなお題です。

 なぜ、これにしたかというと、ジェフの練習を見ていても、けっこうな割合で外れているからです(笑)。フリーなのに、絶好球なのに、外す。でもですね、僕は外国のトップチームでも同じような練習で外すのをけっこう見たことがあります。バルセロナでもユベントスでも、ゴール前5メートルからドカンと打ち上げちゃう選手が意外といるんですよ。ファンバステンなんか試合ですごいの決めるのに、練習ではハデに外したりしてましたから。つまり、簡単そうにみえて意外と難しいテクニックの一つということで選択してみました。


――クロスボールをシュートするというテーマです。
江尻「協会の指導者養成で、初級(3種)対象のテーマには常に「クロス」が入っています。中で合わせるほうは3つのポイントに入っていくのが基本ですね。ニア、ファー、プルバック。そして、いつキッカーとコミュニケーションとるか。ただ、僕はあえて「中は見るな」と言っているんですよ。僕は現役のときにクロッサーでしたけど、クロスがピタリと合うときほど意外と中を見ていないんです」

――ああ、確かにそうですね。

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