久保憲司のロック・エンサイクロペディア

【世界のロック記憶遺産100】 The Who “Who’s next” ・・・ピート・タウンゼントの「世界同時革命」の夢はパンクに引き継がれた

Who's Next

 

前回の「ロック世界の遺産100」フーの『トミー』のことを書かしてもらいました。『トミー』というのはカウンター・カルチャーとは何だったかということを検証したアルバムだったと。

カウンター・カルチャーという世界同時革命に酔っていた若者たちが何千万人といたわけです。酔っていたというのは失礼か、欧米のカウンター・カルチャーが絶頂に達した1968年、欧米以外でもポーランドやチェコで起きた反ソ運動、中国の文化革命、アジア、アフリカの植民地の独立と世界同時革命としか見えない広がりを見せた。あの熱気はなんだったのか、その答えを求めた若者たちが『トミー』を聞いたらそりゃ興奮すると思いますよ。

ウッドストックなんかでLSDでもきめて、『トミー』の再現ライブを体験したら「そうだったのか!!!」と興奮したのが手に取るようにわかります。ウッドストックの映像はそんなによくないので、ウッドストックと同時期に行われウッドストックより30万人も多い、70万人も集めて行われたワイト島のフーの『トミー』の映像をご覧ください。最後の曲「シー・ミー・フィール・ミー」で、サーチライトに照らされた若者たちが神の啓示を受けたかのごとく立ち上がっていく姿が残されています。4分過ぎからの客の感じ、まるで政治集会のような感じです。2015年のシールズの官邸前となんら変わらない感じです。

 

 

世の中ずっとこういうことが起こっているんですよ。

90年代だとラブ・パレードというデモを装った市内パーティーに100万人もの若者が毎年世界中から集まっていたのです。

 

 

アラブの春もそうです。カイロのタハリール広場を埋め尽くした民衆の抗議の渦は、ヨルダン、イエーメン、バーレイン、オマーン、リビア、シリアへと拡大した。アラブの春は、中東だけでなく世界に拡大するとの期待は結局終息していった。

なんで革命というのはこういう風に終息していくのだと思ったピートが次に考えたのが『ライフハウス』というプロジェクトだったのです。

前作『トミー』が評論家の人たち(ほとんどローリング・ストーンのヤン・ウェナーですけど)とコラボして上手くいったから、次は自分たちのファンと未来を考えようと思ったわけです。インターネットもないのに。

フーズ・ネクスト+20<デラックス・エディション>ピートの妄想の中ではインターネットみたいなことが浮かんでいて、みんなと簡単につながると思ったんですね。トンだはったんでしょう。ピートはメロディー・メイカーという音楽雑誌で連載を始めていたので、これでファンとやりとりしてなんとかなると思ったみたいです。今だと週刊誌でそれは無理だろうと思いますが。

ピートはインタラクティブに若者たちと共同作業をしていけば、きっと『トミー』を超える作品が出来ると思ったのです。そのためににはどうしたらいいか、まずは一週間ロンドンのヤング・ヴィクという劇場を借りて、そこに通りすがりの若者を集めてコンサートをしていけばいいと考えたのです。

そして、本当にやったんですね。ユー・チューブにはその全容を収めたものがなかったので、もしよかったら『フーズ・ネクスト』のデラックス・ヴァージョンを買ってみてください。フーのファンではなく通りすがりの若者だったので、お客も盛り上がっていず、いつも高慢なMCで客を笑わすピートが「前の方にはまだスぺースあるから、もしよかったらそこで踊ってくれてもいいんだよ。もし踊ってくれたら、俺も踊るから」とへりくだってMCしています。

ピートの妄想の中ではお客(民衆)がステージに乱入し、バンドの楽器を奪い、バンドよりすごい演奏をして、それが革命となるんだという妄想があったのでしょう。

そんなこと起こるわけないですよね。

でもね、人間の妄想というのはいつか現実化するんですよ。本当にそういう若者たちが現れるわけです。パンクです。ヤング・ヴィクでライブをやった6年後パンクがイギリスを席巻するんです。

 

続きを読む

(残り 995文字/全文: 2628文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

tags: Sex Pistols The Who

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック