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【レビュー】J2第18節千葉2△2東京V@フクアリ-「2-0と2-2の間」(文・西部謙司)

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明治安田生命J2リーグ 第18節
ジェフユナイテッド市原・千葉 2△2 東京ヴェルディ
http://www.jefunited.co.jp/top/matches/2016/0612/result/

●2-0と2-2の間
0-0で折り返すと、千葉は後半に船山貴之と井出遥也のゴールで2-0。ここまでの流れは素晴らしかった。ところが、その後は東京ヴェルディの流れに変わり、74分と78分に失点。守りに入った時間帯で守り切れませんでした。この流れが変わったことについて聞かれた関塚隆監督は、

「私の方がそれを聞きたい」

と、若干キレ気味に応答しています。関塚監督としては珍しい反応でした。レフェリングへの不満もあったのでしょうが、ホームで2-0から追い付くかれたのが、よほど悔しかったのでしょう。

東京Vの冨樫剛一監督は、

「前半は我慢。後半に2人を交代してゴールへ」

というシナリオを、あらかじめ描いていたそうです。2点目を喫した後、高木善朗とドウグラスヴィエイラを投入。確かにここから流れは変わっています。ただ、それが全てでもありません。千葉側にもその要因があったわけで、そのあたりを中心に振り返ってみましょう。

●美しい攻撃で完璧な2-0
前節はお休みだった近藤直也が復帰。そのかわり、今回のお休みは多々良敦斗。比嘉佑介が右サイドバック(SB)で先発です。暑くなってきていますし、夏場以降に毎年のように失速しているので、ローテーションを考えているようです。中盤は長澤和輝、アランダのボランチコンビに右が井出、左が船山、トップ下に町田也真人、トップにエウトン。

千葉 先発フォーメーション

エウトン
船山貴之 町田也真人 井出遥也
アランダ 長澤和輝
阿部翔平 近藤直也 イジュヨン 比嘉佑介
佐藤優也

20分ぐらいまでは一進一退。その後は、千葉のリズムになります。25分に近藤のパスから町田、長澤、船山が絡んで井出がシュートするまでのパスワークは美しかったですね。アランダのポジショニングとボール奪取力、落ち着いたパスも見事でした。相手のカウンターアタックも確実に切っていて、攻守に良い流れです。ただ、なかなか崩し切るところまでは行かないまま前半を終えました。

後半は千葉が加速します。49分、井出のドリブルから船山へ、カットインからのシュートがDFに当たり長澤の前にこぼれてシュートしますが、GKがファインプレーで防ぎます。その直後には町田がゴールしますが判定はオフサイド。

先制点は53分、GK佐藤優也がボールを持つと、前線の町田がエウトンへのパントを促します。エウトンが佐藤優からのボールを競り落とすと、そこには町田。この2人の相性は本当にいいですね。町田が左へ展開、左の船山から長澤、町田と中央へつなぎ、さらに右のエウトンへ。このときエウトンの外を追い越したアランダの動きが決定的でした。エウトンからのパスを受け、フリーで抜け出したアランダはDFとGKの間を狙うと見せ掛け、スライディングでコースを遮断してきたDFの動きを見越したうえで、DFが滑り去った後のコースへクロスを通します。ゴール前で全くフリーの船山がプッシュして1-0。ワザアリのアシストでした。

2点目は59分、ウェズレイのクリアミスを井林章がヘディングで再度クリアしますが、これを長澤が拾います。長澤がドリブルで運んで左の井出へ。井出は縦へ抜き去って左足のシュートを逆サイドへゲット。

「得点の前に縦に抜けそうだったのに仕掛けなかった。得点のときは縦のコースが空いたので今度は迷わず仕掛けた。これまで右方向へのドリブルが多かったが、左へ抜けたのは自分にとっては大きい」(井出)

左からのカットインに縦への突破が加われば相手はますます止めにくい。ワンステップアップしたのではないでしょうか。

●リードした後の戦い方が課題
さて、ここからが本題。なぜ、2-0から追い付かれてしまったのか。よく「2-0は危険だ」と言われます。どうしても守備に入るからです。守っているのに1点返されると、かなり精神的に動揺する。ますます流れが悪くなってもう1点、最悪逆転されてしまう、というわけですね。ただ、2-0は本当に危険なのでしょうか。本来なら、むしろ危険のない点差です。相手はリスクを負って攻めてくるのが確実なのですから、ガッチリ守ってカウンターを仕掛ければ3-0、4-0に広げられる状況のはずですから。

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