久保憲司のロック・エンサイクロペディア

【世界のロック記憶遺産100】 ジャニス・ジョプリン 『チープ・スリル』 ・・・黒人の境遇と同じだと黒人のように歌い出したホワイト・トラッシュ

Cheap Thrills

 

世界のロック記憶遺産100】で“スーサイドの元ネタはドアーズだ”と書いたので、次はドアーズの『まぼろしの世界』について書こうと思ってたんですが、その前にジャニス・ジョプリンの『チープ・スリル』について書きます。

 彼女の伝記映画『ジャニス:リトル・ ガール・ブルー』が上映されたり、ディーオールのコマーシャルに「ベンツが欲しい」が使われ、再評価が始まっていて、僕も一体ジャニス・ジョプリンとは何者だったのか考えているわけです。

1979年、僕が子供の頃も、彼女をモデルとした映画『ローズ』が作られ、再評価ブームがありました。この同時期に『地獄の黙示録』でドアーズの 「ジ・エンド」が使われジム・モリソン再評価もありました。ジム・モリソンの場合は意味不明な歌詞でなんとなくミステリアスという感じでジム・モリソンと いう人物像はうまく定着しました。

でも、よく考えてみてください、ステージでオナニーしたとされる人間ですよ。そんなやつがミステリアスなロックなカリスマって。本当はそんなこと絶対やってないですが、今だったらネットでボロクソに叩かれてアーティスト生命終わりですよ。

僕のこの原稿もクリック稼ぐことを考えたら、サブ・タイトルは”昔、ステージでオナニーしたやつがいたんですよ”というタイトルで、ジム・モリソンがオナ ニーしたことを事細かに書いて(してないんですけど)、トップの写真はステージでジム・モリソンが警官に捕まっている写真をドーンと使います。

 

 

映像もあってすごいです。でもこれはオナニーの時の映像ではないです。ライブ前にステージ裏で女の子といちゃついていたら、ジム・モリソンを出演者だと思わなかった警官に、「出て行け」と言われ、ムカついたジムが「嫌だ」と言ったら、警官と揉めて、催涙スプレーをかけられた。

当時のライブは警官がコンサートの警備をしているので、歌っている目の前には警官がずらっといる。ムカついたジム・モリソンは「バック・ドア・マン」に合わせて(気がきいてますな)、さっき起こったことを歌い出す。“こいつらは俺に催涙スプレーをかけやがった。俺が出演者だと分かったら、平謝りしてきやがった。人によって態度を変えるこいつらの姿勢が気に食わない。青い服着たブタ(おまわりさんのことね)は許せない”と歌い出したので、おまわりさんはそれをやめさせようとしたのですが、やめないので逮捕したということなのです。

はっきり言うとどっちもどっちです。この事件の問題点はこの頃はまだ民警がなかったということです。警備を警察に任していたからです。雇われた警察も雇い主の顔くらい知っておくべきだし、雇ったジム・モリソンも手違いはあったとしても、働いてくれている人にリスペクトある態度をとるべきです。警察も横柄な態度を取られたら、従業員から警察権力を使う奴に変わります。

 

 

オナニーしたとされる音源もあります。ジム・モリソン完全に酔っ払ってます。あかん人です。次回の【世界のロック記憶遺産100】でジム・モリソンはあかん人でしたと書こうと思っていたんですが、これはその前振りということで、次回はどれだけあかんかったかということで盛り上がりたいと思います。もっとすごい話があるんです。

L.A. Woman 一言言いたいのは、こんだけひどいステージをするジム・モリソンを見たイギー・ポップは、「何をしてもいいんだ」と自分のスタイルを確立するのです。ジム・モリソンのむちゃくちゃもエンターティメントとして受け継がれるんです。ジム・モリソンが擬似オナニーをした日にパンクは誕生するんです。嘘です。イギーが見たのは違う日です。

ジム・モリソンはおまわりさんブタ呼ばわりソング事件と、オナニー事件の2回の逮捕によって、あかんやつというイメージが完全に出来上がって、全米中のプロモーターから仕事がもらえなくなって、最後はパリのホテルでひっそりと亡くなるわけです。

あかんやつでしたね。でも、不思議なのは最後に『L.A.ウーマン』という大傑作を生むんです。

 

ジム・モリソンの話になってしまいました。ジャニスです。

ジャニスの一般的評価はドアーズのプロデューサーとして有名なポール・ロストチャイルドがプロデュースした最後のアルバム『パール』が有名だと思うのですが、僕としてはビッグ・ブラザーズ・アンド・ホールディング・カンパニーと録音した2枚目『チープ・スリル』がジャニスの本当の姿を残した歴史に残る名盤だと思います。ジャニス・ジョプリンとは一体何だったなのかを今もクリアに伝えてくれているアルバムは『チープ・スリル』です。

 

ジャニスやジム・モリソン、ジミ・ヘンドリックスのように若くして死んだ人たちって、カリスマのように扱われて、みんな適当なことを言うだけで、何が本当にすごいのか分かられていない気がします。

ジム・モリソンの凄さはあかん人ということでわかってもらえたと思いますが(分かってもらえないか、次回ということで)、ジャニスの凄さって、歌が上手いくらいでしか理解されていないんじゃないでしょうか?僕はそう思ってました。しかもあんな黒人みたいにウワッーとか歌う手法、一体どこから来てるんやろと。まさに突然現れた音楽の神様のような人です。黒人シンガーに影響されているんだろうなと思いますが、黒人シンガーであんなにジャニスみたいにウワッーとかいう人いるかと思うわけです。

 

続きを読む

(残り 1133文字/全文: 3378文字)

ユーザー登録と購読手続が完了するとお読みいただけます。

ウェブマガジンのご案内

tags: Janis Joplin MC5 Suicide The 13th Floor Elevators The Allman Brothers Band The Doors ZZ top

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ

日本サッカーの全てがここに。【新登場】タグマ!サッカーパック