久保憲司のロック・エンサイクロペディア

【世界のロック記憶遺産100】 ウルトラヴォックス “システム・オブ・ロマンス” ・・・未来の不安、自分への不安。エレクトリック・ミュージックの最高傑作(久保憲司)

システムズ・オブ・ロマンス

 

 

Flaunt Itジグ・ジグ・スパットニックが結構人気なのでびっくりしました。僕は彼らのことを結成前から知っているので嬉しい限りです。でも初ライブを観るまでは、僕は彼らのことはあかんやろと思ってました。ヴォーカルのマーティン・ティン(ディグビル)をジグ・ジグをやる前から知っていたからです。彼がやっていた超ド派手なお店YAYAで働いていたエースという日本人の女性と友達だったからです。

僕はマーティンのことを毎日朝まで遊ぶ人くらいにしか思ってなかったです。エースは初期の頃、ジグ・ジグのローディーでした。エースは服を作っていた人なのに、なぜローディーをやっていたかというと超ド派手だったからです。「ベースアンプとか運べない」とよく文句言ってました。

エースとか今何してるんでしょうね。会いたいです。今思うとエースと何で友達だったか全く忘れていたんですけど、ジーパンの裾直しなどをしてもらっていたということを思い出しました。イギリスはジーパンを買っても裾直しとかその店でやってくれないので、エースのところに裾直しなどをお願いしに行っていたのです。後、エースが忙しい時、YAYAの店番のバイトとかもやっていたことがあるような気もします。ぼくもジグ・ジグ初期にはちょっとは貢献したかもしれませんね。

また初期の頃にはマーティン・ティンのパートナー、ヤナがイーノのような格好でイーノのようなシンセを弾いていて、ぼくはそれが大好きでした。僕はヤナのことをずっとYAYAだと思ってました。自分のパートナーの名前をお店の名前にするなんてマーティンいい奴じゃんと思ってました。初期のジグ・ジグはロキシー・ミュージックみたいじゃんと思ってました。

 

 

Metal Box [12 inch Analog] 前回の記事で安いリズムマシーンを使った最高傑作はウルトラヴォックスの「ヒロシマ・モナ・ムール」だと書きましたが、ライブではそのチープなリズムマシーンが嫌だったんですかね、あの場末のキャバレーのようなリズムマシーン音はなりをひそめ、ヘヴィーなポスト・パンクのアレンジでやっています。というかパブリック・イメージ・リミテッドの『メタルボックス』のようです。ジョン・ライドンって、実はウルトラヴォックスのヴォーカル、ジョン・フォックスに一番影響を受けていたんじゃないでしょうかね?

ウルトラヴォックスもジグ・ジグと同じように忘れ去られていくバンドです。ジグ・ジグは世界一カッコ悪いバンドと言われれば「そうかもしれない、でも初期の頃はマジでカッコ良かったんだよ」くらいしか言い返せないんですが、ウルトラヴォックスは本当にカッコ良かったんです。こんなすごいバンドのヴォーカルの人が往年は専門学校かなんかのグラフィックの先生をやるくらいしか仕事がなかったというのは大変ショックなことです。デヴィッド・ボウイになってもおかしくなかった人、ゲイリー・ニューマンも「自分のアイデアは全てジョン・フォックスからいただいた」と言っている人です。下のユーチューブで言ってくれてます。ゲイリー・ニューマンは再評価されたのにウルトラヴォックスは評価されないのは悲しいです。ゲイリー・ニューマンは何でも正直に話していて本当にいい人なんだなと思います。

 

 

ウルトラヴォックスはジョン・フォックスが抜けてから世界的に売れたのですが、ジョン・フォックス在籍時の初期3枚『ウルトラヴォックス!』『HA! HA! HA!』『システム・オブ・ロマンス』は本当に傑作です。特に三作目の『システム・オブ・ロマンス』はエレクトリック・ミュージックの最高傑作と言ってもいいんじゃないでしょうか。

 

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