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無料:西谷が全ゴールに絡む活躍で名古屋が大阪を撃破! 立川・府中と決勝対決へ!! [全日本選手権準決勝]

日本人のみで戦うシュライカー大阪。

2019年3月9日、駒沢屋内

(PHOTO,TEXT・山下浩正)

フルメンバーがそろった名古屋オーシャンズ。

 

序盤、稲田が左からシュートを放つが篠田がはじく。

 

右から攻め込む大阪の稲田を名古屋の♯11ルイジーニョと♯10ヴァルチーニョが囲い込みに行く。ヴァルチーニョは12分に先制ゴールを決めている。

 

厳しい守備から攻撃へと転じた西谷はチームの全ゴールに絡み文字どおり勝利に貢献した。

 

チーム3点目を決めた西谷をチームメートがたたえる。

 

大阪は2分59秒を残してパワープレーを仕掛けるが実らなかった。

 

健闘するもベスト4止まりに終わった大阪。

 

JFA 第24回全日本フットサル選手権大会 準決勝 第1試合
名古屋オーシャンズ 3-2 シュライカー大阪
2019年3月9日(土) 駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場 観客数:783人
[得点経過]
1-0 12分 名古屋オーシャンズ 10 ヴァルチーニョ
2-0 23分 名古屋オーシャンズ 14 西谷良介
3-0 24分 名古屋オーシャンズ 14 西谷良介
3-1 25分 シュライカー大阪 8 加藤未渚実
3-2 27分 シュライカー大阪 23 芝野創太

 

「蹴ったあとすぐ動け!」を実践

まずは今シーズンの両チームの直接対決結果をデータで振り返ろう。

6月のオーシャンカップ決勝では前年優勝の名古屋オーシャンズがシュライカー大阪を3-0で撃破。また、Fリーグのレギュラーシーズンでは名古屋が、6⚪︎3、3⚪︎2、4⚪︎1と3戦全勝。続いてリーグ1位、2位の資格を得てプレーオフ決勝の舞台で相まみえた両チームは第1試合で大阪が3-2で勝利し、今季ここまでのすべての試合を通して名古屋に勝った唯一のチームとなった。だが、第2試合では名古屋が3-2で勝利し、勝ち点・得失点差で並び規定どおりリーグ上位の名古屋の優勝が決まった。この結果、ここまでの対戦結果は名古屋が5勝1敗とリードしている。

そして迎えた全日本準決勝。

名古屋は準々決勝でペピータが一発レッドを食らいこの日は出場停止。ブラジル人助っ人の一角の不在は痛い。だが、一方で大阪はアルトゥールとチアゴという2枚看板がケガで欠場し日本人だけで戦わなければならないのが実情。それに比べれば戦力への影響は軽微だ。加えて名古屋は日本人のレベルアップが顕著。この日はヴァルチーニョ、ルイジーニョをさておいて、翔太&龍太の星兄弟、吉川、酒井(2015年日本国籍取得)の日本人フィールドプレーヤー4人が先発している。もちろん、監督がどういうセット構成をするかが重要で、1stセットが最強とは断言できないが、入りが悪ければ先に失点をしてゲームを壊しかねない。それだけに1stセットの重要性は間違いなく高い。

スコアが動いたのは両チームとも2ndセットがピッチに立った前半12分。名古屋は西谷が、連携から敵陣へ侵入しようとする田村と相井に厳しい前プレをかけ、これに加担した安藤と2人でボール奪取。ぽっかり空いた中央寄りのスペースに西谷がショートパス。このボールをヴァルチーニョが押し込んで先制した。

大阪は稲田が、芝野が、右サイドから次々に突破を図るがヴァルチーニョを中心に突進を許さない。名古屋のガードが固い。6分、名古屋ゴールほぼ正面10mのフリーキックを得た大阪はキッカーの加藤がゴール左脇の芝野に当て、落としを小曽戸がダイレクトシュート。決まったかに見えたがゴレイロ篠田のビッグセーブに遭いチャンスを逸した。4分には名古屋が好形を見せる。ハーフ付近からコート右寄りをジャゴナウで抜けたパッシャーンこと西谷に星龍から縦パスが入る。西谷が受けて落とす。そこへルイジーニョが走り込んでトラップからシュートも大阪ゴール左へわずかに外す。一進一退の状態から名古屋1点リードで前半を終了した。

後半も最初にスコアを動かしたのは名古屋だった。

23分、右コーナーキックからキッカーの西谷がファーに飛ばしたボールをルイジーニョがダイレクトシュート、これを西谷自身がファーで詰めて、2-0とした。

蹴ったあとすぐにニアポストへダッシュした西谷といい、難しいボレーシュートから計ったようにファーにシュートパスを撃ったルイジーニョといい、最強ライバルとの重要な試合で高い精度からゴールを生み出した2人のプレーは、さすがというほかない。

西谷は試合後、「蹴ったあとすぐ動け! と監督から常々いわれている、それを実践しただけ」と振り返った。

そしてその1分後またしても西谷が決めて名古屋が3-0とリードを広げる。

西谷は大阪のゴールクリアランスを狙っていた。檜山から右アラの田村に短いボールが出た瞬間を見逃さず前プレを仕掛け、田村が左へかわそうとしたところをボール奪取し右のルイジーニョへ。寄せて来た檜山をルイジーニョがかわしてダイレクトでリターン、西谷が無人のゴールへと押し込んだ。

