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[小宮山友祐(浦安)インタビュー]世界の強豪とガチンコで戦う経験を積まないと 強くなれない!

「前プレとセットプレーが日本の武器。次にやるべきはポゼッションだ」

 

これほどの日本代表スポークスマンが過去にいただろうか。エネルギッシュなプレーそのままに、ダブルキャプテンの1人としての貴重な代表経験を、率直に、ストレートに語り尽くす。その歯に衣着せぬコメントは痛快極まりない。その小宮山選手に、今後日本代表を強くするために何をすべきか、日本になくて世界の強豪にあるものは何か、またその逆
のこととは何か、といった質問をぶつけた。11月24日のFリーグ再開初戦の数日後だったこともあり話はFリーグから入ったが、本題は小宮山選手によるワールドカップ総括である。傾聴に値するコメントの数々を堪能してください。

聞き手◆デジタルピヴォ! 山下

 

再開初戦の府中戦は1つのミスで流れが変わった

Pivo! Fリーグ再開初戦の府中戦〈11月24日〉、キミのタフネスぶりに改めて感心した。直前合宿も含めると3週間に及ぶ代表活動の結果、代表として活動した他のチームメートには疲れが感じられた。そのなかでキミは本職のフィクソからピヴォまでこなしながら、攻守に気を吐いていた。

 

小宮山 ありがとうございます。残り3分、もう足が半分つっていました。ぎりぎりでしたね。でも、僕らは1個でも2個でも上に行かなきゃいけないチームなので、余力を残すというか、疲れたとか〈高橋〉ケンスケのケガなどは一切言い訳にならないのでとにかく全部を出し切って。それで勝てなければしょうがないと思っていました。思うところはたくさんありましたけどね、あの試合は。でも、せっかくワールドカップで注目してもらって、いつもより多くのお客様が来てくださったので、その中でやるべきことは必死になってプレーすることだと思いましたし。

 

Pivo! ということは、さすがの小宮山選手も疲れを引きずっていた?

 

小宮山 そうですね、多分、それもありますし、府中戦の後半のパワープレーで、行ったり戻ったりの繰り返しだったので、あれをすると自分でもつるなと思ったんですけど、でも、代わりもいないですから、行ける限り行こうかなと思っていました。

 

Pivo! 星は痛んでタンカで運ばれたし、確かにパワープレーでピヴォをやる選手がいない。

 

小宮山 いないですね。なので、何とか、マイボールにするだけでも、それだけでも役目を果たせるかなと思ったので、体を張ってキープしようと努めました。

 

Pivo! 府中戦の敗因は、決めるべきときに決められない、決定力の差に尽きるのかなと感じたが。

 

小宮山 いや、本当にそのとおりだと思います。決めるところを決められなかった浦安と、しっかり決めた府中。そして変なミスをしなかった府中と、してはいけないミスをしてしまった浦安、そこの差でしょうね。やっていてまったくポゼッションができないとか府中のボールを奪えないというのは一切なかったですし。そこに悔いが残ります。

 

Pivo! ゲームへのいい入り方をして稲葉が先制点を決め、浦安ペースの前半だった。

 

小宮山 なので、1つのミスですよね。そこがまあ、富澤だけのせいじゃないですけど。

 

Pivo! ゴレイロ富澤が相手ボールをパンチングに行ったがペナルティサークルから体が出ていたとしてハンドのジャッジを取られて府中にゴールほぼ正面約7mのフリーキックを与えてしまったシーン。

 

小宮山 そうです。あのボールの高さは僕が触れる高さだったんですよ。だから飛び上がったんですけど、富澤のOK! という声が聞こえたのでしゃがんだんですよね。僕がしゃがんで富澤がパンチングしたのはいいんですけど、ハンドとは思わなかったです。もともと潤(藤原)とコンビを組んでいたので、富澤との連携はそこまで深くない。でも、なんとしてもあのミスを帳消しにしてあげたかったので、あのフリーキックを止めたかったんですけど入ってしまった。ま、もったいなかったですね。あれでゲームの流れが府中へ行ってしまいましたよね。

 

Pivo! プレマッチのフウガ戦であまり当たってなかった山田ラファエルだったけど、あのフリーキックは破壊力十分だった。あれが府中の武器だ。

 

小宮山 そうですね、エネルギッシュというか、府中はシンプルですけどね、パワーというか迫力がありますよね。

 

Pivo! 強いシュートばかりがいいとはいえないが、それが結果につながっている。

 

小宮山 そうですね。

 

世界の強豪とガチンコ対決を

 

Pivo! 本題のワールドカップの話です。振り返ってワールドカップの印象は?

