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久保憲司のロック・エンサイクロペディア

フランク・オーシャン『ブロンド』 ・・・なぜ黒人はビートルズ、ビーチボーイズを上手くパクれないか (久保憲司)

 

 

ついにフランク・オーシャンのアルバム『ブロンド』がリリースされた。今一番アメリカやヨーロッパの若者の気持ちを代弁しているシンガーといえば間違いなくフランク・オーシャンだろう。

チャンネル・オレンジ 当初『ブロンド』を作る時はテーム・インパラ、キング・クルーなどのロックよりのアーティストとコラボしたいということで、ロックよりのアルバムになるかと思われたが、ロックっていうより、今彼が住んでいるロンドン、ヨーロッパの音である。『チャンネル・オレンジ』がアメリカの音としたら、『ブロンド』はロンドン、ヨーロッパの音だ。そこが僕には気持ちがいい。

カニエ・ウェストもビヨンセもアメリカの音なんです。みんなそこから抜け出れない。特に黒人のアーティストは。いや、別に抜け出れなくってもいいんですけど。でも、アメリカのロックのアーティストはそこから抜け出ていく人がいるじゃないですか、ジム・モリソンとかパティ・スミスとか。似非ヨーロッパなんですけど。でも似非がいいんですよ。僕らはそれに憧れた。ビートルズもストーンズも似非アメリカなわけじゃないですか。僕たちは似非文化にずっと芸術を感じていたわけじゃないですか。というか、何が本物かなんか、どうでもいいわけですよ。評論家の人が「これは本物だ」とか言うの、うっとおしいわけですよ。本物はクロスオーヴァーじゃないですよ。フランク・オーシャンは「ビートルズ、ビーチボーイズに影響された」と言ってますが、『ブロンド』を聴いていても、どこにそれがあるのと思ってしまいますが、多分、フランク・オーシャンがやりたかったのは、ビートルズ、ビーチボーイズが黒人音楽をうまくパクっているのに、なぜ黒人はビートルズ、ビーチボーイズを上手くパクれない(クロスオーヴァー)できないかということなんだと思います。

フランク・オーシャンはそれを見事にやってのけた。それは彼がゲイ、バイセクシャルだからかなと思う。「えっ、そんな単純な答え、考えなさすぎるだろ。」という声が聞こえてくるような気がしますが、でもフランク・オーシャンの音楽を聴いてて思うのは、こんなクソみたいな世の中で、俺みたいなクソは殺された方がいいんだという切なさだ。

『ブロンド』に先駆け発表されたビジュアル・アルバム『エンドレス』は殺伐とした倉庫で何かを一生懸命作っているのを定点観測のようにクールに白黒で撮っている映像を見ていると、どう考えても死体を切り刻んでいるんじゃとしか思わせてくれないのがフランク・オーシャンだ。

本当はトム・サックスという大物現代アーティストにフランク・オーシャンが発注した作品で、あれは死体を切り刻んでいるのではなく、天国への螺旋階段を作っている。天国への螺旋階段は英語ではstaircase to heaven だから、きっとツェッペリンの「stairway to heaven」のパロディなんだろう。「天国への階段」がどういう歌かというと音楽を信じたものが どこかに行けるという歌です。フランク・オーシャンもそれを信じているのでしょう。でも、それ以上にフランク・オーシャンがあのビデオで伝えたいのは、トム・サックスのなんでも合板で作品を作ることの意味を伝えたいんだと思う。合板は木の中では最低の木なんですけど、「合板こそ一番美しい木だ」と世界でただ一人主張するトム・サックスにフランク・オーシャンは自分が目指している似非の美学を感じているのだろう。

イギリスでは自分を殺してくれという音楽は80年代に出てきている。スミスだ。

一番最初はパブリック・イメージ・リミテッドの「ポップトーン」だと思うけど。

 

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