相手の自由を奪う前プレの重要性を身をもって示した西谷のゴール。
西谷はこれで、2ゴール、1アシストと、ここまでの3ゴールのすべてに絡んだ。

西谷は“日本人No.1プレーヤー”といわれて久しい。
だが、うまい選手はゴールまでのプロセスに労力を費やし決定力に難がある。
ところが西谷はプロセスもフィニッシュも申し分ない。
彼に授けられた冠はもうしばらくほかの選手の頭上を飾ることはないだろう。

大阪は流れの中からゴールを決められず

大阪の反撃は25分だった。
小曽戸がヴァルチーニョに倒されて得た右45度からのフリーキックを加藤が直接蹴り込んで3-1とする。
さらにその2分後、左コーナーキックから芝野がダイレクトで決めて1点差。

残る時間は13分強とたっぷり。大阪は悪くても同点ゴールの可能性を感じさせたが、ゴールが遠く、2分59秒を残して加藤をゴレイロにパワープレーに打って出るものの、ノーゴール。1点ビハインドのまま試合終了の笛を聞いた。

この試合、名古屋が決めたゴールはセットプレーからの1点と流れの中からの2点。
一方、敗れた大阪の2ゴールはいずれもセットプレーからのもの。流れから名古屋のディフェンスを崩してのものはなかった。
無い物ねだりを承知でいえば、相手の前プレを回避しながら最後尾からゲームを組み立て、持ち前の強いシュートでフィニッシュまで行くフィクソのアルトゥールがいたらスコアは違ったものになっていたかもしれない。どちらが勝者になっていたかよりも、もっとおもしろい内容の試合になったことは間違いない。

これで今シーズン、大阪は名古屋に1勝6敗で幕を閉じた。
永遠のライバル対決が来シーズンはもっと緊迫したものになることを祈ってやまない。

 

予想以上に試合をおもしろくしてくれたヴォスクオーレ仙台。

 

難敵を地力で振り切った立川・府中アスレティックFC。

 

内野のシュートをキャッチしたGKクロモトから立川・府中はカウンター発動。

 

皆本(左端)からのパスを押し込み観客席に向けて両手を突き上げるジョー。

 

♯13堀内に当ててディフェンスの裏をとった♯12アランギタヒ。この直後に堀内のリターンを右足で押し込んだ。

 

♯6荒牧のシュートをゴール前で触ってコースを変え同点ゴールを決めた♯18藤山。

 

2-3とする逆転ゴールを決めたマルロン。

 

この日自身3点目を決めたジョー。

 

♯99関の執ようなマークに耐えて左サイドを突破する渡邉

 

ゴールラインぎりぎりでマークを振り切った渡邉は中へと折り返し岡山が右足で押し込んだ。勝ち越しゴールが決まった瞬間だ。

 

サポーター席へおどけた笑顔を見せる岡山。

 

勝利を確信したのか酒井への完ぺきなアシストを決めてほえるジョー。

 

サポーターにあいさつをする仙台の選手たち。♯14内野の目からは熱い涙が流れ続けた。

 

ファイナル進出を決めた立川・府中。

 

JFA 第24回全日本フットサル選手権大会 準決勝 第2試合
立川・府中アスレティックFC 5-4 ヴォスクオーレ仙台
2019年3月9日(土) 駒沢オリンピック公園総合運動場屋内球技場 観客数:823人
[得点経過]
1-0 02分 立川・府中アスレティックFC 19 ジョー
2-0 09分 立川・府中アスレティックFC 19 ジョー
2-1 10分 ヴォスクオーレ仙台 12 アランギタヒ
2-2 14分 ヴォスクオーレ仙台 18 藤山翔太
2-3 16分 ヴォスクオーレ仙台 10 マルロン
3-3 23分 立川・府中アスレティックFC 19 ジョー
4-3 32分 立川・府中アスレティックFC 11 岡山洋介
5-3 37分 立川・府中アスレティックFC 79 酒井遼太郎
5-4 40分 ヴォスクオーレ仙台 14 内野脩麻

 

前半、仙台が3ゴールで逆転!

ジャイアントキリングとまではいえないが、怖いもの知らずの快進撃で対戦相手をビビらせているヴォスクオーレ仙台。ただ、試合巧者がそろう立川・府中アスレティックFCを相手に仙台がどこまで食い下がるかが、この試合の見どころだった。

ところが前半にとんでもないことが起こった。

開始2分、先制ゴールを決めたのは立川・府中。
仙台・内野のシュートをGKクロモトがキャッチし左サイドを駆け上がった皆本に絶妙なパスを出して立川・府中がカウンター発動。ドリブルでハーフを越えた皆本は追走する選手と迎撃する選手の間を縫うパスをゴール前に通す。これをジョーがきっちり決めた。

