デジタルピヴォ! プラス

湘南ベルマーレ・相根澄監督インタビュー2『1年通してですけど、下を向いてやっていた選手は誰もいないんですよ』(2013/5/22)

 若手への期待感をにじませた相根監督。

 

 

失礼なことを承知でいう。これほど結果の出ない苦しいリーグ戦を戦っているのに、それでもたった一瞬のワンプレーの中に可能性を見出している。成長のあとをしっかりと把握している。監督として自らの方向性に沿って選手を動かすとき選手のやる気を引き出す人心掌握術は欠くことに出来ない大事な要素なのだろう。一方で、豊富な経験を持つベテランへの苦言も呈している。試合中に自分なりに選択肢が頭をもたげた結果として勝手なプレーに走ってしまうのだという。また、ともすればチームの足を引っ張りかねない若手への評価も忘れない。中村、安藤、刈込、内村。期待を込めて若手の名前が次々と挙がった。

 

文・写真◆デジタルピヴォ! 山下

 

 

カウンターとパワープレーからの失点が半分以上

 

Pivo! ボラの本来やるべき仕事を確認して、明確化した。第2クールの中くらいには彼もそれを忠実にこなすようになった? 

相根 そうですね。(チームがボールを失うと)本当に戻るようになって。オーシャンアリーナカップの3位決定戦で、最後はシーソーゲームだったんですよ。残り何秒かで入れられて負けたんですけど、入れられる前に、カウンターで安藤とボラで2対1になって。そこでボラからパスが通ってキーパーと安藤の1対1になれば、もしかしたら我々は勝っていたかもしれない。でも、ボラが安藤にパスミスをしたんですね。それを相手に拾われて逆カウンターになって、キックフェイントされて最後は奪った選手にシュートを決められているんです。で、ボラは戻ったのかなってちょっと思ったんです。それで場内の大型スクリーンを見たら、ゴールの中に走り抜けていたのはボラだったんですよ。なので、あーよく頑張ってくれたなって思いましたね。だからみんなやりきっての4位だったので、みんな胸を張っていいと。見ている人もいる中で、だいたい3位決定戦って消化試合じゃないですか。やっぱりモチベーションを保つのも大変な中で、本当に1試合通して全力でやりきったし、最後はボラなんてぶっ倒れているくらいだったので。

 

Pivo! ボラ自身にとっても、再発見があったのかもしれないね。でも第2クール、浜松戦の勝利をのぞいて大阪との引き分けを挟んで勝利がない。その要因はなんだったのか?

相根 うーん…。まぁでも正直、どの選手に聞いても同じだと思うんですけど、負けている理由が分からないってくらいみんな自信を持ってやって、負けているんです。第2クールは特に、オーシャンアリーナカップを経験してベスト4まで残ったという自信と、やってきたことが浸透してそれが通用するってことも分かっていたので。まぁこれは1年通してですけど、下を向いてやっていた選手は誰もいないんですよ。普通、試合に出られないとか勝ててないとかして、あれだけの選手がいれば、ふてくされたり、一緒にやろうぜっていうのに参加しなくなったりする選手も出てくると思うんです。でも1年通して、そういう選手が誰もいなかった。この時点でもう、なんで負けているのかなっていうのはあったんですけど。でも実際、負けている理由は、攻めは出来るんです。でもカウンターと、負けていてパワープレーにいってやられる失点が、半分以上ですね。

 

若手にお膳立てしてシュートまでいく、でも…

 

Pivo! それは難しいところだよね。アタックにいって、カウンター返しを食らうと、守るのが難しい部分はある。

相根 そうですね。正直、大分戦が終わってワールドカップの中断期間に入るまでディフェンスの練習はほとんどやったことないんですよ。要は、決めきればカウンターからの失点はなくなるじゃないですか。なので逆にいえば、さっきの話のように速く戻ってつぶしにいくとか、ミスしたら自分たちがやられると思うんだったら、必ず人にボールをつなげるようにして相手にボールをとられないようにするとか、そういう練習をそこまではずっとやってきました。で、山下さんが練習の取材に来られたときくらいですかね? ペナルティエリアの中だけで5対5をやっていたりして。あのときは、そこに行ってもボールを絶対につなげ、ということをやっていた時期だったんです。まずボールを簡単には蹴らないというところからスタートして。だからそこを含めて、自分たちでなんとかしようというか。負けたくなければ、ボールをつながなきゃいけなくて、つなぐためにはボールをもらうサポートの意識が必要。場所よりも先に、自分でなんとかしてやろうという意識のほうがすごく大事だと思っているんです。それができているときは、ゴールにいく回数もすごく多いんですよ。なんですけど、あとほんのちょっとのところで。例えば、内村という若い選手がいるんですけど、今シーズンでキーパーとの1対1のシチュエーションを何本作ったんだと。みんなでボールを蹴らないでつないで、彼のところにボールが渡って、キーパーと1対1になる場面がすごくありました。 

 

Pivo! 全日本でもあったよね。

相根 ありましたね。これが、ヴィシウスだったら、リカルジーニョだったら、絶対決めて勝っているなって。なので、なんというか自分たちは負けている感覚がないんですよ。打開して形を作って、若手にお膳立てしてやっとシュートまでいっている、でも入らない、という感じだったので。で、入らないことを自分で考えて練習してもらいたいんですよね。シュート練習とかをこっちが作り出してやらせてしまうと、絶対に伸びないというか。外したことを本当に考えろ、ということをやってきましたけど、若手と経験者の差っていうのはまさにそれで。すごく難しいんですけど、経験ある選手はやっぱりゴールを決めるんですよね。例えばあそこが市原だったらゴールを決めて勝っている試合もあって。だからまずそういう部分を鍛えるというか、そういう苦しさはあったかなと。ただ絶対にブレてないのは、ただ勝てばいいには絶対にしたくなかった。日本を代表する選手を作るには、今年はたまたまあれだけ経験のある選手たちがいるわけですから、それを学んで聞いて、自分でやって失敗して、悔しいから練習して、というのをもっとやってもらいたいなという思いがあったシーズンですね。

(残り 6055文字/全文: 8607文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック

会員の方は、ログインしてください。

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