 

小宮山 フットサル人生のなかでも普段経験できない、貴重な3週間だったと思います。自分たちがやったこと、やり遂げたこと、そして、足りなかったことというのが見えた3週間でもありました。本当にひと言でいうと、僕のなかでは悔しさしか残っていない、ってところですかね。

 

Pivo! 日本代表がこれから強くなっていくために何が必要か。

 

小宮山 感じたのは、海外のチームと試合することはすごく大事だけど、ただ試合をするだけだとあまり意味がないかなと。真剣勝負の舞台、たとえばインターコンチネンタルカップとか、そういう大会の大事な試合でブラジルやスペインという世界の強豪、もしくはクラブチームと戦わないと、真にリアルな経験は積めないのかなと。例えばスペイン遠征はハードな日程ということもあって16、17人連れていきます。この人数で1チームだと練習試合なので3、4セット組めたりするわけです。そしたら今回のウクライナ戦のようにフィールドが8人しかいない状況は体感できないですよね。逸見が累積でコータロー(稲葉)が退場でケンスケがケガで。そういう状況での試合というのはないじゃないですか、練習試合では。

僕らも日本代表でフィールドが8人しかいない状況で試合したのは初めてですよ。それが国際大会の真剣勝負の舞台、ワールドカップという舞台で巡ってくるわけなので、そういう海外での本当に厳しい経験、世界のトップファイブとガチンコでやる場での経験はまだまだ少ないのかなと思います。今の日本代表では僕も含めてワールドカップに3回出ている選手もいますし、海外でプレーした選手もいて、海外での経験は多いですけども、例えば逸見が海外へ行ったり、翔太(星)がスペインに再挑戦したり、もっともっと多くの選手が海外に行ってチャレンジすることは必要なのかなって思いますね。もっともっとシビアないろんな経験をしないとだめだと思います。

 

Pivo! それが象徴的だったのは、親善試合でウクライナに勝って、本番でも行けるんじゃないかと幻想を抱いていた。ところがどっこい、ウクライナの力量は親善試合とはまったく違ったものだった。そこんところもガチで戦った経験がないから相手の本当の強さを引き出し切れなかった。
小宮山 というふうに僕も感じますね。まったく違いましたしね。ウクライナが違ったようにこっちも違っていたし。

 

Pivo! こっちも違ったってどういうこと?

 

小宮山 なんていったらいいですかね、戦前の“出来るだろう”“出来るんじゃないか”という思惑が一個一個つぶされていきましたよね。「開始5分で絶対に失点しない」「先に点を取る」「リードして前半を終える」という親善試合ではできたゲームプランというものがまったくできず、セットプレーもセットプレーになるところまでいけない。向こうの前からのプレスも回避できない。ポゼッションも日本はできない。

 

Pivo! 日本の武器を生かすところがない。

 

小宮山 そう、だから、そういうときに何ができるのかっていうと何もなかったのかなと。だから、もろさが出ましたよね。それをひと言で経験といったらそれまでなんでしょうけど。でも、あそこで前から行くことだけを考えて、全部相手ボールにしちゃってもいいから前プレをかけ続けるとか、逆にもっと引くとか、パワープレーを仕掛けちゃうとか、いろんな選択肢があったのかなと思います。

 

Pivo! 臨機応変にそれができるかどうか。

 

小宮山 ただそこは、パワープレーをできる選手があの時点でもういなかったですからね。そういう部分では薄いというか、もろいというか、経験のなさが出ちゃったのかなと思います。もったいなかったですね。

 

Pivo! もったいない?

 

小宮山 そういう部分が出た試合が〈決勝トーナメント初戦の〉あそこで来ちゃったのは、もったいなかったなと思います。

 

流れのなかでゴールを奪う練習をしてきたか!?

 

Pivo! 日本になくて世界の強豪にあるものとは?

