大宮花伝

【★無料掲載】延長戦の末、群馬との激闘を制す。3回戦進出とともに、手にした成果【天皇杯・ザスパクサツ群馬戦/マッチレビュー】

■天皇杯全日本サッカー選手権大会 2回戦・7月3日(水)19:00キックオフ
NACK5スタジアム大宮/2,571人
大宮アルディージャ2−1ザスパクサツ群馬
【得点者】大宮/10分 大前元紀、118分 高山和真 群馬/71分 福田俊介

▼布陣変更と選手交代で勝ち切る

天皇杯はリーグ戦では出場機会が少ない選手にとっては格好のアピールの場。J3ザスパクサツ群馬戦は力試しでもあった。リーグと合わせて3連戦の2試合目で選手はフレッシュな顔触れが並んだ。延長戦までもつれ、ハラハラ、ドキドキの展開。苦しみながらも最後は歓喜の瞬間が訪れ、120分を戦った選手は精魂尽き果てた表情で、主将の大前元紀は「このゲームがどういう試合か認識して、懸ける思いは一人ひとりが持っていた。公式戦の雰囲気を普段は試合に出ていない選手が感じて、リーグにつなげていけたら」と汗をぬぐった。

加藤有輝はプロ4年目で公式戦初出場、酒井宣福は負傷から復帰したての1戦目で、このほかの選手たちもセンターバック右に入った吉永昇偉以外はひさびさの出場機会だ。試合は10分、大前のゴールで幕を開けた。大山啓輔のパスを大前が右足を伸ばしてシュート。相手の隙を突いて先手を奪い、幸先の良いスタートを切る。だが、それ以降は群馬がほぼボールを保持。23分にはピンチを迎え、相手のファウルに救われた。31分にも冷や汗をかいたものの、前半を1−0で折り返した。

カテゴリーの差を見せつけたい後半、なかなかネイビーブルーの壁を崩せない。攻撃はどんどんと遠回りしている印象。そうこうしているうちに71分、元大宮の福田俊介が左CKから同点ヘッド。恩返しゴールで試合は振り出しに戻ってしまった。勢いが増した群馬に押し込まれ、攻撃は後手に回った。後半のアディショナルタイムにカウンターからあわやの場面があったが、加藤有輝が落ち着いた判断で1対1を制して試合は延長戦へ。高木琢也監督は石川俊輝、河面旺成とリーグの主力を次々と投入して勝負に出た。

システムは河面をセンターバックに据えて、3バックから4バックに変更。右サイドバックに入った吉永は「上がりやすい」と果敢に攻撃参加し、延長後半終了間際には吉永の仕掛けから右CKを獲得した。こぼれ球を拾った茨田が大前へパスを送り、大前のクロスに高山和真が渾身の決勝ヘッド。応援に駆けつけた両親の前での活躍に、高山は「やられたからやり返したい思いがあったので入って良かった。あんまりみんなが喜びにきてくれなかったので悲しかったです(笑)。河面選手だけがきてくれてうれしかった」と表情を緩めた。

高木監督は「勝たないと次がない大会なので、最後は勝つっていう意味で選手を代えていった。非常に難しいゲーム。選手のキャリアを含めて数十年やってきましたけど、ほぼ、ほぼ楽なゲームは一つもなかった。今日もそういうゲームになりました」と一発勝負の緊張感を振り返る。殊勲の高山は「こういうゲームはセットプレーやFKが勝敗を分けてくる。僕がマークを外してやられたのは反省点。逆にそこを取れたのは大きな収穫。これからもチャンスがあれば狙っていきたい」と意欲を見せた。

ワントップもこなした大前は「フアンマ(・デルガド)、ロビン(・シモヴィッチ)がワントップをやっている中で、また違ったタイプのワントップがいてもいいと思う。もうちょっとボールを引き出したり、前に入れれば良かった。いい形でゴールを決められたのは良かったが、もう2、3点を取らないと難しい展開になるので常に得点をもっと狙っていきたい」と、さらなる高みを目指す。中2日でアルビレックス新潟とのリーグ戦を控え、奮闘したフレッシュな顔触れたち。高木監督は「(選手選考の)テーブルには乗せられる」と成果を手にしていた。

Text by 松澤明美

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