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★無料記事【本人解説! 今週のこのプレー2015】VOL.2「ネイツ・ペチュニク~J2第5節・セレッソ大阪戦から」(取材・構成:西部謙司)(1,843文字)2015/4/9

●ネイツ・ペチュニクのシュート(第5節・セレッソ大阪/4△4)

 後半14分、ペナルティーエリアの左角あたりでパスを受けたネイツ・ペチュニクは対面したDFにドリブルでつっかけ、右足アウトサイドで切り返しざまシュート。ファーポストへ少しカーブしながら飛んだボールはネットへ吸い込まれ、千葉が2-0とリードを広げた。

 
――この素晴らしいゴールを解説していただけますか。
ネイツ「このときに背後、ないし周囲にオーバーラップした味方がいたかどうかははっきり覚えていないのだけど(谷澤達也が前方を横切るように動いている)、内側へ持って行ってシュートしようとは思っていましたね」

――パスを受けたときには、もうシュートをイメージしていたのですか。
ネイツ「そうですね、ボールを止めたときに対面した相手の背後をヤザ(谷澤達也)が走っていますよね(映像で確認)、まさにこの瞬間です。対峙しているDFも少しヤザの動きに釣られたので、中へ持っていってシュートしようと思いました。ヤザが上手く引っぱってくれましたね」

――シュートの前のドリブルのタッチが右足のアウトサイドでしたね。
ネイツ「パスを受けた瞬間には、まだシュートを打つと決めていたわけではありません。2回ほどタッチして様子を見ると、相手は自分の左側に動いたので逆をとってシュートを試みることにしました」

――切り返しでシュートコースを作っていますが、相手を抜いたわけではありません。相手が左足を伸ばせばシュートをブロックできる距離でした。相手が足を出せないことは分かっていたわけですね?
ネイツ「そうです。自分から見て、左側にステップしたのが見えました。相手が右足に体重が乗せた瞬間に自分は右へボールを動かしていますから、すぐに足を出せないのは分かっていました。なるべく素早くシュートすればいいと。足を伸ばしてもシュートはブロックできないだろうと考えていました」

――これはもうイメージどおりのシュートですか。
ネイツ「まったくそうでしたね」

――もう一つ伺いたいのですが、ネイツ選手は右足のアウトサイドでコントロールすることが多いと思います。相手選手を背負ったときですね。これはどういう理由があるのでしょうか。
ネイツ「アウトでコントロールすると、相手との間に体が入りますから相手がボールに触ろうとしても難しくなります」

――ネイツ選手にブロックされた相手は、どちらかからボールをのぞきに動きますが、どちらから来るかは予測しているのですか。
ネイツ「必ずしも予測はしていませんが、右足アウトでコントロールしたときに左腕が相手の体に触るので、それで判断できます。大事なのはファーストタッチ。そこが上手くいけば相手が体を寄せてきても、かえって自分の体の陰にボールが隠れてしまうので相手からボールが見えにくくなるんです」

 
 スロベニア出身のネイツ選手は、スパルタ・プラハ(チェコ)、ナシオナル(ポルトガル)、シェフィールド・ウェンズデー(イングランド)など、複数の外国クラブでプレーした経験があります。お兄さんもスロベニア代表選手なんですね。

 189センチの長身なのに、股抜きなど細かいテクニックが得意なのは、「子供のころからボールスキルを磨いてきた」からだそうですが、16歳から2年間に急に身長が伸びた。背の高い選手によくある現象なのですが、急に身長が伸びてしまうと体のバランスが悪くなってパフォーマンスが一時的に低下します。場合によっては、そのときにプロになるチャンスを逃してしまうこともけっこうあります。しかし、ネイツ選手のお父さんにコーディネーションの知識があり(スペシャリストだと言っていました)、父親の指導で難しい時期を乗り切れたそうです。

 レッドスター・ベオグラードでキャプテンだったネイツ選手がジェフ千葉へ来た理由は、どうも「口コミ」が効いたようですね。代理人が複数のJクラブに売る込みをかける中、イタリアのアタランタからも誘いがあったようなのですが、日本へ行った選手(現在名古屋のノバコヴィッチなど)からJリーグの評判を聞いていて日本が良いと考えたようです。レッドスターはセルビアの名門クラブですが、給料の遅配など財政が安定していなかったとか。

 ちなみにブラジル人のレアンドロ・ドミンゲス(名古屋)も元Jリーガーのウェズレイから「Jリーグはすげえいいぞ」みたいな話をさんざん聞いていたのが、日本に来た大きな理由でした。口コミって、やっぱり大事なんですね。

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