ゲームメーカーとフィニッシャーと。
それぞれの役回りを寸分の狂いもなくやり切ったシーンだった。

さらに9分、またもジョーが決めた。
右サイドで相手陣内に侵入したジョーは、酒井からのパスを受けるとサイドに開いた完山とワンツー、リターンをワントラップ・シュート。ゴール右へ突き刺した。

準々決勝の町田戦でチームを勝利に導く健闘を見せ、ノリに乗っている仙台ゴレイロ税田(さいた)も手も足も出ない連続失点だった。

ところがだ。
キャプテンでフィクソの荒牧を軸に、アランギタヒ、堀内、マルロン、内野、藤山、関、、、要するにピッチに立つメンバー全員がひるむことなく攻撃を仕掛け、立川・府中を自陣ゴール前にくぎづけにするシーンが何度もあった。
2失点目を食らう前もそうだった。仙台は、ボールを奪いに行く攻撃的なディフェンスから何度となく攻撃を仕掛けたものの、フィニッシュの精度を欠いた。

それがピタリとはまったのが10分。ゴール中央12mからアランギタヒがピヴォの堀内に当てておいて裏をとる。受けた堀内は身を翻して左足リターン。このパスが完山の裏をとったアランギタヒの足元にぴたり! アランギタヒは押し込むだけだった。

これでリズムに乗った仙台は14分、右10mライン付近からアランギタヒがキックインしたボールを荒牧が右足ダイレクトシュート。これをゴレイロの前で藤山が触ってコースを変えゴールイン。あっという間に同点にした。

これで終わらないのが勢いに乗るチームの怖さ。
16分、自陣10m付近で完山からパスを受けて上村が縦に抜けようとしたときだ。成功すればカウンターとなる。だが、その上村にアランギタヒとマルロンが襲いかかり、なんなくボール奪取、アランギタヒのパスをマルロンがダイレクトシュート。立川・府中のゴールネットを揺らした。仙台、2-3の逆転に成功! そしてこのスコアのまま後半へと折り返した。

振り返れば両チームのここまでの5ゴールは、仙台のチーム2点目こそセットプレーの延長線上にあるゴールだったが、残る4点はいずれも流れの中からのゴール。スピード感のあるものばかりで、見ていて、ある意味、名古屋vs.大阪戦よりよほどおもしろい前半だった。

セットプレーはマイボールのチームにとって主導権を持ってゴールを狙える貴重なチャンスだが、僕はイマイチだ。やはり流れの中から生まれるゴールほど魅力的なものはない。

ジョーがハットトリック達成!!

試合に戻ろう。
前半に比べて若干下がり目、ハーフウェイラインぎりぎりにディフェンスラインを敷いて後半に入った立川・府中。
それを前に仙台は時にクアトロで、時にスリーラインでと流動的にパスを回し、ゴール前へと飛び出すチャンスをうかがう。

後半3分、ゴールを決めたのはまたしてもジョー。そう、ハットトリックだ。
立川・府中がハーフに引く中で、仙台がアランギタヒから藤山へ出したパスを皆本がカット。酒井を経由して受けたジョーが素早くシュート。ゴール左隅に突き刺したのだった。
これで3-3の同点。

さらに立川・府中の攻撃は続く。
12分、昨シーズンまでチームメートだった関の厳しいマークを受けながら渡邉が左サイド突破からゴール前へ中合わせのパスを放つとゴール前で岡山が押し込んだ。
絵に描いたようなファー詰め。

岡山はこの大会を最後に現役引退を表明していて、谷本監督が、
「出場機会も減っているのに、くさらずに、ゲームに集中していいゴールを決めてくれた!」
とたたえた。
谷本監督もこの大会を最後に退任が決まっているだけに特別な感情が湧いたに違いない。

これで4-3と立川・府中が逆転に成功するが、まだ攻撃の手を緩めない。

一進一退が続く中、37分、立川・府中陣内に攻め込んだ仙台は、半ば強引な攻めに出る。
アランギタヒが狭いスペースを突いて堀内へピヴォ当てを放つが、完山がこれをカット。
受けたジョーがドリブルから運んで一気に相手ゴール前へ。
自分でシュートまで行くのかと思いきや、並走した酒井にラストパス。
酒井は体勢を崩しながらゴールを決めた。
これで5-3。

ここからマルロンをゴレイロにパワープレーに出た仙台。
マルロンは、1-2-2のフォーメーションの底から強烈なシュートを再三にわたって放つ。
さすがのGKクロモトも弾くのが精一杯の状態。
そして何度目かのマルロンのシュートがディフェンに当たってゴール前にこぼれたところを詰めていた内野がダイレクトで蹴り込んだ。

5-4。
1点差に迫るゴールだ。残る時間はあと52秒。試合はまだわからない。仙台のパワープレーは続く。
マルロンが変わらず強シュートを遠目から放つ。そしてその都度、ゴチャゴチャっとするゴール前へアランギタヒが飛び込む。
いよいよ時間がなくなり、マルロンまでゴール前へと侵入する。そしてマルロンがシュートをふかした瞬間、試合終了のホイッスルが鳴った。

激しい試合は立川・府中の勝利で終了。
名古屋が待つ決勝の舞台へ進むことになった。

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