フットボールフィリピン

インタビュー|母親の祖国で現役を続ける元Jリーガーの軌跡【後編】記事転載

photo via davao aguilas bellmare fc

◆母親の祖国フィリピンに向かった理由

一旦日本に戻って、フィリピンのグローバルでプレーしていた佐藤大介に連絡してみました。大介は僕と同じフィリピンハーフの選手で、すでにフィリピンパスポートを取得済みで、フィリピン代表にも選出されていました。

僕もフィリピンパスポートが取れるかもしれないので、グローバルでプレーすることはできないだろうかと、星出悠さんにも相談してみたところ、クラブからパスポートの取得を前提としてのオーケーが出たので、とりあえず外国人枠で獲ってもらいました。

パスポートの申請には多くの書類を揃えなければならないし、弁護士とかの手も借りることになります。僕にはコネがないこととお金を騙し取られたことで、うまく進められませんでした。グローバルからも、いつまでも外国人枠で使うことはできないということで、契約解除になりました。

僕がプレーできる場所は減る一方でしたが、帰国後すぐに、JFLの企業チームの監督から連絡があって「チームがないならウチでやれよ」と誘われました。横河武蔵野FCでした。完全に無給の条件でしたが、なにもしないでいるのも辛かったので入れてもらいました。

ここでは在籍期間が短かったし、僕も怪我でほとんどプレーしていないのですが、仕事やバイトをしながらサッカーを続ける選手たちの姿を見て、プロの立場についてあらためて考えさせられました。簡単に諦める訳にはいかないと思いました。

その後、JPヴォルテスのボス永見協さんから声が掛かり、またフィリピンでプレーするチャンスが出てきました。パスポートが取れたらローカル選手として登録するから、それまではチームをサポートしてほしいと言ってくれたので、再びフィリピンに向かいました。

結局、パスポートの取得には1年半も掛かってしまいましたが、2017年の6月にフィリピンリーグの選手登録が完了しました。長いブランクがありましたが、練習には参加していたので、なんとかプロサッカー選手としてピッチに戻ることができました。

もう若くないので、以前のようにゴールに向かってドリブルで突進することはできません。でもトップスピードとかクイックのアジリティは落ちてないので、失わないプレーとか人を使って走らせるとか、プレースタイルを変えました。経験でカバーできることもたくさんあります。

photo via davao aguilas bellmare fc

◆フィリピンのローカル選手として現役続行

フィリピンリーグにローカル選手として登録されるようになったことで、外国人枠の選手ではなくなりました。早速、新興クラブのダヴァオ・アギラスから良い条件でのオファーがあったので、移籍することにしました。

この10月で37歳になりましたけど、フィリピンでは年齢だけで判断されることはないので、もう少し現役を続けようと思っています。もちろんプロである以上、いつ切られてもおかしくないのですが、この国のサッカーに足りないことを、同じ選手の立場でいるうちに伝えることがたくさんあるので。

いずれ現役から退いたとしたら、指導者としてではなくクラブのマネジメントの方で貢献してみたいと思っています。日本を含めて、多くのクラブを渡り歩いてきたので、引き出しは結構あると思っています。

つい先日のことですが、僕が所属しているダヴァオが、J1の湘南ベルマーレと提携しました。ウチのボスは政財界に人脈のある有名なビジネスマンです。提携の話もあっという間に決まりました。そういえば、僕のベガルタでのプロ入り初ゴールは、たしかベルマーレ戦でしたね。

フィリピンでJリーグのクラブと関わりあうことになるとは、僕自身思ってもいませんでした。長く現役を続けていると、本当にいろんなことがありますね。(了)

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