久保憲司のロック・エンサイクロペディア

ラモーンズ と『チャイニーズロック』 ・・・エンターティメントなんですから、全部商売なんですよ。その中からたまに革命的なことが起こる。だから面白いんです (久保憲司) 【ロック、こんなことを歌ってます】

 

Ramones (Dlx)

前回の“ロック、本当はこんなこと歌っているんですよ”はラモーンズの「チャイニーズ・ロック」のことを書こうと思ったらラモーンズの「ナウ・アイ・ワナ・スニフィン・グルー」の話で終わってしまいました。

「ナウ・アイ・ワナ・スニフィン・グルー」はシンナー吸いたいというだけの歌なんですけど、本当の話なんです。ディー・ディーとジョニーは42丁目周辺で肉体労働しながら、昼の休憩時間にシンナー吸って、48丁目の楽器屋街に行って、楽器を眺めていたんです。バンドをやりたいなと。

ディー・ディーは一番安いフェンダーのミュージック・マスター・ベースを買って、ジョニーは大好きなギターリストMC5のフレッド・スミスが使っていたのと同じリッケンバッカーを買うんです。このリッケンバッカーはジョニーのトレイド・マークにはならなかったのですが、ジョニーのギターといえば誰もが思い浮かべるモズライト・ギターも、元々はフレッド・スミスがよく使っていたギターです。

パンクって突然変異の私生児のようなイメージがありますが、ちゃんと祖先があるのです。ディー・ディーがミュージック・マスター・ベースの次に買った白と黒のフェンダー・プレシジョン・ベースはシド・ヴィシャスが後に使うベースです。ネックはディー・ディーがメイプルでシドのはローズという違いはありますが。ディー・ディーと完全に同じベースを弾いていたのはクラッシュのポール・シムノンです。これだけでもディー・ディーのスタイルがロンドン・パンクにどれだけの影響を与えたか分かりますね。ポール・シムノンのジャンプとかディー・ディーと完全に一緒ですね。

パンクのベースと言えばシド・ヴィシャスが使った白と黒のプレシジョン・ベースですが、元々はディー・ディーのイメージなのです。シド・ヴィシャスが革ジャンを着ているのもディー・ディーへのリスペクトなのです。元々シド・ヴィシャスはデヴィッド・ボウイのようなシンガーになろうとマネジャーも元デヴィッド・ボウイの事務所の副社長リー・ブラック・チルダースに頼んで頑張っていたんですが、セックス・ピストルズから急遽ベースをやらないかということで、安易な道を選ぶわけですが、その時のお手本としたのがディー・ディーなのです。有名な伝説として、スピードをやってラモーンズのアルバムを一晩聴いて、ベースを覚えたという話がありますが、それ以前にディー・ディーの全てがシド・ヴィシャスには入り込んでいたのです。

話がどれだけディー・ディーが偉大かという話になりましたが、詩人としては本当にボブ・ディランやルー・リードと同じくらい評価されるべきだと僕は思います。

「ナウ・アイ・ワナ・スニフィン・グルー」の歌詞を読むと今の若者はシンナーを吸うくらいしかやることがないんだというメッセージにもとれるんですけど、ラモーンズの場合は目の前に見えていることそのままなんです。

「チャイニーズ・ロック」もまさにディー・ディーの日記みたいな歌です。

ヘロインでもやろうぜと友達が電話してくる。
俺の大事なものは全て質屋に入っている。
部屋の壁はめくれて、
俺の彼女はお風呂で泣いている。
こんなはずじゃなかった。
俺は金持ちになるはずだったのに、
俺はヘロインばっかりやっている。

全部韻を踏んでいて、すごいです。英語の詩と読み比べて欲しいです。

「チャイニーズ・ロック」はこういう歌だったんです。ヘロイン最高イェーイという歌じゃないんです。

 

ディー・ディーがなぜこんな曲を書こうと思ったか、それはザ・バーズの「ロックン・ロール・スター」を聴いて、ふざけんなと思ったからだと思います。「ユー・リアリー・ガット・ミー」な2コードの曲調もいっしょですね。ディー・ディーは「ロックン・ロール・スター」のその後を書こうと思ったんだと思います。「ロックン・ロール・スター」パート2ですね。

 

 

「ロックン・ロール・スター」 はこんな歌です。

ロックンロール・スターになりたいのかい?
じゃ、俺のいうことをよく聞きな。
まずエレクトリック・ギターを買って
ギターの弾き方を習いな、
髪の毛をいい感じにセットして、ピッタリしたズボンを履いて。
それで大丈夫。

2番がオチなんですけど。

すごい内容です。

それだけ用意が整ったら、街にいって、音楽事務所に入って、

sell your soul to the company(魂を売りな)

すごいでしょう。67年のポップ・バンドって、こんなにも冷めているんですよ。

そして、レコードがチャートに入ったら、女の子が涙してくれるって。

3番は 金と名声ゲームのことが歌われて、オチは、酷い世界だけと、君はロックンロール・スターだということを忘れないでねと歌われる。

50 Cent the New Breed [DVD] [Import]ラ、ラ、ラ、ラって。

3番の歌詞とか、ラッパーの50セントが自己破産した2015年の世界と何も変わってないですね。

50セントが裁判所で「車とか家とか全部、レンタルでした。」というすごい証言をしてましたけど、いやー2015年が1967年と何も変わっていないの衝撃を受けましたね。アメリカって、すごいなというか、アホというか、資本主義というのは怖いというか。

でも、ザ・バーズみたいに全てを分かっていた人たちもいて偉いなと思います。

でも、実はザ・バーズの前からなんですよね。
1956年の映画「女はそれを我慢できない」という初めてロックンロールがスクリーンに登場したすごい映画があります。主人公を演じるジェーン・マンスフィールドはスターになりたいんですけど、彼女をスターにしようとするマネジャーとの会話がすごいんですよ。

「あなた何ををしてくれるの?」
「何にもしないよ」
「じゃ、何のためのマネジャー?」
「マネージメント料をとるためだよ」

ギャグなんですが、音楽業界の真実をついているこの笑いをイギリスの音楽シーンを変える若者たちが全員見ていたかと思うと、西洋の音楽というのはどれだけドライかと思います。

 

 

日本の音楽業界にいると、レコード会社、音楽事務所の所為とかいうゴダゴタをよく聞きますけど、「女はそれを我慢できない」を見たり「ロックン・ロール・スター」をちゃんと聞いとくべきだなと思います。

エンターティメントなんですから、全部商売なんですよ。その中からたまに革命的なことが起こるのですよ。だから面白いんです。

 

 

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tags: 50cent Nirvana Ramones The Beatles The Byrds

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