フットボールフィリピン

編集長コラム|曇天続く「フィリピンフットボールリーグ」一筋の光明は「フィリピン代表」

photo via philippines football league

紆余曲折を経て5月25日にようやく開幕した国内リーグ『フィリピンフットボールリーグ』ですが、開幕日程がほぼ2ヶ月遅れたことで週末だけではなく水曜日にも試合を行なっています。開幕から2ヶ月が経過した現在までに各チーム10試合前後を消化していますので、8月の中旬頃がリーグ戦日程の折り返し地点となりそうです。

リーグ戦は戦前の予想どおりAFCカップに出場していた2チーム、昨年のリーグ戦王者セレス・ネグロスとカップ戦王者のカヤ・イロイロが首位争いを演じていますが、この2チームに次ぐ3位争いが地味に(本当に地味に)面白い展開となっています。

現在3位争いを演じているのは、スタリオン・ラグーナとグリーン・アーチャーズの2チームですが、前者はここ数年はリーグ戦を中位から下位で終えるセミプロチームで、後者は3年ぶりに国内のトップカテゴリーに復帰したばかりの同じくセミプロチーム。この2チームが良い意味で予想を裏切るなかなかの戦いぶりを見せています。

しかし、ほぼ数合わせ的に今年のリーグに参戦した(ある意味、させられた)メンディオーラとフィリピン・エアフォースは、多額の負債や未払いを抱え一気に失墜したグローバル・マカティと共に、上位の4チームには程遠い3番目のグループを形成して下位争いを演じています。

今夏の移籍市場で外国人選手を補強したメンディオーラはここから抜け出せる可能性があるのですが、フィリピン空軍に所属するローカル選手だけで戦うフィリピン・エアフォースと、金欠で日々の練習すらまともに行なわれないエンジョイ街クラブと化したグローバル・マカティの2チームは、もはや論ずるに値しない状況を迎えています。

今年のリーグ戦は4回戦総当り方式となったため、各チームは24試合を戦うことになっていますが、グローバル・マカティが最後まで続けられるかどうかは正直分かりません。さらにカップ戦のコパ・パウリーノ・アルカンタラも行なわれない可能性があり、来年のAFCカップに向けて一抹の不安を感じているところです。

photo via theazkals.com

『フィリピン代表』についても触れておきたいと思います。7月19日の掲載記事(こちらから)で詳しく書きましたが、先日、W杯アジア2次予選の組み合わせが決定しました。フィリピン代表(126位)はグループA組に入り、中国代表(73位)、シリア代表(85位)、モルディブ代表(151位)、グアム代表(190位)と同組となりました。

この抽選結果は、他の組に比べれば概ね良い顔合わせだと感じています。他の地域連盟に所属する明らかな格上と明らかな格下と同組となったことで、フィリピン代表には何も失なうものがないからです。純粋に格上からは勝ち点1を狙い、格下からは勝ち点3を狙うという明確な戦い方ができるわけです。

近隣のライバル国との対戦は非常に難しくなるという観点では、グループC組のイラン代表とイラク代表、グループH組の韓国代表と北朝鮮代表、そしてグループG組の東南アジア4カ国の顔合わせは、現時点でのチーム力(FIFAランキング)だけでは済まされない問題も含まれてくるわけですね。

特にグループG組は、歴史的にドローで試合を終わらせることに慣れている中東勢のUAE代表を中心に、お互いを知り尽くし相手の長所を潰す戦い方ができる東南アジアの4カ国が集中したことで、結果的にドローで終わる試合がかなり多くなる気配を感じます。

ですので、他の組の2位(1位の8カ国と2位の成績上位4カ国が3次予選に進出)よりも、グループG組の2位になる国は勝ち点が少なくなることが予想されるため、2位では危ないので1位突破を目指さなければなりません。ベトナム代表とタイ代表(もちろんマレーシア代表とインドネシア代表も)の東南アジア勢が、共に2次予選で姿を消す危険性を大いに含んでいるのです。

タイ代表の監督に就任したばかりの西野さんにとって、この抽選結果は相当な重荷になっているはずです。その点、近隣のライバル国との対戦を回避したフィリピン代表は、余計なことを一切考えずに、明らかな実力差のある相手と思い切り戦うことができる。ゆえに何も失なうものがないのです。

スコット・クーパー監督率いるフィリピン代表ですが、アジアカップで招集した23名のメンバーからは若返りが図られる見込となっています。W杯アジア2次予選は国際Aマッチウィークに行なわれるため、タイやマレーシアでプレーしているメンバーに加えて、欧州組の数名も加わってくるでしょう。おそらく国内組は1名か2名程度ではないでしょうか。

また、フィリピン代表の伝統芸となりつつある お前は一体誰なんだ? 的な、新たな海外出身のフィリピンハーフ選手たちも数名のメンバー入りが予想されています。マニラ界隈では既に具体的な名前も上がってきています。

9月から始まるW杯アジア2次予選は、グループA組のフィリピン代表の戦いぶりにも注目してみてください。フットボールフィリピンのなかでも詳しくお伝えしていく予定です。

ではまた次の機会に。

フットボールフィリピン編集長・池田宣雄

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