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久保憲司のロック・エンサイクロペディア

Netflixのヒップホップのドラマ 『ゲットダウン』 ・・・HIP-HOPの革命の物語に意味深にパンクが出てくるのはなぜか (久保憲司)

 

みなさん、Netflixで観れるヒップホップのドラマゲットダウン観てますか。面白いです。

ヒップホップ誕生時のあの空気を再現するドラマかと思いきや、1996年のライブから始まって、JAY-Zみたいな主人公が当時を振り返るラップをするという驚きの始まり。ライブ自体は1996年というより2016年のカニエ・ウェストのライブみたいですが。

去年のグラストンベリーのカニエ・ウェストのライブ見ました?ポップ史上一番笑えるライブです。何万人ものお客さんの前で、乱入野郎がゲスト・ラッパーのふりして登場、カニエが「お前誰や」という顔をするんです。何百本ものスポット・ライトだけの超スタイリッシュなステージで、「カッコよく決めたるで」と燃えるカニエを完全にぶちのめす大馬鹿野郎。「始めっから」というカニエの残念そうな声が会場中に響き渡ります。何回見ても笑ってしまいます。いや、笑ったらダメですけど。

 

 

ちなみにポップス史上2番目に笑うステージは、1996年のブリット・アワードのマイケル・ジャクソンのライブ中に乱入したパルプのジャーヴィス・コッカー。マイケルの“世界を救うのは俺だ的”仰々しいパフォーマンスにブチ切れたジャーヴィスがステージ真ん中に入って、こんなライブ最低だとばかりに自分のお尻をペンペンします。5分くらいからジャービスがステージにひょこひょこと入ってくるところが見えます。ジャーヴィスもコカインで頭おかしくなっていたと思いますが、ジャーヴィスが言う通りこのマイケルの10分に及ぶパフォーマンスはどうかしてます。

 

Yeezus

マイケルはおいといて、カニエのライブを見て思うのはブロンクスの廃墟の中で生まれたヒップホップはここまでトンがった音楽になったということです。カニエ・ウェストの前作『Yeezus』を聞いてみてください。ポスト・パンクのアルバムのようです。ナイン・インチ・ネイルズとかが好きな人にも聴いてほしいアルバム、いや、プログレとか好きなおっさんや、ニュー・ウェイヴなどが好きな若い人にも聴いてほしいアルバムです。ヒップホップはここまで来ているんです。

 

『ゲットタウン』は多分ヒップホップの誕生から1996年までの20年間にわたるヒップホップの革新で物語を進ませていこうとしています。ネルソン・ジョージの名著『リズム&ブルースの死』の「黒人の社会的地位が上昇するのと反比例して黒人音楽がつまらなくなる」に真っ向から対立する内容なのです。

シーズン1の終わりはニュー・スクールの誕生の過程を見せてくれまする。RUN DMCなどの誕生ですね。シュガーヒル・ギャングやグランドマスター・フラッシュのオールド・スクールのラップとは違ったボケ・ツッコミ、ラップの登場です。オールド・スクールのラップを一人でやる漫談、落語だとすると、ニュー・スクールのラップは漫才のようです。日本のラップの世界ではマイク・リレーという言葉がよく聞かれたので、RUN DMCなどの新しいラップが新しかったのはマイク・リレーをやったことなのかと思っていたのですが、英語ではマイク・リレーに該当する言葉はパス・ザ・マイクがないので、リレーというより1行ごとにラップの割り振りをしていくことが画期的だったみたいですね。僕の説明でピンとこない人はドラマを見てください。なるほどと思います。このスタイルがラップにインプロビゼーションな感じを与えていったんです。黒人はここでまた一歩前進したのです。

 

 

こんな音楽の革命の話で物語が面白くなるのかと思うんですけど、なるんですね。びっくりです。イタロ・ハウスの目玉であるバンバン・ピアノがどうやって誕生するかも見せてくれます。新しい音楽を産もうと徹夜して疲れるからドラッグやって、それでも産まれないから、ドラッグに逃避して、絶望して、もうだめだという所で音楽の神の啓示を受ける。そして、あのバンバン・ピアノがディスコ・ミュージックの中に取り入れていく、それはガラージュの始まりであり、イタロ・ハウスの始まりでもあるのだ。感動しました。

『ゲットダウン』はドラッグを悪いように描いていないのもいいんです。お金を払った人しか見れないドラマの強みですね。公共放送やただで観れる番組だと、ドラッグを美化していると苦情が来る所ですが、こうしたペイTVだと、文句があるならお金を払わず見なければいいだけですもんね。スポンサーにも文句を言えない、「公共性の問題を疑う」とも言えない。このスタイルがこれからどう社会に影響を与えていくか見ものです。

 

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