久保憲司のロック・エンサイクロペディア

オアシス『モーニング・グローリー』 ・・・ロック・スターに憧れるの何が悪いんだという世代 (久保憲司) 【ロック、ホントはこんなことを歌ってます】

(What's The Story) Morning Glory?

 

今回は前回の「ロック、本当はこんなこと歌ってるんですよ デヴィッド・ボウイ ジギー・スターダスト」の続きです。実はあれ、今回の前振りで書いたんですが、長くなってしまったので、一本にしてしまいました。デヴィッド・ボウイ『ジギー・スターダスト』に影響されたアルバムということでオアシスの『モーニング・グローリー』です。

ジャケットもどことなく『ジギー・スターダスト』と似ているでしょう。なんでこんな浅草の下町みたいなところがジャケットやねんとデヴィッド・ボウイの時と同じように突っ込みを入れたくなります。

でも、ロック史に残る名盤なので、皆さん、Berwick Streetに行って、記念写真を撮ってきた人も多いでしょう。でも、もし今度行った時はこのBerwick Streetだけじゃなく、この道にクロスする道も見に行ってください。それを見たら、このアルバムのジャケットの意味がわかると思うんです。クロスする道の名前はノエル・ストリートです。そうノエルという道なんです。これでなんでこのジャケットで二人の人間が交差しているのかという意味がわかると思います。そうノエルはドッぺルゲンガー、自分の分身にあったのです。多分、朝の4時とか5時、クラブ帰りなのか、レコーディングの帰りなのか、わからないですけど、ノエルはあの道で自分と出会ったのです。自分の名前が書かれた標識をいみただけですけど、ノエルは神の啓示のように思ったんでしょうね。

どんな自分の分身かというと「シャンペン・スーパーノヴァ」で歌われるような挫折したロック・スターです。結局俺も他のスタート同じようにダメになるんだろうという暗示です。

 

 

デヴィッド・ボウイが街をふらつき頭のいかれたロックンローラー、ヴィンス・ティラーを見て、ジギー・スターダストというキャラクラーを思いついたようにこの時、ノエルはアルバムの構想が全部見えたんでしょう。
というかノエルはオアシスの最初のアルバムの構想を全部考えていたと思うんですけどね。1枚目『オアシス』はロック・スターになることを夢見る物語。そして、この『モーニング・グローリー』はそんな少年がスターとなった話し。そして、3枚目『ビー・ヒア・ナウ』は「そんなスターが落ちぶれて地元に帰ってきた」話し。1曲目「ドゥ・ユー・ノウ・ワット・アイ・ミーン?」は

夜明けに一人で電車で帰ってきた。
自分の生まれた場所に帰ってきた

と歌われます。

 

 

Wall (Remastered Discovery Edition)
ノエルは『ジギー・スターダスト』やピンク・フロイドの『ウォール』の感じを3枚のアルバムで表現しようと、多分、ずっと子供の頃から思っていたんだと思います。

ビートルズやストーンズ、フーが、アイドルじゃない本当のロック・スターとなった、カウンター・カルチャーの代表選手なら、デヴィッド・ボウイはそんな人たちに遅れてしまったため、そういうスターになれなかったので、じゃ、そういうスターを面白おかしく描いたら、新しいスターが生まれるんじゃないかと思った世代。

そして、その次のジョン・ライドンなどのパンクはスターなんてケッと思った世代。これで一周したわけです。こんな気持ちだったから、これ以降のアーティストはなかなかスターになれなかったわけです。なれないというか、スターになるというのがカッコ悪いと思う世代です。U2とかモリッシー、REM、レッド・ホット・チリパッパーズとか例外は出てきますが、みなさん、すごいスターになるのに時間がかかっていたのはそういうことなのです。この時代でスターになるためにはアイドルみたいな感じでやるしかなかったんですね。それがヒューマン・リーグやソフト・セルなどのパンクを通過したMTV世代のアーティストたちです。

 

 

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tags: David Bowie John Rydon Oasis Pink Floyd

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