大宮花伝

【☆無料記事】インターハイ中止決定約1カ月。部活休止中で試行錯誤する埼玉高校サッカー強豪校。大宮の選手から励ましの言葉【番外編の巻】

 

正智深谷高校の小島時和監督「個人練習がポイント」

新型コロナウイルスの感染拡大で埼玉県高校サッカー界も厳しい状況が強いられている。今季は新人大会が開催されたものの、関東大会県予選、同大会は軒並み中止。さらに、4月26日には全国高校総合体育大会(インターハイ)が史上初の中止が決まった。これにより、同県予選も行われない。

インターハイは全国高校選手権大会と並び、高校生にとってのビッグイベント。予選や本大会を通じて大学やプロチームなどの目にとまる選手もおり、さまざまなところに影響が出てきそうだ。全国高校選手権ではベスト8、インターハイは3位の経験もある強豪・正智深谷高校の小島時和監督と選手に話を聞いた。

正智深谷高校は3月上旬から休校し、部活動もストップ。約30年の指導歴を持つ小島監督にとって「3日以上休んだのも、こんなに部員たちに会えないのも初めて」だと言う。さらに、インターハイ中止の報が届き、直後は「どうしていいから分からない」心境だった。そこから気持ちを切り替え、まずは学校生活を安定させることを意識。「高校生なので学校生活が基本」と授業やクラスのコミュニケーションを念頭に置き、そういったところから「サッカーに結び付けたい」と心を砕いてきた。

幸い、全校生徒に一人一台のタブレットが導入されており、オンライン授業もいち早く取り入れられた。サッカー部にはトレーニングメニューが動画配信され、自主練習ができる環境は整えられている。しかし、3年生はインターハイの中止によって大学へのスポーツ推薦も例年と同じようにはいかず、今後は推薦を考える選手のアピール動画を作成するなどの対応を検討中だ。また、中学生のスカウト活動にも支障が出始め、小島監督は「営業しないと」と戦略を練る。

これからは全国高校選手権、同県予選(日程未定)が目標になるだろう。サッカー部の平山楽人選手はインターハイ中止を残念がりながらも、「こういうときにまとまったチームが勝つ。練習が再開したときのために、いい準備がしたい」と前を向いた。5月25日には埼玉県も緊急事態宣言が解除され、正智深谷高校は6月1日から分散登校がスタート。部活動再開のメドは立っていないだけに小島監督は「個人練習がポイント」とし、部員の学校生活やサッカー環境の整備に配慮していく。

 

河面、戸島、西村の3選手が高校生にエール

高校サッカーでプレーした大宮アルディージャの選手たちはインターハイ中止という苦境に立たされた高校生へエールを送る。

河面旺成選手は岡山県の作陽高校出身。インターハイ出場経験はないが全国選手権で活躍した青春時代を思い返し、こう話す。「1年間に全国選手権とインターハイって大きい大会がある。そこで活躍すれば、その先につながったり、いろんな道が開けたりする。チームとしても個人としても、しっかり活躍して結果を残すことを目標に日々の生活で取り組んでいたと思う。そこに向けて頑張るってところがなくなってしまうのはメンタル的には一番きついのかな」。

高校生の心情に寄り添い、次のように続けた。「長いサッカー人生を見てみるとサッカーだけの話ではないが、大変な状況でもモチベーションを落とさずやり続ける姿勢は絶対に大事になってくる。全国選手権が開かれるとなったら、そこに向けてしっかり気持ちも作れると思う。こういうときだからこそ、もう1回何のために何をやっているのか、何が必要かってところを考え直して、しっかりモチベーションを維持してもらえれば」

東京都の成立学園高校出身の戸島章選手はインターハイ都予選でU−18代表監督に見初められて同候補に呼ばれた。戸島は「そこでプロにつながった」と振り返り、「(インターハイ中止で)アピールする場もなく、なかなかやる気が出てこないと思う。ハードにトレーニングしたりできない」と気に掛ける。「難しいだろうが(将来的に)プロを目指すのであれば自主的に考えて動くことによって周りとの差をつけられる。これをチャンスと捉えてできた人が強くなれる」とアドバイスを送った。

千葉県の習志野高校出身の西村慧祐選手は「インターハイの予選のときに進路(専修大入り)が決まった。大学でサッカーを続けたいと思っている子にしたら幅は少なくなったとは思う。一つの目標がなくなるのはそれをどこにぶつけていいのかなって。かわいそう」と高校生の胸中を推し量る。「状況は誰もどうすることもできないので、今できることを精いっぱいやることが今後のためになる。(再開時には)中断する前よりいいパフォーマンスをできるように目指して、この期間を無駄にしないでほしい」と応援した。

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