 

小宮山 う~ん、そうですね、僕が感じたのは(ブラジル大会後の)この4年で結局、日本は、点を流れのなかから取るすべっていうものを作れなかったのかなと。

 

Pivo! ほう!?
小宮山 ディフェンスの練習もしたし、セットプレーの練習もしたし、パワープレーの練習もしました。でも、とにかく点を取る力、ずっと相手を押し込むだけの攻撃を世界の強豪相手に日本ができるかといったら、できなかったのかな。相手をずっと自陣に押し込めるぐらいの、今、名古屋がFリーグでほかのチームにやっていることというのは日本にはなかったのかなと。

 

Pivo! それはポゼッション?

 

小宮山 ポッゼッションもそうだし形もそうだと思います。あとはフィニッシャーですよね。今回日本にカオル(森岡薫)っていうフィニッシャーはいたけど、ワールドクラスだとウクライナに抑えられてしまう。リビアに抑えられてしまう。ポルトガル戦では覚醒しましたけど。あの中ドリシュートはワールドクラスだと思う。すばらしかったです。

 

Pivo! 中ドリシュート?

 

小宮山 ポルトガル戦でドリブルで中に運んでドン! と打ったシュートです。角度もコースも強さもワールドクラスですよね。ああいうのをできる選手が日本にもいるんだってことを知らしめるいい機会だと思いました。

 

Pivo! ああいう、流れの中で決める力。

 

小宮山 はい、それが足りないのかなって。

 

Pivo! それは実戦で磨いていくしかない?

 

小宮山 と思います。でも、勝つにはどうしても監督って後ろからチームを作らなきゃいけないんですよね。失点しない、失点を減らすってことから。ミゲルが与えてくれた武器はセットプレーから点を取る、パワープレーから点を取る。でも、そこまで行けなかったときにどうするか、というのはなかったですよね。

 

Pivo! 逆に日本にあって世界の強豪に無いものは?

 

小宮山 そうですね、技術以外の部分では全員でハードワークする姿勢や最後まであきらめない気持ちの部分、そういったものは海外にはないと思うんですよね。でも、いいところでもあり悪いところでもある気がします。たとえばブラジルはシュートを決められたときにキーパーのチアゴが抜かれた選手にものすごく文句をいってるんですよね。なんであそこで抜かれてんだよ! みたいな。抜かれた選手は選手で、いや、今のはおまえ、取れんだろ、みたいな応酬。そういうのって日本にはないですよね。でもそれが選手を強くするのかなとも思うし。日本人的な考え方ではかばいあったりいたわりあったりする場面じゃないですか。でも、それってある意味、お互いが妥協しているのかなって気がするんですよ。ブラジルには応酬のなかで、もっとお互いの役割を明確にするっていう部分が強いと僕は感じましたね。

 

Pivo! 日本人のかばいあいやいたわりあい、

 

小宮山 時に必要で時にいらないのかとも思いました。ただ、ああいう長期間の大会でのナショナルチームとしての協調性や連帯感は日本が一番すばらしいし、そこは本当に世界各国と比べても美点だと思います。あと、日本人が一番上品ですよね。

 

Pivo! 上品?

 

小宮山 やっぱり国を背負っているという意識は全員が持っていますから。外にメシを食いに行くのにビーサンで行く選手はいない。ちゃんと靴を履いてシャツを着てっていう服装で行きますよ。そこはやっぱり、サッカー選手とかフットサル選手とかじゃなくて日本人としてのいいところだと思いますね。

 

名古屋に入団することもレベルアップ

 

Pivo! 日本が強くなるために選手個々がやるべきことは?

 

小宮山 さっきの話と重複してしまうかもしれませんが、より高いレベルに出ていくことじゃないですかね。海外もそうですけど、Fリーグのなかでもより高いレベルに出られるチャンスってあると思うんですよ。例えば名古屋オーシャンズはFリーグ唯一のプロチームでリカルジーニョもいる、ペドロコスタもいる、いい選手がたくさんいる。その名古屋に入って、そこで切磋琢磨するっていうことも必要だと思います。個々がレベルアップするには、1つは海外へ出ていく、2つ目は日本で一番いいチームに入る、それを若い選手がもっともっと求めていくことが必要なのかなと思います。経験のある選手は自分の感覚や価値観があるから、今から名古屋に入ること自体に抵抗がある人もいると思うし、自分がやってきたことを全部ひっくり返すことの難しさもあるので、一概に全員行くべきだとは思わないですけど。でも、個人でやれる部分っていうのは常日ごろからそういう世界を目指すことだと思うんですよね。

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